2008年 5月の映画・演劇 評論

  ルドルフ (ミュージカル 帝国劇場)

あらすじ: 時は1880年代の後半。オーストリアとハンガリーを治めるハプスブルグ家の皇太子ルドルフ(井上芳雄)は、父である皇帝(壌晴彦)とは違った民主的な考えを持っていたため、度々皇帝と言い争っていた。また、妻ステファニー(知念里奈)との仲も冷えていた。そんな折、男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ(笹本玲奈)との出会は、ルドルフの満たされない心を癒してくれていた。マリーも妻子がある皇太子が相手では叶わぬ恋とは知りながら、ルドルフとの逢瀬を重ねていった。民主化が進む動乱のヨーロッパで権力闘争がルドルフを巻き込んでしまう。二人の愛は。。。

暗くてメリハリがなさ過ぎる舞台は、眠くなる!
 演出は、宮本亜門ってことで、期待度も高く観に行ったが、完全に裏切られてしまった。

 まず、話の前に舞台の照明が全部暗すぎる。
私の席は、帝国劇場でも、少しばかり後ろになる1階S列であったが、ここは、¥12,500−のS席との堺で、¥8,000−です。
何度かこの帝国劇場にも足を運んでいるので、双眼鏡をオペラ・グラスとして持参しているが、使用するのは、出演者の細かなしぐさや小物を確認するぐらいで通常は出演者はこの席でも認識できるが、今日は、余りにも暗くて、誰が誰だか分からず、双眼鏡を多用することとなった。
これは、芝居の前の演出の基本条件として失敗である。

 次に、衣裳が似ている。
これも、同系色の衣裳を主役と脇役たちが着ているために、舞台の暗さとあいまって、誰が登場したのか区別ができない。
現実の世界ではない、舞台をみせているのだから、歌舞伎の衣裳を着せろとまでは言わないが、主役と脇役を振り分けることを配慮した着物は必要だ。

 では、話を主題に戻そう。
メインとしているのは、妻子ある皇太子という大人の浮気が本気になってしまい取り返しができなくなったことである。
本来ならば、適当にあしらう積りで若い娘と付き合ったが、時の流れから、止む無く別の方向に行き、面倒だから自殺を選んだ。
そこでの、皇太子としての苦悩、妻や皇帝との軋轢が表現されるべき姿であったが、それが、この描き方では、若い男女の単純な恋愛物となってしまった。

 悩みも芯まで達せず、争いも奥深くない。
度々歌い上げられる「愛」という言葉が、口に上れば登るほど、薄っぺらく感じられる歌唱力のなさ。
まだ、若い井上芳雄の声量では、胸に沁みてこない。
そして、笹本玲奈には、街の娘役なら充分演じられても、貴族の令嬢役は早かったってことになるのか。

 踊りも熱気溢れるってわけでもなく、舞台を盛り上げる筈の宮廷の舞踏会もあるが、優雅さもなく舞台装置も含めて他の場面と同様になり盛り上がらない。
広い空間をもつ天井部分の処理がないために、登場人物をなお小さく見せている。

  取り上げたテーマを貫くなら、キャストの選択ミスだし、若い二人をメインにしたければ、テーマを変えた内容にしなければ、面白くない。

東宝が売り出しに期待している井上芳雄の、「ウエディング・シンガー」「モーツァルト」

笹本玲奈なら、「ベガーズ・オペラ」、 「ミー&マイガール」

 

  最高の人生の見つけ方

あらすじ: 色々な事業を展開している大富豪のエドワード・コール(ジャック・ニコルソン)は、今までの荒れたプレイボーイの生活がたたり、自分が経営する病院の二人部屋に入院することになった。その病室には、エドワードとは対象的につつましく妻や子供たちのために誠実な人生を送ってきた自動車工の黒人カーター・チェンバーズ(モーガン・フリーマン)が既に伏せていた。人種差別感もあるエドワードであったが、同じように病気と闘い、会話を交わすうちにカーターの人柄を認めるようになってきた。しかし、二人には余命6ヵ月という厳しい現実が待っていた。カーターが書いた「やりたい事リスト」を覗き見したエドワードは、カーターを病院から引っ張り出してスカイ・ダイビング、エベレスト登山、キャビヤを腹一杯たべるなど「やりたい事」を、金にまかせて実現させていった。そして、二人の人生は。。。

