「うーん・・・」
カガリは目を覚まし、すこし伸びをしながら体を起こし周りを見回した。
あれ?ここは私の部屋だ。どうしてここに?
確かアスランを待っていたのだけど、結局店が閉まる時間になって・・
そうだ、私は泣いてしまったのだ。キラの前で。
それで・・・どうやって家まで帰ってきたのだろう・・・。
覚えてない。
たぶんキラが連れて帰ってきたくれたのだろう。
そして、そのまま寝てしまったのか。
ふとベットサイドに置かれている時計をみる。6時をさしていた。
そういえばアスランは結局どうしたのだろうか。
連絡もなく約束に来ないなんて今までなかったことなのに。
カガリは少し気分が沈んできた。
グー
気持ちとは関係なくおなかが鳴る音が聞こえてきた。
昨日は夕飯も食べずに寝てしまったからだ。
あんなに悲しかったのに、今も少し気がめいっているのだけど、お腹はすいてしまう。
カガリは小さく笑った。
「母さん、起きているかな」
カガリはもう一度伸びをしてベッドから降りた。
部屋を出ようとした時に、入り口の近くにある鏡に自分の姿が映った。
そこにはスカート姿の自分が映っていた。
「あ・・・」
昨日はアスランの誕生日だからと思ってスカートを着ていたのだ。
慣れないことはするものではない。
カガリは自分の姿に苦笑して、机の椅子にかけてあったジーパンを手に取り着替えた。
そして、机の上にある携帯をみつめてそのまま部屋を出て行った。
携帯のランプはアスランからの連絡が入っていることを示していたけれども。
リビングに灯りがついていた。
カガリがこっそり覗くと父親がテーブルに座って新聞を読んでいた。
台所から料理を持ってきた母親がカガリに気がつき声をかけた。
「おはよう。カガリ。お腹すいたの?」
「あ・・おはよう。母さん」
カガリはばつが悪そうにリビングへ入ってきた。
「おはよう、父さん」
「ああ、おはよう」
そして食事を始めた父親に声をかけ、ソファに座り込んだ。
「昨日は晩御飯も食べずに寝てしまったから、お腹がすいているのよね?」
母親が少し笑いながら再び尋ねる。
「う・・・うん」
図星なのでカガリは恥かしくて顔が真っ赤になった。
「じゃあ、準備するから、待っていてね」
そういって母親は台所へと向かった。
と、その時カガリはあることを思い出して母親に尋ねた。
「母さん、その・・・紙袋知らない?」
「紙袋?」
「えっ・・・と。昨日店に持っていっていた、アスランのプレゼントが入った紙袋」
母親は立ち止まり首をかしげて、それから答えた。
「ああ・・あれね。キラが昨日アスラン君に渡していたわ。」
「アスラン・・・昨日来たの?」
カガリは驚きで目をまるくしていた。
「ええ。9時過ぎかしら。血相を変えてきたわよ。」
「・・・・」
「でもあなたは寝てしまっているから。がっかりしていたみたいよ」
「好きで寝てしまったわけじゃない。」
カガリが不機嫌な口調で答えた。
「まあそうだけど。けど、かなり落ち込んで帰ってしまったみたいだけど。アスラン君」
そういいながら母親は台所に再び向かい始めた。
「そうそう、キラも大分嫌味をいっていたわよ。」
「落ち込んで・・・って、だってもともとはあいつの方が約束を破ったわけで」
寝てしまった私が悪いのだという感じでいわれても・・・とカガリが小さな声でつぶやいた。
でも、落ち込んで帰ってしまうアスランの姿を想像しちょっと悪いことをしたなとも感じた。
「そうだ、じゃあケーキは?」
キラがプレゼントを渡したということはケーキも渡してくれたのだろうかと考えカガリはたずねた。
「それがね。ケーキは渡してないの。」
カガリは少しがっかりした。
