2008年 3月の映画・演劇 評論

  マイ・ブルーベリー・ナイツ

あらすじ: ニューヨークの下町にある小さなカフェ。恋人に振られたエリザベス(ノラ・ジョーンズ)は、そこで食べたブルーベリー・パイのほろ苦さと、親身に話を聞いてくれるマスターのジェレミー(ジュード・ロー)の人柄に魅かれお店へ通うようになった。しかし、いつまでも忘れられない彼の思い出を絶つために、エリザベスは旅にでた。メンフィスでは、アルコール中毒の警官の離婚話に巻き込まれ、ラスベガスでは、人を信じないギャンブラー娘(ナタリー・ポートマン)と彼女の父親のトラブルにかかわるはめになる。旅の出来事を手紙にしてジェレミーに送るエリザベスの次の恋は。。。

甘さの味付けと焼き方が足りないブルーベリー・パイだ!
 主演は、歌手のノラ・ジョーンズの初作品。でも、ねっ。
歌の世界と演技の世界は、やっぱり違う。

 彼女のシーンで印象に残るのは、カジノの外でハンバーグを寂しく食べている場面だけだった。
どうしても、ナタリー・ポートマンの方が引き立ってしまう。

 物語の展開も悪い。
あらすじでは、上手く書いたが、実際には、どうして、旅に出るのかがしっかり描かれていない。
唐突に、メンフィスに流れ着き、次の観光地として、強引にラスベガスに移動する印象だ。

 旅の目的が、自動車を買うためというのも、どうも、心に響かない設定だ。

遠距離恋愛を、ロード・ムービー風に仕立て上げたかったようだけど、メンフィスやラスベガスなど、その場所で起きたことに拘ると、話が別々の物となり、ノラ・ジョーンズとジュード・ローの恋が脇役で、どこかに行ってしまった。 

 でも、テーブルの上でのきれいなキスシーンは、話題になるかも。
それと、ノラ・ジョーンズの唇に着いたクリームなら、私もふき取りたいっ!

ジュード・ローなら;「ホリデイ」 「コールドマウンテン」

 

  ノーカントリー

あらすじ: 1980年代のアメリカはメキシコに近い荒涼とした田舎町。ベトナム帰還のルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は狩をしていて麻薬取引の乱闘跡にでくわす。そこには麻薬と多くの死体、そして200万ドルの現金があった。トラブルに巻き込まれるとはわかっていたが、誘惑には勝てず、大金を奪ったロスの逃亡生活が始まる。消えた金を取り返すために組織から、冷酷で任務遂行のためなら誰でも殺すアントン・シガー(ハビエル・バルデム)が送られる。一方、町で祖父の代から保安官をしているエド・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は、余りにも凶悪な犯罪に時代の流れを感じながら、なんとかモスを組織から守ろうと動いていた。各地を転々としても追ってくる殺し屋から、果たしてモスは逃げられるのか...

まったく息をつかせない展開は、観ていて酸欠状態になる!
 ウーン、すごい!
冷酷な殺し屋が、おかっぱの髪形で登場する斬新さ。
そして、小型の高圧ガス・ボンベを持ち運び、これが、人のヒタイを打ち抜く凶器として使われるだけでなく、ドアのシリンダーも吹き飛ばすとは、もう、観ていてワクワクする。
久し振りに、次の場面はどうなるのか、期待で胸が高鳴り待ちきれなく興奮を憶える。
監督・脚本をしているコーエン兄弟による 、うまい展開がなされた映画だった。

 血が多くて暴力的なシーンもかなりあるが、緊迫感を連続させる手法は、さすがにコーエン兄弟の作品と見ごたえがある。

 おかっぱやガス・ボンベなどのユニークなアイデアだけなく、登場人物の設定が充分に練られているのも憎い。

 一匹狼で多くを語らず手段を選ばない殺し屋が持つ、彼なりの殺しの哲学。
これと比較される多弁で金さえ手に入ればいいという、もう一人のけちな殺し屋。
過酷なベトナムで戦ってきた男が持つ逃げきる自信。
そして、どうしても時代について行けない保安官の嘆き。

 みんな、時の流れ、時代の変化がもたらした産物だ。
また、荒れ果てたテキサスの風土が影響しているのかもしれない。

 これの役に、ハビエル・バルデムやジョシュ・ブローリン、そしてトミー・リー・ジョーンズと芸達者な役者陣が、それぞれ、役にはまった演技をし、答えている。

 終わりの方は、省略があって物足りないが、この息をつかせない出来栄えは良かった。

 ハビエル・バルデムが動けない役を好演した、お勧めの;「海を飛ぶ夢」

 