人生は金でないことは、分かっている!
 実年齢でも、もう余命いくばくもない?(失礼) ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが物語の設定をそのままに素直に演じている。
二人の掛け合いは息もあっている。

 だけど、話は退屈だ。
白人と黒人、大富豪と貧乏人、家族をないがしろにした遊び人と家庭を愛する真面目な男。
二人は、当初は反目するがそのうち意気投合する。
それに、あと何日生きられるかの宣告を受けたとき人間は何をするか。

今までも小説や映画で使われてきた、よくあるパターンである。

 よくある設定なら、各所に意外性がないと観客は先が見えてしまう。
高齢者のスカイ・ダイビングやエベレスト登山では、意外性ではなく、ソリャー病人でなくても、普通に健康な人でも体に悪いって心配の方が先にたつ。
病身を考えると無理な作りだ。
実際この場面は、合成されているのが見え見えだ。(75歳でエベレスト登山をする三浦雄一郎さんは極端な例外です。)

金にあかして夢を実現しても、何か物足りず、最後にはまた娘との和解をもってくるのも、よくある話。
もう、過去にも何度も何度も描かれた内容です。

チラシで言うほどに「心温まらず」、やりたいことを実現しているところでアクビがでて、娘との抱擁でもアクビがでる、二度アクビの映画でした。

ジャック・ニコルソンなら、「ディパーテッド」「恋愛適齢期」

モーガン・フリーマンなら、「ミリオンダラー・ベイビー」

 

  チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

あらすじ: 1980年代のアメリカ。テキサスの田舎から選出された下院議員のチャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)は酒と女とドラッグが好きなだけの国会議員であったが、ある日アフガニスタンの窮状をテレビで見て目覚める。ソ連の侵攻を阻止するために、CIAの中東担当のガスト(フィリップ・シーモア・ホフマン)を使い現地での作戦を行い、自分は国会を動き回り、アフガン対策を行う。アフガンの予算を500万ドルから10億ドルへと大幅に増やすことに成功し、偽装した武器支援がなされ、ソ連はアフガンから撤退する。しかし、表に出なかったアメリカ政府の作戦は、反アメリカの感情をアフガンに残した。。。

個人的な政治主張が多く、コメディ部分だけが印象に残る!
 予告編を観ていたら、美女たちとお風呂に混浴している場面や、ジュリア・ロバーツとの場面だけで、こんな複雑な内容とは思っていなかった。

 製作にも主演のトム・ハンクスが絡んでいる。
これが、話をダメにした原因のようだ。

 俳優は、演技だけに徹した方がいい。
政治にあまり興味がなかった議員が突然改心し、その後年をアメリカ国家とアフガニスタンの反ソ連の運動に貢献した落差を何とか表現したかったようだけど、演技と製作の内容が結びつかない。

 才色兼備の美人秘書軍を駆使している場面は、かなり生き生きとして、コメディ・タッチとしても面白い。
CIAでの変わり者として、またどうみても切れ者でないガストの雰囲気は笑いを誘う。
しかし、テキサスの支援者でお金持ちの設定でジュリア・ロバーツも登場させるが、これは宗教も絡めて歯切れの悪い描き方だ。
全然、ジュリア・ロバーツが演技できていない。
これなら、普通のオバサンを使っても話に影響がなかった。

 複雑な中東情勢を製作者としてのトム・ハンクスは扱いきれない。( この中東は、他の人でも、米ソの対立、宗教の対立、地理、民族の紛争などが複雑に絡んで扱い難い問題ではあるが。)
現地に足繁く赴き、情報収集に力をいれ、国会でも奮闘している場面はあるが、ここらが簡単に描かれていて、印象が薄い。

