キラがアスランとカガリに古文を尋ねたり、カガリが数学をアスランに聞いたり・・・

と、わいわいがやがやと3人は勉強を続けた。

しばらくして、カガリのお腹がグーッと鳴った。

「カガリ・・・」

からかおうと、口を開きかけたキラのお腹もそれに続くようにグーッと鳴った。

あれっ、とお互い顔を見合わせて、二人はクスクスと笑い出した。

それから、今日、用意されている夕食のことについて話を始めた。

これはいつものことだ。

アスランが時計を見ると、勉強を始めて2時間ほどがたっていた。

彼等から質問を受けるのは、ひとまず終わりになるはずだ。

「仕方ないなあ・・・。じゃあ、準備しに行くよ。」

キラと話をしていたカガリがすっくと立ち上がった。

夕食の準備に行くのだ。

と、いっても、母親が下ごしらえをしたハンバーグを焼くだけなのだが・・・。

アスランは自分の勉強にとりかかることにして数学の問題集に手をのばした。

カガリはアスランの後ろを通って・・・ベッドの上を通り部屋から出て行こうとした。

「こら、カガリ、問題集・・・。」

テーブルの上の教科書や問題集を広げたままのカガリを咎めるようにアスランは言った。

「わかっている。けど、まだ聞きたいところがあるから・・・いいだろう。」

そういい残してカガリは階下へと降りていった。

それは、食事が終わってからも、勉強を続けることを意味している。

仕方ないなあ・・・と小さく呟いていたアスランの頬が緩んでいるのをキラは見逃さなかった。

 

