@「保養からみた快適性ならびに安全性に関する気象因子の時間衛生学的検討」

   鏡森定信ら、日温気物医誌 66(4):205-213, 2003


  @)
脳卒中の発生危険度について
 
    1991年から1998年までの、富山県における初発脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)

   患者をまとめたものです。脳卒中の発生頻度と月別平均気温との関係に注目すると、
一番

   平均気温の高い8月には脳卒中は少なく、逆に、、一番平均気温の低い2月には脳卒中は

   最も多い
という結果でした。また、病気を発症する前の気温変化と各疾患の発生頻度との

   関係については、
脳出血とくも膜下出血の場合は、発症1〜2日前の気温の低下が、相対

   湿度や気圧などの他の因子よりも、
発生危険度を高めていました

  A)
早朝高血圧について

    早朝、血圧があがるという現象は、しばしば経験されますが、まれに脳出血やくも膜下出

   血を引き起こす原因となります。今回の研究では、起床後に、室温10℃と25℃の状態で血

   圧を測定したところ、やはり
室温10℃の時のほうが、収縮期血圧(いわゆる上の血圧)

   有意に高かった
そうです。拡張期血圧(いわゆる下の血圧)も同様の傾向がみられ、室温

   が低いと早朝時血圧が上昇しやすいという、予想通りの結果でした。
 
 
◎脳卒中予防のポイント(私の意見)

    ここで、
われわれが脳卒中予防として気をつけなければならないのは、冬場の早朝にふ

   とん(またはベッド)から出るときには、すぐに暖かいジャンバーなどを着て、まず部屋を暖め

   ること
が大事だ、ということでしょう。人は、朝に活動が活発化してくるにつれて、血圧が上

   がってくることが知られています。その上、寒い冬の朝には、室温の低下のためにさらに血

   圧が上がってしまいます。ですから、体を外気に触れずに冷やさないようにして、なるべく早

   く部屋を暖めたほうがよいのです。ぜひともみなさんは、パジャマのまま寒い室内をウロウロ

   するのは、今年の冬からはできるだけ避けるようにしましょう。(2004.5.10)


 A「入院患者を対象とした脳卒中罹患と気象要素との関連」

   徐 軍ら、日生気誌 40(s):261-271, 2004


  @)
脳卒中の季節変動について
 
    1997年1月から2002年12月までの、脳卒中入院患者(脳梗塞、脳内出血)の調査です。

   この研究では、くも膜下出血は数が少なかったので省いたようです。全部で1020例のうち、


   
脳内出血が119例、脳梗塞が901例と、圧倒的に脳梗塞が多かったようです。

    
脳卒中の発症は明瞭な季節変動があり、1月に最大、7月にやや小さいピークを示しました

   が、
脳内出血の発症には季節の変動が見られなかったということです。

  A)
前日との気温較差(低くなる場合)について

    前日との気温較差が大きいと、やはり
脳梗塞の発症が多い傾向があり、しかも、高齢者や

   脳梗塞の既往歴がある
人は、そうでない人に比べて、明らかにその傾向が著明だったよう

   です。さらに、
高血圧の既往がある人も、前日との気温較差が大きい日には、脳梗塞を発症

   しやすかった
そうです。


  
◎私の意見

    今回の論文では、脳梗塞には明瞭な季節変動が見られ、1月に最も多かったそうです。

   これまでの報告では、季節の変わり目に多い、11〜3月に多いとされていましたが、今回の

   報告は、後者に合致します。このように、調査によって多少発症する月がずれてしまうのは、

   1)調査の年度によって気温差がある、2)調査する地域による違い、などが原因として考え

   られます。

    しかし、
これまでの報告と共通しているのは、前日との気温較差が大きいときには、脳梗塞

   の発症が多い
、ということです。理由は、みなさん、おわかりですよね!?そう、前日よりも急

   激に気温が下がってしまうと、血管が収縮し、血液が濃縮されドロドロになってしまうからです。

   血液がドロドロしてしまうと、当然血液循環が悪くなり、脳梗塞を起こしやすくなってしまいます。

    このようなときに、
脳梗塞を予防するためには、

   
1)水を充分に飲むこと

   
2)バランスのよい食事をとること

   の2点が最も重要です。たまねぎ、ラッキョウや納豆をたべたり、赤ワイン(ポリフェノール)を飲

   むと血液がサラサラすることが知られていますが、確実に血液サラサラ効果を得るためには、

   これらを大量に摂取しないとだめなので、実際には難しいとされています。それよりも、最も重要

   なのは、バランスのよい食事(すなわち、肉類、魚介類、野菜、米をバランスよく15品目以上食

   べること)をとることで、そうすることによって抗酸化作用を効率よく発揮させ、血液をドロドロに

   させないのです。

    動脈硬化を予防するために、きのこ類、豆類(大豆、えんどう豆、グリーンピースなど)、海草、

   野菜を毎日摂取することが、極めて有効だといわれています。このような食生活を普段から心

   がけ、とくに、気温差が激しい季節には注意していれば、必ずや、血液ドロドロを予防でき、脳

   梗塞の発症を予防できるのではないか、と考えています。高血圧の持病がある方や高齢者の

   方は、とくに注意しましょう。

    
脳梗塞の予防法については、「メニュー」の「気候と脳卒中」のページを、今一度ご覧ください。

                                                    (2004.6.27)
                                                

 

脳梗塞

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