ないしょばなし

 

大きなベッドに、金色の髪と濃紺の髪の子供達が見つめあうように仲良く向き合って眠っていた。

彼らの乳母・・・彼らの母親の乳母も していた・・・マーナはそっと立ち上がり、部屋を出ようとした。

彼らが眠りにつくまで彼女はベッドの側で様子を見ていたのだ。

彼女が廊下に出て扉を閉めようとした時に、向こうから歩いてきたカガリに気がついた。

「カガリさま。・・・今、お帰りに?」

「ああ、子供達はもう寝てしまったよな。」

マーナは頷いた。

そうだよな・・・と小さな声でカガリが呟いた。

もう夜の9時を回っている。

「でも明日の午後からのお休みは大丈夫なのでしょう。」

マーナの言葉に、カガリは頷いた。

明日の午後から4日ほど彼女は休暇をとることにしていた。

そのため昨日今日と帰りが遅いのだ。

「仕方ないな。・・・そういえば、今日はどの本を読んだんだ?」

カガリが思い出したようにマーナに尋ねた。

時間があればカガリが、彼女の都合が悪いときにはマーナが、毎晩子供達に本を読むことにしているのだ。

すると、クスクスとマーナが思い出し笑いを始めた。

「明日、お父様がこられますよね・・・と先に言いましたら、お二人とも大人しくベッドに入られましたよ。

それから、こそこそとお話、内緒話を始められたので、今日は本を読んでいません。」

「内緒話?」

マーナはその様子を思い出しているのか、また笑いながら答えた。

「まあ・・・マーナにはまる聞こえなんですけどね。」

本人達は聞こえないようにと小さい声で話しているつもりみたいですと、マーナはカガリに付け加えた。

カガリはその言葉を聞いて2人の様子を想像し笑った。

「ありがとう・・・ちょっと顔だけ見てくる。明日もまたよろしく頼むな。」

カガリはそういって扉をそっとあけ、部屋へ入った。

その部屋は真ん中に大きなベッドが置かれ、それをはさんで両脇の壁に、小さなクロゼットと机が並んでいた。

この間3歳の誕生日を迎えた時に、アスランとカガリからプレゼントされたのだ。

それまでは両親と一緒に寝ていたので、初日2人だけで寝るのは緊張していたようだった。

だが、双子ということもあり、彼らはその後、問題なく過ごしていた。

子供達に部屋を与えるということに対して、当初アスランは早いのではと反対した。

が、1人1部屋ではなく2人で1部屋、2人一緒だからというカガリの言葉に彼も頷くしかなかった。

キラと自分が重なるのか、なるだけ2人で過ごせる時間は過ごさせてあげたいというカガリの気持ちをアスランは尊重した。

双子とはいえ男女のためいつまでも一緒にはいられないだろう。

その時がきたら、1人1部屋になるだろう。

カガリは、ベッドの側に立ち二人の寝顔を見つめた。

今、アスランはヘリオポリスの副司令官だ。

一緒に過ごす時間は限りがある。

「お前たちもアスランに会えるのは嬉しいんだよな。」

彼の髪と瞳の色を譲り受けた娘ヴィアの頭を撫ぜながら、カガリは先ほどのマーナの言葉を思い出し、呟いた。

「どんな話をしたんだい?」

今度は自分の同じ髪と瞳の色を持つニコルの頬をツンとつついた。

 

「ちちうえ、あしたくるって。」

「このあいだ、えっと、つうしんでおとうさまいってたよ。わすれた?」

「おぼえているよ。でもあしただとはおもってなかっただけ。」

ニコルが頬をプクリと膨らませて答えた。

姿形だけでなく性格も含めヴィアがアスラン、ニコルがカガリに似ている。

「だって、ほら、カレンダーに○ついているでしょう。」

「そっか、だから、きのうもきょうもマーナだ。ははうえ、おそいよね。」

「そうだね。でも、おそくても、おかあさまきげんがいいよね。」

ヴィアの言葉にニコルは頷いた。

「だから、ははうえにほんをよんでもらえないけど、がまんする。」

ニコルの言葉に笑ったあと、ヴィアは思いついたのか彼に提案した。

「ねえ、ニコル、おとうさまにほんよんでもらおうよ?」

 

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(2007.8.26)

 

あとがき

20065月からの通販のペーパーです。

種運命戦後の設定でオフ本「この宇宙(そら)の向こう」のエピローグの前日の話です。

別居婚なのですが、カガリの教育がよく(?)、子供達はアスランを尊敬して会うのを楽しみにしています。

この双子の話もいずれ書いてみたい・・・なんて思っています。

 

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