鏡を見た。

今日でこの制服を着るのも最後だ。

カガリはくるりとまわり全身をみた。

高校に入学が決まって初めてこれを来た時に比べると、体の線が随分まるく・・・女らしくなったような気がした。

「よし!」

気合をいれ部屋を出て、リビングへと向かった。

「天気がよくてよかったわね。」

階段を下りてきたカガリに母親が言った。

「おはよう。」

後ろからキラの声が聞こえた。

「キラ?」

カガリは驚いて珍しいものを見るようにキラを見つめた。

「ひどいな。さすがに僕も今日は起きるよ。」

「あら、珍しいものをみたわ。」

二人をリビングで迎えた母親も、キラの姿をみてポロリと零した。

キラは困ったように頭を掻き、カガリはそら見ろ、と彼の方を見て笑った。

そんな二人の様子を見て母親がポツリと言った。

 

「もう学生服のあなた達を見るのはこれで最後ね。」

二人は顔を見合わせた。

来月からそれぞれ違う学校に行く。

「写真をとる?」

母親の言葉に二人は頷き、ソファに並んで座った。

1枚写真をとったところで、玄関のベルが鳴った。

アスランだ、きっと。そう思ったカガリが立ち上がって玄関の方に駆け出した。

キラや母親はその様子を見て笑った。

これはいつになってもかわらないだろう。

キラはそう思った。

小さい頃は二人で玄関に駆けて行ったものだ。

ただ、あの頃からカガリの方が先だったような気がした。

 玄関に出てきたカガリを見て制服姿の彼女の姿を見るのは今日で最後だとアスランも思い、寂しくなった。

そういえば、高校の入学式もこうやって迎えに来た事を思い出した。

そして、その時も同じように玄関で迎えてくれたのは彼女だった。

「時間はまだあるよな。写真を撮っていたんだ、お前も一緒に写ろう。」

カガリはそう言って彼の手を引っ張ってリビングへと向かった。

 アスランはリビングで、ソファに座っているキラを見つけ驚きの声を出した。

「お前・・・起きていたのか?」

アスランの第一声に、キラは心外そうに答えた。

「アスランもカガリと同じことを言うの・・・まいったな。いくら僕でも卒業式くらいちゃんと起きるさ。」

「けれど、入学式は違っただろう。」

「嫌だな・・・そんな昔のこと覚えているの?」

さすがにキラも思い出したようだ。

高校の入学式の時、彼は前日夜遅くまでゲームをしていたため、アスランが来た時にはまだ眠っていたのだ。

彼はカガリから叩き起こされ、そして3人は学校にぎりぎりに到着した。

「さすがに今日は本当に最後だから・・・。」

しばらく黙っていたキラがポツリと言った。

その視線の向こうに珈琲を運んできているカガリがいた。

「そうだな。」

ずっと3人は一緒だった。

ランドセルを背負って小学校の入学式に行ったのがついこの間のような気がした。

これからは、それぞれの道を進むのだ。

「アスランはなんだかんだといってこれからもきっとカガリの側にいるよな。でも僕は・・・。」

兄妹なんてつまんないな、とキラはアスランの顔を見て思った。

「アスラン君って、この間の試験の発表はまだなのね。」

カガリの後ろからついてきた、彼女の母親が尋ねた。

「はい。」

「でも、浪人はしなくていいのよね。この間レノアからK大やW大は合格したって聞いたのだけど。」

「ああ・・・まあそうですけど。」

「でも、本命はT大だよな。」

カガリの言葉にアスランが照れくさそうに頷いた。

「前期で合格したら、後期試験は受けないつもりだろう。」

カガリが確認するようにアスランへ尋ねた。

「ああ。」

「発表まで落着かないわね。」

カガリの母親の言葉に、アスランは曖昧に笑った。

「そうそう、3人の写真を撮らないとね。」

そう言って、カガリの母親は、写真を撮り始めた。

入学式や卒業式のイベントでこうやって写真を彼女はよく撮っていた。

が、以前と違ったのは、アスランとカガリの組み合わせの写真が増えたことだった。

 学校に行く時間が近づいた。3人で登校するのはこれで最後だ。

「いってきます!」

カガリが母親に声をかけてにっこりと笑って玄関から出て行った。

その隣でアスランが会釈していた。

「いってらっしゃい!」

母親の声に、二人より一足先に門のところにいたキラが振り返り手を振った。

彼らはいろいろ話しながら学校へと向かった。

「入学式までには免許を取らないとなあ。」

カガリの言葉にアスランも頷いた。

キラはもうすぐ自動車学校が終わりそうだ。

彼は引越しする前には終わらせないと、と積極的に通っていたのだ。

「なあ、アスランの試験が終わったら4人で出かけないか?」

カガリが二人に提案した。

キラが名案とばかりに続けた。

「いいね。アスランの家の別荘に泊めてもらってスキーなんかどう?」

「ああ・・・いいけど。でもラクスは大丈夫か?」

アスランは、昔から変らない二人の様子に軽くめまいを覚えながら答えた。

校門の近くにいるラクスに気がついたキラは手をあげて駆け出した。

「じゃあ、またあとで。カガリ、アスラン。」

その様子を見て二人は顔を見合わせてクスリと笑った。

やっと二人きりだ。アスランが頬を赤くしながら尋ねた。

「車の免許がとれたら、二人でどこか出かけないか?」

その時には合格発表も終わっているだろう。

「うん。私にも運転させろよ。」

カガリが大きく頷き答えた。

「えっ・・・。」

アスランは思わず、渋い顔をした。

「なんだ、その顔。・・・だめなのか?」

カガリが大きく頬を膨らませた。

その様子を見てアスランはクスクスと笑い出した。

男としては自分だけで運転したいのだが。

「わかったよ、ちょっとだけな。」

「ちょっとだけ・・・?」

まだ彼女は不満そうだった。

「カガリ!」

そこへ、彼女を呼ぶ声が聞こえた。

彼女が靴箱の方を見るとそこにはミリアリアがいた。

カガリは手を振りながら答えた。

「ミリアリア!」

そしてアスランの方を向いて、にっこりと笑った。

「じゃあ、行くね。帰りはここで待ち合わせような。」

そう言って、カガリは駆け出そうとしたが、腕を引っ張られた。

「アスラン?」

「カガリ・・・。これからもよろしく。」

赤い顔をしたアスランがいた。

「当たり前だろう!」

「じゃあ、またあとで。一緒に帰ろうな・・・待っているから。」

「わかった!」

二人はそれぞれのクラスの友人達のところへと足を向けた。

 

 3月の下旬、免許を取ったアスランとカガリは、彼の車で、近場だったが、アスランの家の別荘へ出かけた。

合格祝いに両親が買ってくれたという彼の言葉に、彼女は目をまるくした。

 

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(2006.8.11)

 

あとがき

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

ようやく最終回となりました。

完結するまで2年と3ヶ月もかかってしまいました。

このお話はおわりますが・・・アスランとカガリはこれがまた新しいスタートになるのかなと思っています。

また追記するかもしれません。

 

 

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