 ダメな議員としての笑いが勝った映画だった。

トム・ハンクスなら、「ダ・ヴィンチ・コード」「ターミナル」

フィリップ・シーモア・ホフマンを有名にした、「カポーティ」「M:i:V」

 

  隠し砦の三悪人

あらすじ: 戦国時代の動乱が続くある地方で互いに接する3つの国があった。海に面した豊かな大国で平和を望む「早川」。その早川と同盟を結んでいる小国だが金に恵まれた「秋月」。領土拡大に燃える山間の気性の荒い「山名」。山名は、まず秋月を攻略し、その豊かな金をもとに、早川も征服する計画を立て、圧倒的な軍勢で秋月城を落としたが、そこには目当ての金もなく、また世継ぎの「雪姫」の姿もなかった。男に扮した雪姫(長澤まさみ)は警護の真壁六郎太(阿部寛)と欲につられて仲間になった金堀りの武蔵(たけぞう)(松本潤)と木こりの新八(宮川大輔)を連れて、薪に隠した金と共に敵地である山名の領地から早川に逃れるつもりだ。しかし、山名の侍大将:鷹山刑部(たかやまぎょうぶ)(椎名桔平)は、その計画を見破り、執拗に追って来る。ついに、鷹山に捕まった雪姫と真壁を武蔵は助けられるのか。。。

オリジナルを変えるなら、創りだす楽しみも見せてくれ!
 もう、いうまでもなく、黒澤明監督・三船敏郎主演で超有名、かつ名作活劇のあの「隠し砦の三悪人」のリメイクとうたっている。

しかし、リメイクというには、かなり疑問がある。
それは、オリジナルの「隠し砦の三悪人」がもっている、これからどうなるというワクワクさせる期待感や欲に走る人間の弱さなどが全然ないからだ。

確かに、薪の中に隠された金の棒や、男に扮する雪姫そして警護の真壁六郎太の設定は、オリジナルと同じであるが、欲に駆られる武蔵と新八の人物設定を原作よりも若くしたために、内容が貧弱になった。

人生経験の少ない若者を物語の中心にすえために、原作に描かれた、したたかに、かつ貪欲に生きる貧民が表現できず、姫と武蔵の恋愛に置き換えたのは止むを得ない選択であったとは思うが、それならもう徹底して身分差を越えた愛情映画にしてくれた方がいい。

しかし、新しい脚本家:中島かずき:が原作にない場面を大幅に取り入れることを遠慮したのか、また時代劇での中途半端な階級制度の知識が邪魔をしたのかしれないが、愛情の交換の描き方が不十分だ。

面白さは、別にお金をかけなくても創れることを、もう一度原作の「隠し砦の三悪人」は教えてくれる。
折角凝った作りの、だけどどうしてこんな辺鄙な山奥に大砲やエレベーターみたいなものがあるのか唐突で不思議な話だったがそれはおいといても、砦も活かし方が悪い。
ガスも絶対出てくるとは想像通りだが、ここは、ガスが出るまで、もうひと捻りしなければだめだ。
エレベーターみたいな物は、ただ一直線に落ちるだけとは、これも能がない。
新八が飛び回るのではないかと期待させる、縄のシーンは、もっとあってしかるべきだ。

凄さは、時々息抜きがなければ強調されない。
そう、原作で演じられた千秋実と藤原釜足の間の抜けたようなかけあいと三船との関係がもたらす緊迫感も勉強して欲しい。

オリジナルの「隠し砦の三悪人」が持つ、ワクワク感は、なんといっても、窮地に陥った時の解決策として、次に何が飛び出すのか、どうなるのか、それに対する期待感だった。
新作では、この答えが全然ないのも不満だ。
例えば、要塞を壊す大爆発があっても、次の場面ではチャンと2頭の馬を引いて無傷の六郎太が現われては、ガッカリだよ。
脱出までの過程はどうなったのか、これを、創り出し、観客に見せるシナリオが必要である。
観ている人が楽しみとするのは、この点なのだから。

