「キラ!起きろ!今日は登校日だ!」

「わかった・・・ああ・・なんで高校生になってまで」

 

体育祭

 

今日は8月21日。高校の登校日である。

「いってきます!」

元気に家を出て行くカガリ。

「いってくるね」

とはぁ〜とあくびをしながらキラ。

「なんで、お前そんなに眠そうなんだ」

「うーん。昨日遅くまでゲームしていたから。カガリは元気だね」

「うん。だって今日は登校日だぞ。楽しみ!」

楽しみにしているのは君ぐらいなんだけど・・・とキラは心の中で思った。

 

「おはよう、キラ、カガリ」

靴箱のそばで二人は声をかけられた。

「あっ、おはよう!アスラン。じゃあ私あっちだから行くね」

とカガリは満面の笑顔をアスランに向けながらも、自分の靴箱の方へ駆け出していった。

「えっ!カッ、カガリ・・・」

夏休みの登校日の朝からカガリと会えて、うれしかったアスランだった。

しかし、彼女が挨拶もそこそこに自分の靴箱へ向かっていったので、彼は慌てた声をだし、がっかりした顔を露骨にした。

相変らず鈍感なカガリと彼女の一挙一動に一喜一憂するアスランの様子を横目に

笑いがこぼれそうになるキラは自分の昼ご飯のことを思い出し、カガリに向かって叫んだ。

「あっ!カガリ!昼は一度家に戻る?」

靴箱に運動靴を入れようとしていたカガリの手がとまり、ちょっと考えるかのように首をかしげて

「うーん・・わかんないや」

とこたえた。

「ええー!」

キラは思い切り不満の声をあげた。彼女が家に戻らず学校で時間をつぶすというのなら、昼ご飯をコンビニで確保して家に帰る必要があるからだ。

「わかった。終わったら8組に行くから。待っていて。」

そういってカガリは二人に手をふって自分のクラスに走って向かっていった。

「だってさ。アスランも待っていれば」

「何が言いたい。」

ほんのりほほを染めながら、ふてくされたようにアスランは言った。

「だって、カガリと話がしたいでしょう。アスラン」

図星なので何もいえず、アスランはぷいっと横をむいた。

キラはその様子をみてくすっと笑いそうになったが、そういうことをすると彼の機嫌を損ねるとわかっていたので我慢した。

「まあいいや。話は変わるけど、もう戻ってきちゃったの。アスラン」

「いや・・。けど、去年の反省をふまえて登校日はくることにした。」

「そうか。カガリなんかもう今日は楽しみで朝からわくわくして大変だったよ。きっと昨日はあまり寝てないと思うよ。」

「へえー。まあカガリらしいけど」

 

二人は靴箱から自分達の教室へ向かった。キラとアスランは8組だ。キラの彼女のラクスも一緒である。

キラと双子であるカガリは当然同じクラスにはなれず3組だ。

「そういえば、体育祭、カガリのクラスと同じ組だといいのに・・・」

「そうだな。そうだとうれしいな。」

アスランは少しはにかみながら答えた。

「キラは去年も同じ組だったんだよね、体育祭。」

うらやましかったんだよな、俺、とアスランは去年のことを思い出していた。

「うん。双子だから同じクラスになることはほとんどないからね。体育祭とかで一緒の組になれるとうれしいんだ」

とキラが答えた。

教室に入った二人は話を続けるために、アスランの席のうしろの空机にキラは座った。

「アスランは去年白組で応援団だったでしょう?」

「ああ・・・まあ」

アスランはちょっと戸惑ったように答えた。

「カガリ・・・きっとまた応援団だと思うよ。今年も」

「そうなのか」

アスランは去年の青組のカガリの姿を思い出した。

(可愛かった・・・けどあれで一気に人気があがったんだよな・・)

そして、はぁ〜と小さいため息をついた。

「もしカガリのクラスと同じ組になったらアスランも応援団入りなよ」

「え、えぇー」

キラの発言にアスランは思わずのけぞった。

「何でそんなに驚くの?カガリと一緒にやりたくないの?去年だって応援団やってたよね。」

「まだ同じ組と決まったわけじゃないだろう。」

「まあそうだけど・・もし一緒の組だったらって考えたらだよ。」

(せっかく人が協力してあげようと思っているのに)