「ほら、あなたが店を出るときにケーキは母さんの好きなようにしてって言って帰ったでしょう。」
「そっ、そうなの?」
全然覚えてない。
「ケーキは私が家に持って帰ってきたの。その後アスラン君がきたので、渡そうと思えば渡せたのだけど」
母親はカガリの朝食を準備しながら話を続ける。
「キラがね。もったいないからって渡さなかったのよ。私はいいの?と聞いたのだけど」
カガリはすごく複雑な気分になった。
確かに約束を破ったのはアスランで、プレゼントのケーキが彼の手に渡らないのはしょうがないとも思う。
きっと昨日自分が起きていたとしても、かなりごねてから最後にケーキを渡しただろう。
でも、もしかしたら食べてもらえたかもしれなかったのに、そう思うと少し残念でもあった。
「じゃあ、ケーキは?」
「すまない。父さんが食べてしまった。」
父親がポツリといった。
「あっ、父さんが」
カガリは別な意味で心臓が跳ね上がった。プロの父親が自分のケーキを食べたのだ。
恥ずかしい反面、反応が少し気になった。
「なかなか美味しかったぞ。甘さが少し抑えられていてね。」
「あっ、ありがとう」
カガリはうれしくなった。
まあ少しは娘に対する贔屓目もあるのかもしれないが、それでも父親に誉められたことはうれしい。
「まあ、その話はこのへんにして、ご飯を食べてね。今日は学校でしょう?」
「えっ・・・・」
カガリは目をパチパチして何か思い出そうとしていた。
「あら、今日は模試だって行ってなかった?」
カガリの顔が渋くなった。すっかり忘れていた。
「模試には行きたくない。」
アスランにはまだ会いたくない。
カガリはソファの上でひざを抱えて、ひざ掛けにもたれかかった。
さっきまでのうれしい気持ちが遠ざかってしまった。
「こんな気持ちのまま受ける自信がない」
そして、抱えたひざに頭をうずめた。
「じゃあ、今日は父さんと一緒に出かけることにするか?」
「えっ」
カガリは頭を起こして父親を見た。
「あら、あなた、今日は例のホテルの仕事に連れて行くつもり?」
母親も驚いた顔をして父親をみつめつぶやいた。
「まあついてきても、父さんの作業を見ているだけになるのだけども。」
沈んでいたカガリの顔が明るくなっていた。
父さんの作業が見られる。
それは少なからずケーキ作りに興味を持ち始めていたカガリにとっては魅力的な話だった。
「いいの?部外者がいっても」
「邪魔にならないようにしていてくれれば大丈夫だろう。まあそれが可能なのは午前中いっぱいくらいだけど」
「じゃあ行く。行きたい。」
模試なんかより断然そっちの方がおもしろい。
「じゃあご飯食べて、準備をしなさい。」
元気がでてきたカガリをみて安心した父親はいった。
カガリも大きく頷いて朝食をとりはじめた。
「カガリ」
食事を終えて出かける準備をするためにリビングを出ようとしたところ、カガリは母親に呼び止められた。
「模試にはいかないで、お父さんの仕事について行ってもいいけれども、ちゃんとアスラン君に連絡をいれておいてね。」
カガリは「えっ」と母親の顔を見た。
「昨日のあの様子じゃ今日は絶対朝迎えにくると思うわ」
そういえば約束もしていたことをカガリは思い出した。
「けど・・・」
「お母さんも困ってしまうのよね。そうなると。」
「あ・・・けど・・・」
「昨日は確かにアスラン君が連絡をカガリにしなかったのは悪いかもしれないけど、あなたも同じことをするつもりなの?」
カガリは「あっ」という顔をして小さく頷いた。
そして2階の自分の部屋へ駆け上がっていった。
急いで自分の身づくろいを行ったあと、携帯を手にとった。
