FUJI  ROCK  FESTIVAL  '02 いってきました。

*WAVESでパティ・スミスの事を書いた時にはまさか自ら苗 場まで行くなんて無茶だろうと(じっさい無茶だったかも・・)思いましたが、、、これも運命の巡り合わせと。。レポを楽しみにして下さってる方、どうもあ りがと。長いけど読んでくれたら嬉しいな。最初にお断りさせていただきますね。私は英語はちょびっとしかわかりません。だからアーティストの話した事は正 確ではない部分がたくさんあると思います。ただのファンの感想と思って読んで下さいませ。






Patti  Smith / AVALON Field (7.26 17:00)

Television  /  RED MARQUEE (7.26  18:10)

MUSE / Green Stage 7.26 19:10

Patti Smith / Field of Heaven 7.26 21:30
Patti Smith / Red Marquee   7.27 20:30

 

Patti Smith / AVALON Field (7.26 17:00)

 それにしても天国への道のりは遠かった。
 メインの目的は21:30からのPatti  Smithだったのでちょっとヘヴンまでの距離を確かめておきたかったのと、15時の忌野・泉谷さんを見るために森の中のラフな道を歩き出したものの、気 温は高い、遠い、アップダウンもあり、で早くもへばり気味。。「ごめん、アタシ夜のパティ、あきらめるかも・・・」と呟くと、「何言ってんのよ! ここま できて!」と友に叱られる。。
 ・・で、まあヘヴンまで辿り着いただけで、西陽を受け ながら立っているのは不可能になってしまい、忌野・泉谷さんの姿をちらっと見た後は道端に座り込んで音だけ参加いたしました。

 この日配られたプログラムではメインのグリーン ステージのMUSEが、17時となっていて、もし本当だとしたら友はMUSEも見たいし、早くも戻らなきゃならない、、というわけでまた歩き出したら途中 の電光板に「NEXT Patti Smith AVALON...17:00」の文字が。。えっ?AVALONってどこ? 夜のヘヴンじゃなかったの?  とわけわからないまま、また引き返す。
 AVALONのステージは本当にこじんまりして、ナ チュラルで、田舎の村芝居に使う舞台を低くした感じ。つまり観客が草地に座り、その同じ高さに板張りのステージがあるだけ。まわりには手作りTシャツなど を売るお店がならんでいて、本当にアットホームな雰囲気。ここでパティのポエトリーリーディングが聞けるなんて、夢のよう。(この突然のステージは知らな かった人も多かったようで、後でパティのライブの時に話した人は、知らなかった事を悔しがっていました、私たちはラッキーでした)