「だから・・・」

そもそも俺はその応援団がいやで今日学校にきたというのに・・・と喉まででかかったが、黙っていた。

とそこへ教室の入り口からで3年生が入ってきた。

 

3人が通う高校は創立100年をこえる伝統校だ。

毎年10月の第1日曜日に体育祭が行われ、赤・白・青・黄の4つの組に分かれ勝ち負けを競ういあう。

伝統校がゆえ体育祭の運営はいまだ生徒の手に委ねられている。

そのため3年生が7月に「体育祭実行委員会」を立ち上げ計画を立てるのである。

そして毎年8月21日の登校日にその年の体育祭の概要が発表される。

 

カガリの教室にも3年生が入ってきた。ざわついていた教室が静かになった。

2年生は体育祭の発表があることを知っているので出席率がいい。

「3年3組のイザーク・ジュールだ。今年の体育祭のことを連絡する。わが3組は伝統の赤組だ!

 先月のクラスマッチで1位となった実力で赤組の優勝を勝ち取るのだ!」

そこでいったんイザークは話をきった。

教室がざわついていた・・・赤組だって・・すごいぞ

そんな声があちこちから聞こえた。カガリも興奮していた。

なぜなら赤組は今連勝記録を更新中なのだ。その更新を途絶えさせてはいけない。

「ペアとなるクラスは・・・」

イザークの話が始まると、また教室は静かになった。

「8組だ」

教室がざわめく・・・8組ってこの間のクラスマッチ3位だったよな・・

優勝いけるぞ・・そんな声が回りから聞こえている中、カガリは別な意味で喜んで、顔が綻んできた。

(8組ということはキラと一緒だ!アスランとラクスとも一緒だ!やった!)

「ついてはクラスから応援団を男子5女子3、あと企画係を男女4人ずつ決めて報告してくれ。

 このクラスは体育会系クラブのメンバーが多いので決めるのは大変だと思うが、よろしく頼む。

 それから、応援団に選ばれたものは本日13:00 3年3組に集合だ。8組との顔見せになる。

 あと企画係については8月25日13:00に3年3組に集まってくれ。

 最後に赤組の団長はイザーク・ジュール、副団長は8組のディアッカ・エルスマンだ。

 赤組の優勝をめざし一致団結してがんばろう」

 

その頃8組では、3年8組のディアッカ・エルスマンが同じように説明していた。

「ペアとなるクラスは3組だ」

教室がざわめいた。赤組と聞いてちょっと不満げだったクラスの感じが少しなごんだ。

なぜなら3組はこの間のクラスマッチでダントツの1位だ。

「えっ!」

「3組!?」

アスランとキラは顔を見合わせてた。

3組ってカガリの・・アスランは頬が思わず緩むのを感じたが止められなかった。

キラはそんなアスランをニヤニヤしながらみていた。そして思い出したように言った。

「アスラン・・・これで応援団だよね。」

アスランはすごく複雑な面持ちをしていた。

昨年登校日に欠席したばっかりに応援団が回ってきたアスランは

今年はそういうことがないようにと思い今日学校にでてきたのだ。

あまり積極的に応援団・・みたいなことは好きではないのだ。

(でも、カガリはきっと応援団なんだよな・・)

去年の彼女の姿がまた頭によぎる。

今年は同じ組になるわけだし、去年のように遠くから眺めるだけというわけではないだろう。

「キラ、お前はどうするんだ?」

百面相をしていたアスランからいきなりキラはきりだされてちょっと驚いた。

「僕?僕は企画係に立候補するよ。」

「りっ、立候補?」

「うん、去年もそうだったし。今年もやるって決めてたんだ。どうせカガリは応援団だと思うし」

ディアッカはもう既に教室からでており、クラス委員がメンバーの選考を始めていた。

「カガリが心配だからね。帰りとか遅くなるじゃない。でも応援団はちょっと僕は苦手だし。だから」

そういい終わると、キラがスッっと手を上げていった。

「委員長!僕、企画係やります。それから応援団にアスラン・ザラ君を推薦します」

「おい・・え・・キラ!」

まだ迷っていたアスランが困ったようにしていた。

「やるよね。アスラン・・・」

ああー今年も応援団か・・・アスランは小さな声で少し呟いた。

今年はカガリと同じだから・・・まあいいか。

 

続く

(2004.6.9)

 

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