携帯にはアスランからの着信とメールが入っていた。
着信の方は昨日の夜アスランがカガリの家に向かう前の時間のものだった。
そのあとの時間に2通メールが入っていた。
それはカガリを起こさないようにとアスランが気遣ってのことだった。
1通目のメールの中身は謝罪と遅れた理由とプレゼントのお礼だった。
2通目のメールには謝罪と今日の朝迎えに行くからという内容だった。
カガリはなんと返信しようかと考えた。
さっきの母親の話で、昨日のアスランの様子はなんとなくわかった。
きっとその後一人、部屋で悶々とし、悩んでいる姿も想像できた。
メールで「気にしてないから」と答えてもいいのだけれども、それは躊躇った。
遅れた理由が少しあいまいで気に入らないのだ。
なんとなく想像はつくが、それは明日ダコスタに聞けばわかることだと思った。
ただアスランはそのことをはっきりいうと自分がもっと怒るだろうと思っているからこそあいまいにしているのだ。
そこがカガリは気に入らないのだ。
とはいえ、たぶん、昨日自分が起きていて、アスランと直接会ったとしたら、きっと散々彼に文句をぶつけたあと
最後には許していたに違いないとも思うのだけれども。
カガリは迷ったあげくメールをうち始めた。
「じゃあ、行ってくる」
「それじゃあ、いってきます。」
父親とカガリが一緒に声をかける。
「あっ、カガリ、アスラン君に連絡入れた?」
「うん。メールした。」
「それから今日の夜はどうするの?レノアは楽しみにしていたのだけど。」
カガリは固まった。
その反応をみて母親は彼女が今日の夜の約束を昨日のことですっかり忘れていたことに気がつき苦笑いをした。
「行くわよね?」
カガリはしばらく固まっていたままだったが、少し小さな声でいった。
「・・・・・・わからない」
「まあ。」
「これから考える。おばさんが楽しみにしてくださっているのはわかっているから」
すると母親はカガリを抱きしめていった。
「わかったわ。でも、行きたくなかったら無理に行かなくてもいいわよ。その代わりちゃんと連絡してね。アスラン君にも私にも」
「うん。」
そうしてカガリは父親と車で出かけた。
アスランは目覚ましとも違うアラーム音に気がつき目をさました。
「なんだ・・・携帯?メールか」
と呟きもう一度眠りにつこうとしたが、ガバッと飛び起きて携帯を探した。
あの着信音はカガリからのメールだ。
携帯を手にとってはやる気持ちを抑えメールを開く。
そして大きなため息をついた。
急に父さんと出かける用事ができたので今日は模試には行きません。
アスランは模試がんばってね。
昨日の件には何も触れていない、事務的な内容だけ。
アスランは携帯をみつめ、ベッドの横の壁にしなだれかかりつぶやいた。
「こんな気持ちのままで、がんばれないのだけど。カガリ」
そして小さくため息をつき、短い文章からいろいろと考えがよぎりはじめた。
がんばってね、と書いてあるということは少なくとも自分を嫌いにはなってないようだ。
怒ってはいるだろう・・・だから、きっと昨日の今日で会いたくないだけなのだろう。
俺だってメールだけの謝罪で許してもらおうなんて都合のいいことは考えてない。
昨日だってカガリが泣きつかれて寝ていなかったら、こんなことにはならなかったのだ。
まあ泣くような原因を作ったのは俺だから、しょうがないのだけれども。
でも、もう会いたくないって思っていたらどうしよう。
そうだ、夕方・・・今日の夕方はきてくれるのだろうか。
アスランは不安になり、思わずカガリの携帯に電話をかけた。
が、通じなかった。
移動中で単に圏外ならいいのだけれどもまさか電源をきっていないよな?
