ファーストクラスの席からチーフアテンダンドに案内されシャトルを降りたアスランは、迎えに来た屋敷の専用機へと乗り込んだ。
カグヤの宇宙港からオノゴロの自宅、アスハの屋敷へ向かうのだ。
ゆったりとした椅子に座ったアスランは窓から差込む日差しに目を細めた。
専用機に乗りこむ時にも感じた太陽の自然な光に、地球へと戻ってきたなとアスランは感じていた。
「アスランさま。昼食はどうなさいますか?」
前方に座っていた迎えの者が尋ねた。
「屋敷でとられるのであれば連絡をしておきますが。」
アスランは時計を見た。
12時少し前だった。
どうしようかとアスランが思案していると、彼が話を続けた。
アスランは彼の言葉に頬を緩めた。
「連絡をしておくと、ちょうどお坊ちゃま達とご一緒できるかと・・・。」
「そうなのか?・・・じゃあ、お願いしよう。」
「はい。ニコル様もヴィア様もお喜びになります。」
アスランの返事に彼は嬉しそうに答えた。
その言葉を聞いたアスランは、彼らの顔を思い浮かべて、優しく微笑んだ。
「ねえ、マーナだれかくるの?」
いつもと違い、テーブルにもう一つ皿がセッティングされているのに気がついたヴィアが尋ねた。
ニコルが大きな声で続けた。
「ほんとうだ。おきゃくさま?」
「さあ、どなたでしょうね。」
マーナはニコニコと笑って子供達に答えた。
うーん、とニコルは考えこんだ。
が、ヴィアはすぐ誰か思い当たったようで、ニコニコとして先に自分の席に座った。
一方、思いあたらないニコルは少し面白くなさそうに、マーナに促されながら自分の席へとついた。
子供達は言葉を交わしながら、パンケーキに手を伸ばし、自分達の皿の上にそれをのせ、幼い手つきで食べ始めた。
と、その時、食堂の入り口の扉が開いた。
彼らはそこに現れた人影をみて、目を輝かせた。
「やっぱり、おとうさまだ。」
「ちちうえ!」
フォークにパンケーキを刺し口へ運ぼうとしていたニコルは、それをテーブルの上に置き、椅子から飛び降り、アスランの方に向かって駆け出した。
マーナが止める余裕もなかった。
彼は転んでしまうのではないかという勢いで駆け寄り、どーん、とアスランの足にしがみついて、見上げながら言った。
「おかえりなさい!」
「ただいま、ニコル。」
アスランは、ニコルの頭を撫ぜたあと、彼を抱きかかえた。
そしてテーブルの側に立っているヴィアの方へと歩き出した。
ニコルに先をこされた彼女は、椅子からおりアスラン達の方を見ていた。
姿形だけでなく性格もどちらかというと自分とそっくりな彼女に彼は内心苦笑した。
カガリの言葉が頭をよぎった。
そう、彼女も苦笑しながら彼にこういったのだ。
−ニコルはいい。
私にそっくりだから。
自分でも恥ずかしくなるくらいにそっくりだ。
だが、ヴィアは違う。
お前にそっくりだ。
だからちゃんと相手をしてやってくれ。
わかったか。
テーブルの側で彼はニコルをおろし、今度はヴィアを抱きあげた。
「ただいま、ヴィア。」
少し照れくさそうに彼女は父親にしがみつきながら言った。
「おかえりなさい、おとうさま。」
アスランはギュッと彼女を抱きしめたあと、自分を見上げているニコルに気がつき、ヴィアを彼の隣におろした。
「もう、昼食は終わったのかい?」
アスランはしゃがみこみ、二人と視線を合わせながら聞いた。
「ううん、まだだよ。」
「そうか、じゃあ、一緒に食べような。」
アスランの言葉に二人は顔を見合わせ嬉しそうに笑った。
(2007.10.8)
あとがき
2006年8月からの通販のペーパーです。
アスランは休暇を取っているので、一般のシャトルにのって宇宙から降りてきました。
まあ、当然ファーストクラスに乗っています。
専用機をヘリオポリスに飛ばすという申し出をやんわりと断った結果なのですが。
前編で気がついた方もいらっしゃるかもしれませんが、
ここでの双子の性格設定は・・・極端にカガリ似のニコル、アスラン似のヴィアにしています。