信号が青に変わった。

人ごみに動揺したアスランに気づいていないのかカガリは足取りも軽く横断歩道を渡り始めた。

心なしかカガリがはしゃいでいるようにアスランには思えた。

「ちょ・・・ちょっと・・・待って。」

歩きだしたアスランはカガリが一人で行ってしまいそうになったので思わず呼び止めた。

「何だ?」

カガリは横断歩道を渡りきったところで立ち止まって振り向いてアスランを見つめた。

しかし急に立ち止まったため、後ろの人とぶつかりそうになったカガリに気がついたアスランは

それを避けるため、彼女の腕をつかんで自分の方へ引き寄せた。

「あ・・・ありがとう。」

カガリが恥ずかしそうに言った。アスランはカガリを安心させるように微笑んだ。

 

二人は並んで竹下通りへと足を進めた。

「それにしてもすごい人だな。」

「うん・・・この間来たときもこんな感じで驚いたよ。」

「そう。・・・っと。」

アスランは答えながら、人波におされ、はぐれてしまいそうなカガリの腕をつかんで自分のほうに引き寄せた。

「あ・・・ごめん。」

カガリがまた謝った。

「まったく・・・」

アスランは思い切り呆れた声をだし、カガリの手を握った。

それはごくごく自然に行われた。

「え・・・」

カガリは驚いてアスランを見上げた。

「何?・・・あ・・・」

アスランもカガリの手を握っていることにはじめて気がついたようで赤くなった。

けれど離すことはできなかった。小さいやわらかい手。

「はぐれちゃ・・・困るだろう。」

アスランは顔を真っ赤にしながら、照れながら言った。

カガリは自分の手を包み込むアスランの手の大きさにドキドキしていた。

そういえば小さい頃は二人で手をつないで歩いていた時もあった。

いつから繋がなくなったのだろう。

あの頃は二人とも幼く・・・握りあった手も同じ大きさだったのに。

思いふけっているカガリに気がついているのかいないのか・・・アスランは声をかけた。

「それでカガリはどこに行きたいの?」

「え?」

「いや・・・原宿に行きたいって言っていたから、買い物とかあるのだろう?」

するとカガリが困ったように答えた。

「えっと・・・ぶらぶらと歩きながら気に入った店があったら入るのじゃだめか?」

「え?何それ?」

「え・・・だから・・・その・・・言葉通りだ。」

「でも・・・」

アスランは目を瞬かせた。じゃあ・・・目的もなくぶらぶらと歩くのか・・・この人ごみの中。

「でもミリアリアたちと出かける時はいつもこんな感じだぞ。まあたまには行き先も決まっている時はあるけど。」

なんだかんだといってもカガリは女の子なのだ。

・・・まあ・・・いいけど・・・アスランは小さな声で呟いた。

と、アスランはあることが気になった。

すれ違う男のうち何人かが、カガリと手をつないでいる自分をみつめ悔しそうにしていたのを。

「カガリ、ミリアリアと来たといっていたけどさ・・・その・・・知らない男から声をかけられたりしなかったか?」

「ううん。なかったよ。だってディアッカと3人だったから」

「は?」

アスランは自分の心配が吹き飛んで、あきれた顔をした。

「そりゃあ私だってお邪魔虫なのはわかるさ。けどミリアリアがとうしても・・・っていうし。」

アスランは少し安心し、3人で歩いているよう様子を想像すると自然に笑いがこみ上げてきた。

「しょうがないだろう・・・って、笑うな」

「いや・・・悪い・・・けどさ・・・」

アスランは笑いをこらえようとした、がなかなか治まらなかった。

笑いながらも、ディアッカには悪いけれど感謝だ、今度会った時には礼をいわないと・・・などと思っていた。

 

二人は学校のことなどを話しながら、目に付いた店に入って行った。

もっぱらカガリが気になった店がほとんどだったのだが。

カガリはどこの店でも品物を見繕ってはうーんと悩み、何かを買うというところまではいかなかった。

アスランはそのころころと変わる表情に見とれていた。

いくつかお店をまわった後、カガリはあるアクセサリーの店のオリジナルのストラップやキーホルダー等が作れるコーナーで立ち止まった。

キーホルダーが丁度欲しかったといって目を輝かせて手元に小さなかごを持ってパーツを選びはじめた。

しばらくあれこれとカガリは悩んでパーツを選んでいた。

「うん、これでいいかな。」

カガリが満足そうにうなずきながら呟いた。それに気がついたアスランが声をかけた。

「どんな感じにするの?」

「えっと・・・この星をつなげて・・・大きさが少しずつ違うだろう・・・それで・・・」

カガリがアスランを見上げながら説明を始めた。

「そう・・・じゃあお金を払ったら作ってくれるのか?頼んでくるか・・・」

そういってアスランはカガリの持っていた小さなかごに手を伸ばした。

「ちょ・・・ちょっとアスラン・・・私自分で買うから。」

「いいよ。ほら俺は誕生日のプレゼントをこの間もらっただろう。カガリの誕生日はまだずいぶん先だし。」

「でも・・・」

「その・・・俺も・・・同じものがほしいと思っているし・・・いいだろう。」

照れくさそうに言いながら、アスランはカガリが選んだパーツと同じものをとって彼女のもっていた小さなかごに入れていった。

「えっ・・・」

カガリの顔が赤く染まっていった。

「だから俺に払わせて・・・だめかな。」

「うーん」

「食事とかはちゃんと割り勘にするからさ・・・だめかな。」

本当は食事も自分が出したかったのだが・・・この調子では無理だろうとアスランは思った。

カガリはしばらく思案した後・・・わかった・・・と小さく呟いた。

家に持って帰って自分で作ることもできるのだが、

お店でもきれいに仕上げてくれるということなので、二人はそちらを選んだ。

ただ、すいていれば10分ほどでできあがるらしいのだが、

今日は混んでいて1時間ほどかかるといわれたので、試合の帰りにとりにくることにした。

「あれ?カガリ・・・それは?」

アスランは注文表を受け取った時、カガリの手にもう一つ小さなかごを持っていたのを見つけた。

「あ・・・これは・・・ちょっとその・・・お母さんにも買ってあげたいと思ったから自分のお金で買うの」

そう言ってカガリはアスランを軽く睨んだ。

「わかったよ・・・」

・・・おばさんのならしょうがないな・・・アスランは苦笑いをした。

が、実はアスランへの小さなプレゼントだったりするのだった。

 

(2005.2.24)

 

あとがき

すいません。すっかり更新をとめていました。5ヶ月も・・・ほっといたなんて・・・情けない。

原宿の竹下通りなんてここ最近は行っていないので・・・ちょっと覗いてからなんて思っていたりしたからなのですが、

結局あまりちゃんと覗きに行っていません。

そのうえ長くなりそうなのでいったんきってしまいました。

次回が正真正銘ラストになります。こんどはこんなに間を空けず更新したいと思っています。

 

 

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