アスランは疑心暗鬼に苛なまれそうだった。
が、「模試がんばってね」の一言を頼りにメールをうった。
カガリ、昨日は本当にごめん。模試の件はわかった。
それで今日の夕方のことだけど大丈夫だよね。
楽しみにしているから。あと17時半に迎えに行くよ。
アスランはベットから起き上がり机の方に向かった。
机の上には昨日キラが渡してくれたカガリからのプレゼントが置いてあった。
それは深緑のセーターだった。
Happy Birthday
受験の時に寒いといけないのでセーターを。
(手編みは次の機会にでも)
アスランはカガリがこのためにバイトをしていたのを始めて知った。
そして、これ以外にも自分を驚かせるために何かを計画していたことは気づいていた。
けれども、きっとそれを台無しにしてしまったこともわかった。
そうでもなければ泣き疲れるほど泣いたりなんてしないはずだ。
何を計画していたのだろうか。
アスランはため息をまた一つついた。
なんだかんだといっても自分は模試を受けに学校に行かねばならない。
全国規模の模試はこのあとは12月までないからだ。
アスランは重い気持ちを引きずりながら着替え始めた。
そのころカガリは父親と車で仕事場に向かっていた。
助手席のカガリに父親が話し掛ける。
「カガリ、あのケーキだけれども。甘さはどうやって抑えたのかい。」
「え?」
「いや、最初に父さんが教えた作り方ではもっと甘くなるだろう?」
その後はなにも質問をカガリからは受けてないのだが、と父親は思っていた。
「うん。作ってみたけど、アスランには甘すぎるなと思った。」
「そうか。それで、どうしたの?」
「えっと、最初は単純に砂糖を減らしてみたけど、それだけじゃああまり美味しくなかったから・・・・」
カガリは父親にケーキを作るまでの試行錯誤について身振り手振りを加えて話した。
その説明のはしばしに「アスランが・・・」とか「アスランには・・」という言葉が紡がれていて父親は少し複雑な気持ちで聞いていた。
話している本人がそのことにまったく気がついてない事もそれに拍車をかけた。
ひとしきりカガリの説明を聞いたあと、父親はたずねてきた。
「カガリ、ケーキ作りは楽しいかったかい?」
「うん。とっても。奥が深いなとも思った。父さんってすごいよね。」
「そんなことはないけれど。それより、バイトは昨日までかい?」
「うん」
「そうか、母さんには帰ってから話すつもりだが、カガリ、厨房を手伝う気はないか?」
カガリは父親の言葉に目を丸くする。
「父さんのあとを継ぎたいと・・・ケーキ職人になりたいと思わないかい?」
「・・・えっと、今回のことで、ケーキ職人は面白そうだと思った。けど大学のこともあるし・・・」
「進学はおまえ次第だ。大学に行かないでこのまま本格的にケーキ作りを学ぶのもいいし、
大学に行って、その間は手伝いをして、その後でもかまわない。」
「・・・・・・」
「まあ、基礎的な動作はなるだけ早めにつけたほうがいいと父さんは思っている。
厨房を手伝うといっても基礎的な動作が中心になるからつまらないかもしれない。
おまえさえよければバイトの時間のベースでかまわないから手伝ってみないか?」
「父さん」
「ただ、バイト代は出なくなってしまうけどな。代わりといってはなんだが小遣いをあげてもらうよう母さんに交渉するが。」
カガリは驚きのあまりすぐには声がだせなかった。
父親からまさかそういう話を切り出されるとは想像してなかった。
そういう思いもあって今日仕事場に連れて行ってくれているのだと改めて理解した。
「父さん、少し考えてもいいかな。」
「そうか。わかった。」
そういって父親はカガリの頭をなぜた。
「それから、カガリ、もうひとつ話があるのだけれど」
話すのはどうしたものかと当初迷っていたが、先ほどのカガリの様子をみて父親は話す気になった。
「何?父さん」
カガリは運転をしている父親の顔を覗き込んで答えた。
「昨日何があったか父さんは知らないけれども、ちゃんとアスラン君の話をきいてあげないとだめだぞ」
「えっ・・・・うっ、うん」
どうしていきなり・・そんな話を父さんはするのだろう。
「カガリはアスラン君のことが好きなのだろう?」
カガリは真っ赤な顔をしてうつむいた。
その様子を見ながら父親は言葉を続ける。
「アスラン君が受験勉強に専念し始めてきて、会う時間が減ってきたのだろう。最近。
カガリはそれでさびしくなったり不安になったりする時があるのだろう。違うかい?
