南国オーブも9月になると、日差しが随分和らいでくる。
アスハ家の庭で幼い2人の子供が遊んでいた。
父アスランと同じ、濃紺の髪、碧の瞳を持つヴィア。
母カガリと同じ、金髪の髪、琥珀の瞳を持つニコル。
二人は今年4歳になった。
「ニコル様、ヴィア様、お昼ですよ。」
乳母の言葉に、2人は顔を上げ、はい、と答えた後、自分達の部屋へと駆けだした。
−昼食の時に、カレンダーを持っておいで。
今日の朝、仕事に出かけるカガリから言われたからだ。
部屋に入った彼らは左右にわかれ、小さな机の前の椅子をかかえた。
それから、机の隣の本棚の前にそれを置いた。
「よいしょ。」
本棚の少し上に掛かっているカレンダーを見上げたあと、
ニコルは椅子の上に立ち上がり両手を伸ばした。
部屋の反対側では、ヴィアが同じように椅子の上にのり
左手を本棚の上に置き自分の体を支えながら、右手をカレンダーの方へ伸ばした。
カレンダーはほんの少し高い位置にあるのか、2人とも椅子の上ではつま先立ちをしていた。
2人の乳母であるマーナやメイドたちがはらはらとしながらその様子を見つめていた。
先月から、自分でやると二人とも言い張ったので、手を出さす事を彼等の母親から止められたのだ。
「やった。」
両手でカレンダーを掴み、金具から外したニコルは思わず声に出した。
が、ぐらりとバランスを崩した。
あっ、とマーナが駆け寄ろうとしたが、彼女は足を止めた。
彼はひょいと床の上に飛び降りた。
コロンと椅子が後ろに倒れた。
乳母はホッとしながらホッとした。
が、それをおくびにも出さずに注意した。
「ニコル様。」
あっ、と彼は乳母の方を見た後、カレンダーを床に置き、
いそいそと倒れた椅子を抱え、元の場所へと戻した。
まったく誰に似たものやら・・・と心の中で思いながらマーナは反対側のヴィアに視線を移した。
彼女は手に取ったカレンダーを本棚の上に置き、
ニコルと同じように椅子を抱え元の場所へ戻している最中だった。
椅子の倒れる音がなかったことにマーナは気がつき、もう一度苦笑いをした。
アスラン似のヴィアの様子は、ニコルの母親似をさらに感じさせるのだった。
彼等が食堂に着いたとき、マーナは2人に尋ねた。
「お母様はちょっと遅れるそうです。先に食べられますか?」
ニコルとヴィアは顔を見合わせた。
お腹はすいている。
けれど、母親と一緒に食事をとりたかった。
どちらともなくニコリと笑った後、声を揃えて答えた。
「待っている。」
それから、仲良くソファに並んで座り、持っていたカレンダーを広げた。
そこには赤や金色の丸いマークが日付に書かれていた。