 夕食を取った後もアスランとカガリはしばらく勉強を続けた。

キラはというと、用件がすんだのか食事の後は自分の部屋へと戻っていった。

彼がいてあまり尋ねることが出来なかったのか、カガリの質問が続いた。

アスランは質問に答え、似たような問題を提示していった。

「他に質問は?」

何度目かのアスランの問いかけに、カガリは数学の教科書を捲った。

「さっきので、最後だ。」

ノートと教科書の印の確認を終えた彼女は顔を上げ、にっこり笑って告げた。

「そうか、よかった。」

「でも・・・また、あとで聞くかもしれない。あっ、でも・・・えっと」

「今日のところは終わりだな。」

カガリの言葉にアスランはニコリと笑って答えた。

うんと彼女が大きく頷いたのをみて、彼は入り口の上の時計に視線を移した。

針は21時半をすぎていた。

まあ、ちょうどいい時間か・・・。

そろそろ帰らないと明日もまた学校だ。

そう思ったアスランはカバンに手を伸ばした。

カガリは集中をしているのか、頭を下げたままだった。

ふと、アスランは中間テストの後にカガリに渡した大学受験用の問題集のことを思い出した。

それに載っている問題で、今までに質問をもらったことがないことに気がついたのだ。

「この間の、あれ、ちゃんとやっているか?」

すると、ノートを見ていたカガリが怪訝そうな表情で顔をあげた。

カガリの反応に、まさか・・・とアスランは思いながら続けた。

「そっちでわからないことが、いつでも聞いてくれよな。」

ようやく彼の話が思い当たったのか、あっ、とカガリは小さい声をあげた。

やっぱり・・・自分の予想したとおりか、とアスランは眉を寄せ、じろりと見ながら言った。

「もしかして・・・。」

アスランの様子にカガリは慌てて首を左右に振った。

ちゃんとやっているってば・・・と、彼女は立ち上がって机の方へ向かい、彼に問題集とノートを掲げて見せた。

頬を膨らませたカガリの様子にアスランはクスリと笑った。

「わかった、じゃあ、今日は帰るよ。」

彼は立ち上がり、時計を指した後、ドアの方へと歩き始めた。

ドアのノブを握ったところで、あっとカガリの装いを思い出したアスランは、扉を開けるのをやめ体の向きを変えた。

まさか・・・カガリは外に出るつもりはないよな、と思ったものの、少し不安を覚えたのだ。

すると、ドンと彼の胸にカガリの顔がぶつかった。

彼を送るために、カガリは慌ててアスランの後ろを追いかけていたのだ。

もう・・・なんだよ、急に・・・と、カガリは頬を膨らませながら、顔をあげた。

と、次の瞬間、カガリの視界にアスランの顔が飛び込んできた。

えっ、とカガリが思っているうちに、彼は右頬に手をあて、顔を近づけキスをした。

彼の突然の行動にカガリは目を丸く開き固まってしまった。

別にアスランと初めてキスをしたわけではない。

が、今日のように、彼が唐突にキスをする場合はあまりない。

普段はアスランの顔が近づいてきたことに彼女が気づき、瞳を閉じてから、彼がそうする場合が多いのだ。

それに、いつもお互いの家から帰る時・・・といってもアスランが彼女を家の送る場合が多いのだが、

その時は、彼女の家の隣の公園で別れ際に必ずキスをしている。

カガリは今日もそのつもりだったのだ。

「どうした・・・、急に。」

我に返り、顔を赤くしながら彼女は尋ねた。

彼の家ではよくあるのだが、自分の部屋でキスをすることはあまりないのだ。

「今日は、カガリの家だし、その格好じゃ公園はちょっと・・・・」

すると、ちょっと照れくさそうに頬を染め、アスランは答えた。

カガリも、アスランの言葉に自分の服装を確認した。

確かにこの格好じゃ公園は無理・・・か。

だからといって、玄関や玄関の外じゃ、家の誰かに見られるかもしれない。

そう・・・21時過ぎなら・・・仕事場から戻った父親と会ってしまうかもしれない。

「そうだな・・・。」

カガリはアスランの言う通りだと思い、はにかみながら彼の腕をそっと掴んだ。

そんな彼女の仕草と白いうなじにアスランはどきりとした。

「カガリ・・・。」

彼は甘い声を出して彼女を引き寄せた。

それは無意識の行動だった。

近づいてくる彼の顔に気がついたカガリは目を閉じた。

アスランは、そっと優しく彼女の上唇を啄ばむようにキスをした。

驚いたカガリは、えっと小さく唇を開き、目を開けた。

が、間髪いれず、目を閉じうっとりしたアスランに引き寄せられた。

彼は彼女の唇を包み込むように塞ぎ、そっと、彼女の唇の輪郭を確かめるように舌でなぞった。

それから、小さく開いていた彼女の口に舌を差し入れ、さらに中を堪能し始めた。

いつもと違うアスランの行動にカガリは驚き戸惑った。

頭を動かそうとしたが、いつのまにか彼の左手は彼女の頭の後ろに、右手は彼女の頬に添えられて、できなかった。

い、息が・・・く、苦しい・・・。

彼女はどんどんと彼の胸を叩いた。

ハッと気がついたアスランは唇を離した。

はあ・・・と息を吸ったカガリは、恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、アスランを見あげ、勇気を搾り出すように尋ねた。

「な、なんだ・・・今の・・・は。」

「えっ・・・と。その・・・カガリ・・・。」

問われたアスランは自分の行動を思い返し、真っ赤な顔になった。

「その・・・。」

答えを求められても・・・・アスラン自身口にするのは気恥ずかしかった。

が、睨みつけるようなカガリの視線を避けるように、彼はちょっと横を向きながら言った。

「キス・・・だけど。」

キスって・・・でも、いつもの唇を重ねるものと違った・・・じゃないか。

カガリは唇に手をあてながら頭をフル回転させていた。

「えっと・・・それって・・・。」

そういえば、3年になってすぐ、クラスメイト達の話題に上っていたことを思い出した。

キスにもいろんなものがあって・・・恋人の・・・大人のキスにこういうものがあるって・・・。

でも、まさかアスランが・・・。

アスランは彼氏だけど・・・恋人なんていうのはまだまだカガリにとって気恥ずかしいものだった。

だから・・・大人のキスなんてもっともっと先のことだと思っていた。

俯いて黙り込んでしまったカガリにアスランは動揺した。

ちょっと急ぎすぎたかもしれない・・・。

「ごめん、その・・・驚かせて。・・・えっと、カガリが嫌なら・・・。」

頭に手を添えながらも、自分と視線をあわせず落ち込んだ表情をしたアスランに気がつき、カガリはドキリとした。

何か言わないと・・・。

でも、なんていえば・・・。

「は、初めてだから・・・びっくりしただけだ。」

「カガリ?」

アスランは、視線を彼女に戻した。

相変わらず真っ赤な顔のままのカガリが続けた。

「だ、だから、驚いただけだ。・・・わかったか。」

「カガリ!」

彼女の言葉に、アスランは嬉しくなり、再び彼女の腕を取って引き寄せようと右手を伸ばした。

が、その手の平を彼女がキュと握り、反対の手をドアのノブへ伸ばした。

「今日はもう帰るんだろう。」

彼を引っ張るようにしながら、カガリは廊下へと出た。

胸はドキドキとなっていた。

今日はもうこれ以上、彼に引き寄せられてキスをするなんて・・・無理だと思ったのだ。

でも、気分を害していたらどうしよう・・・と、カガリがそっとアスランの表情を窺った。

視線があったアスランは、彼女に優しく微笑みを返した。

それから、二人は手を繋いだまま、階段をおりていった。

 

アスランを玄関で見送ったあと、カガリはリビングへ足を向けた。

テレビの前のソファに座っているキラに気がつき、彼の隣に腰を下ろした。

恋愛映画なのか、テレビの中の二人は抱き合い、お互いを求めるように唇を重ねたあと、ベッドに倒れこんでいった。

カガリはアスランとのキスを思い出した。

テレビの中の二人はベッドの中で愛し始めていた。

もしかして・・・アスランもそうなのか。

「どうしたの、カガリ?」

キラは口に手をあて、真っ赤になっているカガリに気がついた。

「えっ、いや、・・・なんでもない。」

彼に見つめられていることに気がついた彼女は、隣にあったクッションを手に取り、それを抱きかかえ顔を埋めた。

 

(2008.5.6)

すいません・・・・とっても間隔があいてしまいました。

ほぼ、1年ぶりの更新です。

本当にあきすぎですね。

当初は昨年の7月くらいにはあげようと頑張っていたのに・・・情けないです。

ずっと、途中まで入力したメモを印刷して、持ち歩いていたのです。

いやあ・・・その・・・二人のキスシーンを書くことが、なかなかできなくて・・・困りました。

(自分の頭の中では妄想しまくっているのですが。)

本当にすいません。

続きは、今度こそ間をあけずに更新したいと思っています。

 

 

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