脳卒中発症と気温等との関係についての論文
                                                       2007. 5.25

「秋田県北秋田群鷹巣町における脳卒中発症と気温および時間的要素との関係について」

久保達彦、朝日茂樹、木田和幸、三田禮造

秋田県農村医会誌 50(2): 8-14, 2005





1) 概要

 秋田県のある病院に脳卒中で入院となった患者281例を対象として、各発症日と、最高気温、最低

気温、平均気温、日較差を調査し、脳卒中の発症との関連性を分析したものです。その結果、
12月

から3月にかけて、朝、
最低気温あるいは平均気温が0℃以下のときに、発症数が増加


する傾向があったそうです。


2) 私のコメント

 この論文は、秋田県の鷹巣町という、ある特定の地域における脳卒中の発症について、3年間調査

した結果をまとめたものです。おそらく、その地域で脳卒中を発症した人は、1つの決まった病院へと

搬送されるという前提があるものと思われます。

 この点、人口密集地域では、複数の病院がわりと近くにありますから、1つの決まった病院に搬送と

いうわけにはいきません。この研究は、都心では困難なものであり、貴重な研究といえるでしょう。

 
 脳卒中は、@冬、A朝、B最低気温あるいは平均気温が0℃以下のときに、発症しやすいということ

が、この論文でも示唆されました。これは、これまでご紹介してきた論文(鏡森定信ら、日温気物医誌

66(4):205-213, 2003など)と結論がほぼ一致しています。とくに、
「最低気温あるいは平均気温が

0℃以下のとき」
というのは、具体的な数値が示されており、非常に興味深いと思います。


 具体的な脳卒中の予防策はどうでしょうか。

 この論文では、秋田県よりも寒い北海道での脳卒中死亡数が比較的少ないことから、住宅の耐寒

構造や室内暖房、戸外での防寒衣の機能や普及などについて工夫することが重要ではないかと考察

しています。

 実際、室内外の温度差は血圧の変動を増大させます。また、風呂場の脱衣所などで、脳卒中や

心疾患の発症が比較的多いことも、温度差による血圧変動のためではないかと考えられています。

 また、もともと高血圧の人は、その血圧変動がより激しくなることが知られていますから、通常の人

よりも、もっと注意深く血圧変動に気をつける必要があります。すなわち、マフラーや靴下などをこま

めに使用する習慣をつけたほうがよいでしょう。


 この論文は、「朝」に脳梗塞や脳出血が多く発生したことについて、朝方に血小板凝集能が亢進する

こと(つまり、血液がドロドロすること)、カテコラミンが増加することによって血圧が上がりやすいことなど

が関与していると考察しています。このことは、本ウェブページ「脳梗塞」のコーナーでも詳しく説明して

いますので、よろしければご覧ください
(下をクリック!)。血液ドロドロを改善するには、やはり

「水」
を十分に摂取することが重要です。

 早朝にはモーニングサージ現象という血圧の急上昇が起こりやすいので、とくに寒い朝には、防寒具

を積極的に使用して、血圧上昇を予防しなければなりません。






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