アスランはニコルの様子を見るために彼の部屋へと向かった。

仕事でプラントに行き、しばらくニコルの顔を見ていなかったからだ。

そっと部屋に入りベッドに近づいた。

カガリの言う通りニコルは眠っていた。

その頬は腫れて・・・いつもより顔が大きく見えた。

アスランは彼を起こさないようにその頬に優しくそっと触れた。

頬は熱をもっていた。

「本当に腫れている・・・」

アスランはおたふくかぜのことを知識としては知っていたものの、実際に見るのは初めてだった。

「うーん」

くすぐったいのか、それとも触れた所が痛かったのか、ニコルが少し身じろいだ。

アスランは、ハッと手を離した。

 

−やっと寝たのだから、起こすなよ!

 

居間を出た時に聞いたカガリの言葉をアスランは思い出した。

だが、ニコルは眠ったままだった。

アスランはホッとした。

いま目を覚ましてしまうと、きっと痛さと熱でぐずってしまうだろう。

アスランは、ニコルの頬や額の汗をそっと拭いた。

そして、額に一つキスをして、部屋を出ようとした。

すると、扉から覗き込んでいるカガリを見つけた。

アスランはがっかりした表情をして、廊下に出たあと彼女に話しかけた。

「心外だな・・・。起こさないさ。・・・起こしていないだろう?」

「別にそういうつもりでみていたわけじゃないよ。・・・やっぱりニコルの様子が気になっただけで・・・。

だからその・・・」

カガリはちょっと困った顔をしながら答えた。

アスランはそっと彼女の手を握り、二人は寄り添いながら寝室へと向かった。

「ニコルは生まれてからこのかた風邪とかひかなかったし、運動も秀でているし、賢いし、

てっきりおまえに似ているものだと思っていたから、少し気を抜いていた。」

カガリがそっと呟いた。

「まさか、おたふくかぜにかかるとは思わなかった。でも・・・」

「でも?」

「実際に、ニコルがおたふくかぜにかかったと聞いた時には、子供だから当たり前だ、と思ってしまった。」

「そういうものなのか」

アスランは不思議そうな顔をして尋ねた。

プラントでは聞かない。

その様子を見てカガリが説明を始めた。

「まぁ今はワクチンを打てば、必ずしもかかるというわけではない。

が、ナチュラルなら小さい頃に必ずかかる病気の一つだな。

水疱瘡やはしかもそうだ。それに小さい時の方が症状も軽い。」

「あれで、軽いのか?」

ニコルの様子を思い浮かべたアスランの口から思わずこぼれた。

「ああ・・・早ければ、明日にでも熱が下がるって主治医は言っていたぞ。

長くても熱は3日くらいだって。それに高熱ってわけじゃないからな。

大人になってかかるともっと大変らしいけど。」

へぇーっとアスランが驚いた声をだした。

「ニコルの体質が私に似ているのなら、もう少し気をつけるようにしないといけないな。

・・・ああ、母親失格だな、私って。」 

だが、アスランはシュンとしたカガリを安心させるように告げた。

「そんなことはない。コーディネータも病気にかかりにくいだけで、かからないわけじゃない。

だから一概にカガリに体質が似ているとはいえないよ。・・・でも、まあ気になるなら調べてみるか?」

「やめておこう。・・・そういえばキラも昔同じことを言っていたな。」

カガリは首を振った。

それはエリカを喜ばすだけのような気がした。

「その・・・アスラン、今日はニコルについていてやりたいのだが。」

カガリが彼の顔を見つめながら言った。

アスランはその問いには答えず寝室の二人のベッドの隣にある小さなベッドを見つめて尋ねた。

「そういえば、ヴィアは寝たのか?」

彼女は彼の問いに首をかしげながらも頷いた。

「じゃあ、ニコルの看病に行く前に・・・」

アスランはそう言ってカガリを抱きすくめ、顔を近づけてきた。

「俺のことも少しはかまってくれないか?」

彼は彼女の唇をふさぎ、二人はベッドへと倒れこんだ。

 

前編へ

 

(2006.2.28)

 

あとがき

10月から11月までの通販のペーパー用として書いたもの。

(ちょっと見直して手を入れているところがあります。)

続きを12月にアップすると書いておいて・・・・

あまり早くあげるのもあれかな・・・・と思っているうちに2月になりました。

 

 

目次へ戻る