「どうして今日は図書館で勉強するんだ?」

「えっ?!だって俺達受験生だせ」

 

私たちって受験生?

 

ここは図書館の自習室。アスランとカガリは並んで座っている。

アスランは受験生らしく赤本を開き問題を解いていた。もちろん赤本はあの最高学府T大だ。

カガリといえば、図書館の書棚から持ち出したSF小説を読んでいた。

が、少しあきてきたようでアスランにちいさな声で話しかけてきた。

「勉強だったら家ですればいいじゃないか?」

「ああ・・まあ確かに・・そうだが」

とアスラン答えながら少し赤くなっていた。(こいつ昨日のことはすっかり忘れているのか?)

そう確かに昨日は自宅で勉強しようとしていたのだ。

 

体育祭も終わり、そろそろ受験勉強に本腰を入れなければと思ったアスランは『一緒に勉強をしよう』と昨日カガリを家に誘った。

昨年の体育祭の後に幼馴染から恋人へと進展した二人はそれからほとんど毎日学校の帰りに一緒に時間を過ごしていた。

受験勉強に本腰を入れたいと思いつつも、カガリとは放課後しばらく一緒にいたいアスランはその妥協策として

カガリと一緒に勉強することを決めて彼女を誘ったのだ。

ところが、

『うん・・いいよ』といってアスランの家にきたもののカガリは勉強をする気はないらしく、

『アスランの勉強が終るまで待っているから』といって彼のベットの上で横になりゴロゴロとしながら雑誌をよみはじめたのだった。

あの夏の一夜以降何度か彼女と肌を重ねた彼は、そんな様子の彼女を背に勉強に集中できるわけもなく

思わずカガリの上に覆いかぶさり、いつものように熱い時間を過ごしてしまったのだ。

そして彼が受験勉強をスタートしたのはカガリを送って家で遅い夕食をとったあととなり、

毎日家に誘って勉強するのはまずい・・・・と反省した彼は今日は図書館にやってきたのだ。

 

「お前は余裕だな。勉強しなくていいのか?俺ら高3だぜ。大学受験があるだろう。」

アスランは小さな声でカガリにきいた。するとカガリが「えっ」という顔をしてアスランをみつめた。

(なんでそんな風に驚くんだ)

「大学か・・」

カガリは一人つぶやいたあと、アスランの方に顔をむけて言葉を続けた。

「なあ、大学行って何するんだ?」

今度はアスランが『えっ』という顔をする番だった。驚きのあまり言葉が出てこなかった。

「そうか、アスランは大好きな機械いじりをやりたくて行くんだよな。」

「ああ、まあそうだけど・・」

アスランは昨日から疑問に思っていた言葉をカガリに告げる。

「カガリは大学にいかないつもりなの?」

 

カガリもそれほど成績が悪いわけではない、が、(キラほど酷くないが)少しムラがある。

キラと同じように好きなことしか基本的にはやりたくないのだ。

とはいえ、県下でもNO1の進学校に通っているわけだし、当然彼女も自分と同じように大学に行くものだとアスランは思っていたのだ。

 

「うーん。わからないんだ」

といって、カガリは机に突っ伏した。

「私はお前のように大学に行ってやりたいことがみつからないんだ」

「そうか?だって、英語とか歴史とか好きじゃなかったけ?」

「それはそうだが・・それをやりたいかというと、ちょっと違うし。それに・・・」(お前とは一緒の大学にはいけないし)

カガリが少し口篭もった。

「それに?」

「ううん。なんでもない」

そういってカガリはアスランから視線をそらすように顔をふせた。

これ以上聞いても話は進展しないと悟ったアスランは話を変えることにした。

「ねえ、カガリ。今日学校で宿題とかでてないの?それをちょっとやらない?」

「あっ!数学で宿題がでてたんだ。教科書いれてるかな・・・あっ、あった。」

カガリがはっと身体をおこし、バックの中を覗き始めてつぶやいた。

そんなカガリの様子が微笑ましかったアスランは彼女の頭をトントンと優しくたたきながら言った

「じゃあそれをやれば?わかんないところがあったら教えるからさ。ここは7時までだからあと1時間くらいがんばろうよ」

カガリが照れくさそうにアスランの顔を見上げてうなずいた。

 

続く

(2004.5.22)

 

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