 どきどきしながら待っていると、そでの垂れ幕の 隙間から、パティがちらっと会場を覗き込む。そして、にこ〜っと微笑む。
 パティは詩集を片手に現れて、とても嬉しそうに、とて も優しく笑いながらお客さんを見回して、大好きな友達に会ったみたいに「Hi〜」と手を振る。「ごめんなさいね、私は英語でしか詩を読めないから心で聞い てね」と断って彼女の最初の作品「piss factory」を朗読する。工場で汗にまみれて機械的な労働を繰り返す毎日をとびだして、ここから出て行く のよ、NYへ行くの、二度ともどらない、、と宣言する詩。
 パティの朗読は、天性のリズム感にちがいない言葉の ロックになっていて、彼女がまだ歌を歌った事のない頃、リーディングパフォーマンスをしていたら、いきなりステージに飛び込んでギターを弾き始めた男がい て、それが現在までのギタリスト、レニー・ケイなのだけれど、まさにレニーが飛び出していきたくなるような疾走感、グルーヴ感に溢れていた。じつはフェス へ行く車中、友は「Babelogue」をやってくれたら・・、私は「Beneath the southern cross」が聴けたらいいなあ・・と 話していたのだけど、これが次々と魔法のように実現して、、なんだか胸いっぱい。
 とんぼはパティの声が好きなのかな? しきりにそばに 飛んできては羽を休める。私の指の上でもじっとして動かない。アコースティックギターを鳴らしながら、森の中の広場で、空の下で、風の中で、じっと耳を傾 ける若者と小さな生き物と、それらと同化しながら響くパティの歌声をきいていたら、その場所が祭礼の輪のように思えて、すべての精霊がその場に集まってき ているような気がした。そう、ジェフが、フレッドが、リチャードが、空にいるパティの愛する人たちがみんな見守っているような、そんな穏やかな気持ちにな りました。
 ・・・ところが、パティはやっぱりパンクロックの女王 だったのよね(笑)朗読するパティの顔の正面にカメラを向けようとするMTVのカメラマンを罵倒して追い払う。その台詞が凄かった。(何と言ったかはフジ ロックのORGサイトのレポをどうぞ)で、すぐその後で、マイクに留まったとんぼに向かって「You stay here」とにっこり。いいぞ、パティ。 でも後でそのことをパティは謝っていました。謝りつつもやっぱりカメラマンの行為は許せなかったようで、「Fuckin' MTV!」と。。(パティは聴 衆と自分とを遮ろうとする者をとても嫌うみたいで、お客さんのそばへ、そばへ、と近寄ろうとするパティの姿はライブでも頻繁に見られて、カメラマンやガー ドの行動が凄くパティの苛立ちになっていたみたい、それはまたライブのレポで)
 でも、それ以外ではお客さんのすぐ目の前で語り、歌え るのでパティは心から楽しんでいる様子でした。ふと見ると、ステージ左にお客さんに混じってひときわ背の高いレニーの姿が。。興奮してレニーに近づいてい くようなお客さんも全くいなくて、パティも話していたけれど、フェスの雰囲気は本当にPeaceful。何かリクエストは?と問うパティに、男の人から 「Because the night」の声が上がって、内心、(これは朗読する詩とはちょっと違うのでは?)と私は思ってしまったけれど、そこはパ ティ、上手に途中からみんなを合唱させて盛り上げる。あとで自分だったら何をリクエストしただろう、と考えてみたけれど、「La Mer」も「Notes  for future」も詩は素晴らしいのはもちろんだし、聞いてみたかったけれど、日本人の私たちの耳にはたぶん難しくって、やっぱりみんなが一番良 く知っているあの曲で良かったのかもしれないなあ。。。
 みんなに語り掛けるパティの声は慈愛に満ちたお母さん みたい。スタッフが運んでくれた珈琲を「まあ、嬉しいわ」と口に運んで、でもそれをひっくり返してこぼしてしまったら、あわてて床にかがみこんでごしごし それを拭き取って、「I’m so miserable..」とみんなに照れ笑い。あ、そうそう、ギターを間違えたときも、亡くなった夫フレッドからギ ターを教えて貰った時のことを話して、少女のまんまの笑顔を浮かべながら「Take2!」と言って弾き直す。怒って、笑って、照れて、感謝して、そんな心 のままをさらしてくれるパティだからこそ、戦争への抗議と平和を希求するメッセージも彼女の正直で真剣な、嘘のない言葉なのだろうと思う。終戦直後の46 年に生まれたから大戦は知らない、けれども歴史に対しては責任がある、だからヒロシマ、ナガサキ、の悲劇に対して謝らせて欲しい、と。地球上から安全な場 所がどんどんなくなっていることを憂い、だからこそ絶対に戦争を忘れるな、平和を求める気持ちを忘れるな、と、自分の子供の世代へ強く語りつづける。そし て「People have the power」(人民には力がある)を朗読。
 ・・どうやら舞い上がってて記憶の順序が曖昧になって しまったけど、最後(?)だったのかな? パティはウィリアム・ブレイクの詩を朗読しました。会場から嬉しい声が上がるとブレイクが知られている事をパ ティは喜んで、「きっと彼も喜んでいるわ、彼は生前はぜんぜん理解されてなかったもの」とたぶんそんなような事を言いました。ブレイクの詩は「仔羊」と日 本では訳されている詩です。

  仔羊よ誰がお前を創ったの
   (中略)

  仔羊よ教えてやろう
 その方はよばれる お前とおなじ名で、
 ご自分を仔羊といわれたので。
 その方は おとなしく やさしく、
 小ちゃいこどもになられた。
 私は子ども お前は仔羊、
 私たちはその方とおなじ名前。
  仔羊よ 神様のおめぐみあれ。
  仔羊よ 神様のおめぐみあれ。

        (土居光知 訳)


 
 
Television  /  RED MARQUEE (7.26  18:10)