時々はちゃんとそういうことをはっきり言わないとわからないからね、男は。言い過ぎるのもよくないが。」
「・・・・・・」
「男は好きな女のためにはなるだけ時間を割こうとはするさ。可能な限り。
でもほら、仕事とかどうしてもはずせない用事が出てきたりするようになってくる。大人になってくると。
そうなると逆に好きな女を信じてしまっているから仕事を優先してしまうのさ。」
カガリは赤い顔をしながら、上目遣いで父親をちらりと見た。
「まあカガリがアスラン君に愛想がついて別れたいと思っているのであれば、彼の話をきく必要はないけどね。」
カガリはうつむいたままだった。
「カガリは不安で彼の気持ちが信じられなくなってきているのかもしれない。
が、昨日彼が家にきたということは、彼にとっておまえは一番大事な女だということだと思うよ。」
「・・・そっ、そうなのかな。・・・・」
カガリは父親の話を聞いて恥ずかしいやらうれしいやらで頭が沸騰しそうだった。
父親はカガリの頭をぽんぽんとたたいた。
「だから、ちゃんと話をすること。後悔したくないだろう。」
カガリはうなずいた。
「おはよう、キラ、聞きたいことがあるのだが」
キラが教室についたときに、隣の教室の入り口でまっていたアスランが彼に近づいてきていった。
「おはよう、アスラン、何?」
昨日の今日で、キラの様子も少しとがっている気がするが、
それはこの際無視することにしてカガリのことをたずねた。
「カガリ、おじさんと今日出かけたみたいなのだが、どこに行ったのか知っているか?」
「知らないよ。僕が起きたときにはもう二人とも出かけちゃっていなかったのだから。」
まったくあの人たちは・・・とキラはどうもカガリたちにもご立腹のようだった。
「じゃあ、今日のカガリの様子って見てないのか?」
「だから知らないよ。もう父さんってば、カガリには甘いのだから」
「そうか。」
「そうだよ。カガリが模試に行きたくないっていったから連れて行っちゃたんだよ」
「えっ」
僕だって受けたくないのに・・ずるいよ、とキラのぼやきはアスランの耳には入らなかった。
それって俺に会いたくないってことなのだろうか。
メールに対する返信もまだない。
アスランは気持ちが沈んでくるのを感じた。
「とりあえず、僕は今日のカガリについては知らないよ。アスラン、自分でちゃんとしてね。」
そういってキラは自分の教室へ入っていった。
一方アスランはしばらくショックでその場を動くことができなかった。
そんな二人の様子を遠目にみている人影がいた。
仕事場に着き、車を降りた時にカガリは携帯をみた。
するとアスランからのメールが入っていることに気がついた。
が、カガリはまだ返事が出せなかった。
父親の仕事を見学しながら、カガリは考えていた。
父親が車の中で彼女に話した内容。
自分の将来、やりたいこと。
そしてアスランのこと。
午前中の作業が終わった父親と一緒に昼食をとり気持ちを伝えた。
「父さん、今日はありがとう。私、明日から厨房手伝うよ。」
父親が嬉しそうにうなづいた。
「それからアドバイスありがとう。私、帰るから」
カガリは駅へ向かう途中、アスランへとメールをうった。
それから、ダコスタからの受信メールをみつけた。
午後の試験が始まる少し前、アスランは携帯メールの着信音を聞いた。
カガリからのメールだ。
アスランは不安と期待でメールを開いた。
今日は18時くらいにアスランの家に行けばいいかな。
迎えにはこなくてもいいから。
時間が違うときは連絡してね。
あっ・・・・よかった。
アスランはホッと胸をなでおろし、返信をいれた。
そしてやっと彼は集中して模試をうけることができた。