また、同性愛の関所の役人では、品がなさ過ぎた。

長澤まさみや松本潤など俳優達は、もう論外の存在だった。

これも、黒澤作品のひどいリメイクだった、「椿三十郎」

阿部寛と椎名桔平はコンビ?の、「魍魎の匣」

成長しない長澤まさみの、「涙そうそう」

 

  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

あらすじ: 20世紀始めのアメリカはカリフォルニア近郊で、正に一獲千金を狙って金鉱脈を寂しく掘っていたダニエル・プレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、僅かなお金と息子のH・Wをつれて、今度は油田採掘に乗り出した。荒野に石油が染み出しているという、偶然もたらされた情報をもとに、地元の人を騙して土地を安く手に入れ、掘ると幸いにも、豊富な埋蔵量の油田だった。ダニエルの石油事業は拡大するが、現地で尊敬されている神父イーライ(ポール・ダノ)の芝居がかった宣教活動とは、反目し合っていた。油田やぐらの事故で、聴覚を失った息子のH・Wとの溝も深くなり、信頼できる義弟と思っていた男にも騙され、富を得たダニエルであったが、孤独な人生が続く。。。

女:チラシで言っている「欲望」や「黒い血」とは、印象が違うわね!
男:この作品で、ダニエル・デイ=ルイスが今年のアカデミー賞主演男優賞をとったんだね。
女:そうね、ダニエル・デイ=ルイスの落ち着いた演技と発声は、この映画の見所ではあるわね。
男:いい演技だったね。誰も信じられないという迫力。捨て子までも利用する凄まじさや、反宗教の意気込みは、上手く観ている人にも伝わってくるね。
女:でも、それは成功したい人が持っている「当然の感情」じゃないの。
  普通のことをしている人は、富への執着も薄く、他の人と同じように不平だけをいって、一生を終わるわけでしょう。
  成功の影にある、他の人よりムチャクチャに働いた苦労をチラシのように「欲望」に置換えられては、この映画のいいたいことが充分に伝わらないのよ。

男:そこが、この映画を観ていても、次に何かあるのか、次はどうなるのかと思わせていても、観終わると、何にもなしって気持ちになるってことなんだね。
女:演技はいいけど、ストーリーがもう一つってできね。
  アメリカのゴールド・ラッシュやオイル・ラッシュのときの、へき地の開拓者がおくっていた酷かった生活と、その貧しい人々を支えた宗教の役割も、知らない日本人にはピンとこないのね。

男:時代背景がもっと分かると、感動の作品になっていたか。
  日本人には、宗教的な部分は特に説明が欲しいってことだね。
  どうして、ダニエルがここまで反宗教になったのか。
  宗教は貧しさと無知の人々を中心に広がって行くことに反感を持っていた「意志の強い男」の物語とすると、話の筋も面白くなったのかな。
女:上映時間が、158分と長いけど、本当に監督:ポール・トーマス・アンダーソンのいいたかったのは、最後の15分ほどのイーライとダニエルの言い争いでしょ。
  神父が口では、さ迷える小羊を救うためと言っても、そこには、教会を大きくしたいっていう、結局はダニエルがお金儲けをしたいっていうことと違いのない欺瞞の追及でしょ。

男:目的が違っても、お金が欲しいってことでは、同じにはなるね。
女:神父もそれを素直に認めればいいのに、変な理屈をこねるやり方に監督は怒っているのね。
  それと、もう一つ怒っているのよ。

男:約束した金を、ダニエルが払わないってことかい。
  大富豪となっているダニエルにとっては、もう大した金額ではないけど、宗教家には払いたくないんだね。
女:それは、よくない考えよ。
  約束したことを守るのが、大人としての義務でしょう。
  そこで、思い出したけど、貴方も、結婚するときに、私に大きなダイヤを買ってくれるって約束したでしょう。
  あれは、どうなったの?

男:そんなのあったけ。それは、もう昔の話で...時効でしょ。
女:夫婦の約束に時効はないの。
  明日、買いに行きましょう。

男:変な映画のせいで、こんなことに...
女:何か言った?
男:いや、別に...

ダニエル・デイ・ルイスが出ていた;「ギャング・オブ・ニューヨーク」

 


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