 AVALONのパティが終わると、正反対の場所にあるRED MARQUEEでの Televisionまであと10分しかない。ほとんどの人が一斉に行軍を開始して、遠い遠いマーキーを目指す。オアシスの橋を渡った頃にはトムのVoが 聴こえてきて、、だからオープニングがどんな感じだったのかわかりません。でもたぶん1曲目に間に合ったんじゃないのかと思うんだけど。。
 かなりの人の多さにまずびっくり。Televisionが来るというのでノスタルジーにかられて集 まってきたおじさん連ではない。たぶん活動当時は生まれてもいなかったような男の子たちが、歌詞を覚えて大声で歌っているのが信じられない。なんか尋常で ない会場の盛り上がりに、トムは無表情を装っていても、ベーシストももう一人のギタリストも興奮を隠し切れない感じだ。(私の位置からドラマーの姿は見え ず、それにしてもトム以外すっかりおじさまになってしまって、当時のメンバーなのかどうかわかんない、、あの可愛かったリチャード・ロイド?このギタリス トの音もとてもソリッドで素敵で、トムのラフな演奏とまた違ってとっても要の音を出しているなあ、と惚れ惚れと見てました。 ドラムはたぶんビリー・ フィッカのままかな?)トムはレコード当時のフレーズとはぜんぜん違う弾き方をしてみたり、そんなトムを左右からメンバーがじっと見て、巧みに演奏を合わ せる、その感じはPUNKというよりJAZZに近い。でもまぎれもなくPUNKなんだけど。そしてやっぱりドラマーはとても巧かった。
 トムはクールな人だから、観客を煽ったり、叫んだり決してしないけどものすご〜く感動してるらしいの がわかる。「Glory」の(You say)blah,blah,blah〜とか、「See No Evil」のI see,I see no  evil〜とか、ちゃんとファンが大声で歌ってくれるので私はびっくり。これにはトムも絶対びっくりしたはず。名曲「ヴィーナス」のDid ja  feel low?の問いかけをトムは黙ってみんなに歌わせてみたりして。。
 ステージの袖にはなんとパティとレニーが並んでステージを見守っている。観客のリアクションが凄いの で、ちょっと首を伸ばして会場の方をうかがったりして、それはそれは嬉しそうだったし、驚いてもいたみたい。実際、演っている雰囲気も、見ている私もなん だか驚きの渦に包まれている感じだった。これは大成功だ!という様子で、スタッフの人が手を取り合って喜んでいるのが見える。それを見てたらもう嬉しくっ て私は泣きそうだった。私の前後では、女の子が泣きそうな声で「トム!トム!」と叫んでいるし、どう考えても女の子の黄色い声の似合いそうもない(もう 50のおじさんの)トムなのに不思議だ〜。なんとなく言える事は、現在の若いアーティストの音に惹かれている若者の耳に、ちゃんとTelevisionの 音が結びついている、という事?嬉しいなあ、ほんとに。
 まさにRED MARQUEEというステージの名にふさわしいラストの曲「MARQUEE  MOON」が鳴り出した時には、前列(私はかなり前にいたので後ろの様子はわかりません)は唸り声のようなもの凄い大歓声で、拳を振り上げて聴くマーキー ムーンなんて初めてだ。。で、この曲は、最後のトムの長い長いギターの部分が1音階ずつダダダ、ダダダ、ダダダ、ダダダ、、と上がっていって、それで頂点 に達した所ではじけた星屑みたいにキラキラと音が散ってエンディングになるのだけれど、その1音ずつの上昇の部分へ行くかと思ったら、やめてみたり、なん だかトムは終わりたくないみたいにじらす、じらす(笑)・・それだから両サイドのメンバーもトムの音の合図を待ちながら延々と演奏がつづく。あんな長い マーキームーンってちょっと今までに無いんじゃないかな・・ど、どうするんだ、、とこちらの緊張もぎりぎりで、そしてとうとうその部分をトムが弾き始めた 時は、早くクライマックスを聴きたい、でも終わらないで欲しい、と身悶えしそうなほど(なんかこの表現はアブないけど・笑)、、みんなガンガン拳と首を 振っていたのでした。
 個人的にはあの可愛らしい曲「Prove It」が聞けて嬉しかったな〜。トムの声はちょっと太く なったけど、やっぱりハイトーンヴォイスの官能的な声でした。
 MARQUEEをあとにしながら、きっとこのステージはまた伝説になっちゃうんだろう、なんて嬉しく 思ったのです。(Jul.29,2002)



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