夕方、ザラ家リビング
「カガリちゃんの家にいってきてくれない?アスラン」
「でも、カガリは迎えに来なくていいっていっているんだ。」
下手にこれ以上はカガリの機嫌を損ねたくないと思いアスランは母親にいった。
「だからカガリちゃんを迎えにいってなんて言ってないわ。注文したケーキを取りにいってきてって言っているの。
そのついでにカガリちゃんと一緒にもどってくればいいでしょう。」
「でも・・・おばさんからも大丈夫だって連絡があったんでしょう」
アスランの家で夕飯は食べるからと連絡があったとレノアも聞いていた。
「それはそうだけど」
レノアも昨日の騒動をきいたようで、一抹の不安をだいていたのだ。
ピンポーン
玄関のベルが鳴った。
アスランとレノアが顔を見合わせた。そしてアスランは玄関に向かった。
アスランが扉をあけるとカガリが立っていた。手にはケーキ箱を持っていた。
「よう」
すこしはにかんだ表情でカガリはアスランに声をかけた。
「カガリ!」
アスランの泣きそうな声が玄関に響く。
そのまま引き寄せて抱きしめたかったができなかった。
「カガリちゃん、いらっしゃい」
レノアがリビングからでてきたのだ。
「こんばんは、今日は招待していただいてありがとうございます。
これ、注文されていたケーキです。」
「どうもありがとう。じゃあ、あがって。今日来てくれて本当にうれしいわ」
レノアはケーキを受け取りながらアスランをチラッと見て言った。
「あ・・・いえ」
「もうちょっとしたらパトリックも帰るから、リビングで待っていてくれるかしら?」
「はい・・・えっ、ちょっちょっと」
レノアと一緒にリビングに入ろうとしたカガリの腕をアスランが掴んでひっぱった。
「母さん、俺の部屋で待っててもらうから」
そして有無もいわせず、アスランはカガリを2階の自分の部屋へと連れて行った。
アスランの部屋へ入るやいなやカガリは後ろから抱きしめられた。
「ごめん。」
カガリの肩に顔をのせアスランが謝る。さっきの態度とは一転して小さな声で。
「昨日は本当にごめん。」
「アス・・・ラン」
カガリの耳元で彼は言葉を続ける
「ごめん」
おい・・・反則だぞ、とカガリは思う。
「今日はきてくれてありがとう」
カガリを抱きしめる力が強くなる。
「メール見たときはとても嬉しかったよ」
「・・・・」
「本当にごめん」
「わかったから、今回だけだぞ。」
アスランが頭をあげた、そして少し抱きしめていた力が緩んだ。
カガリは向きをかえてアスランを正面から見つめた。
「カガリ」
「ダコスタに礼をいうんだぞ。」
カガリが両手がアスランの頬をとらえた。
「えっ、ダコスタ?」
「そう。気にしてメールをくれた」
アスランはカガリの手を握った。
「そうか。」
カガリを引き寄せ頬に口付けをし抱きしめた。
「で、昨日は何を計画してたんだ。俺のために」
「は?」
「教えてくれないのか」
「秘密だ。」
「ちぇ」
「お前が自分で潰したんだろう、絶対教えない」
「そうか」
アスランはいったん身体をはなして、カガリの頬を両手でつつみ顔を近づけていった。
カガリも目を閉じた。
唇が触れ合おうとしたその瞬間、レノアの声が聞こえてきた。
「アスラン、お父さんが帰ってきたわ。おりてきて」
二人は顔を見合わせ、くすっと笑い手を握ってリビングへ向かった。
(2004.7.19)
あとがき
いちおう仲直りです。また長くなってしまいました。
この話を次の早慶戦の頭に入れようと当初思っていたのですが、やっぱりやめました。
アスランは受験勉強しかやっていないのでどうしてもカガリの話が多くなってしまいました。