  ダージリン急行

あらすじ: 父親が亡くなってから疎遠になっていたホイットマン家の三兄弟だったが、長男:フランシス(オーウェン・ウィルソン)が交通事故にあい、九死に一生を得たことが縁でインドに集まり、「ダージリン急行」に乗って「失われた自分を取り戻すこと」と兄弟の仲を親密にする旅をすることになった。どうにか集まった三兄弟だったが、何でも指図する長男に対し、神経質な次男:ピーター(エイドリアン・プロディ)や女好きの末っ子のジャック(ジェイソン・シュワルツマン)では、纏まることは難しかった。しかし、宗教心に厚いインドの人々と接し、川で遭難した子供を助けられなかった無念さなどを介し、3人は何かを得ていた。だが、フランシスの本当の目的は、母に会うことだった。母に会ってどうなるのか。。。

とりとめのない、また笑いもない、こま切れの作品だ!
 予告編を観たときは、個性的な三俳優が、何かをやらかしてくれるのかと思っていたが、ギャグもユーモアもない出来だった。

 大体、これではインドを馬鹿にしている。
いくら、のどかなインドでも、急行列車が迷子になるか?
毒蛇を勝手に列車に持ち込むなんてことは、常識はずれの行動のコメディというよりは、奢ったヨーロッパ人の行動としかうつらない。
特にひどいのは、列車のサービス・ガールとの関係だ。
これでは、インドの娘達はみんな余りにも節操がない女性とみれる。

 母親との出会いも、ここは、かなり観客に笑ってもらおうとしたようだが、「シスターのブラザーが虎に襲われた」だけでは、見事に滑った。

 話としての一貫性が無い為に、背景になったインドの印象と共に、内容も薄れていく。

 「心の旅」を描こうとしても、自分の映像化の目標が明確に存在していない監督:ウェス・アンダーソンには、荷が重かったようだ。
観ている途中で、あくびが何度もでた。

*「ダージリン急行」の映画本編の上演前にナタリー・ポートマンが出ている「ホテル・シュヴァリエ」という短編がついています。
 本編に関係はしてますが、あまり、真剣に本編との関係を追及すると疲れます。

唯一、話として纏まっていた、インド人の父親役で出ていたイルファン・カーンの;「その名にちなんで

エイドリアン・プロディなら;「戦場のピアニスト

 

  明日への遺言

あらすじ: :第二次世界大戦が日本の敗北で終わり、戦勝国アメリカを中心に日本人を戦争犯罪人とした裁判が開かれていた昭和23年頃。横浜の法廷では、名古屋地区の無差別爆撃で射ち落とされたアメリカ軍捕虜の処刑が正しい手続きにそったものか、どうかが争われていた。当時の東海(名古屋地区)軍司令官:岡田資(おかだたすく)中将(藤田まこと)や、直接アメリカ軍捕虜を殺した部下の行為の正当性が裁判の審理内容であった。他の戦犯の裁判では、多くの日本人指揮官が責任逃れをするが、岡田中将は部下の全ての行為の責任は自分にあると認めていた。それと同時に、アメリカ軍における多くの民間人を犠牲にした無差別爆撃も戦争犯罪であると糾弾していた。司令官としての立場を主張する岡田に判決が下る。。。

女:現代のあやまってばかりいる、責任者のだらしなさと比較したいの?
男:いや、これは、敗戦後60年以上が経って、多くの日本人が戦争があったことを忘れているので、作ったようだよ。
女:でも、こんなに法廷でのセリフばかりでは、裁判とスガモ刑務所の状況はわかるけど、戦争の悲惨さは、全然伝わってこないわね。
男:そうか。
  戦争の記録フィルムが冒頭の10分ほどでは、反戦や戦争のむごさを訴える力は弱かったか。
女:アメリカ軍捕虜を処刑したのが、殺人かどうかはともかく、無差別爆撃によって犠牲になった多くの民間人や広島や長崎に落とされた原爆の被害があったから、嫌な戦争がどうやら終わったと私は思っているのよ。
男:民間人を巻き込まず、軍人だけの戦争ならその後も続いて、さらに犠牲者が出ていた可能性はあるね。
女:日本の軍隊が中国やアジアの占領したところで行った残虐なことも、戦争という異常な状態がさせたものでしょ。
  もう二度と殺人を正当なものとする戦争を、もっと、もっと非難して欲しいわ。

男:戦争の中枢にいた軍の指揮官が、責任は全部自分にあるといっても、それは当たり前だね。
女:もし、日本が勝っていたら、裁判なんか適当にして、敵の司令官を処刑していたでしょう?
男:それもありうるね。
女:ここまで、負けた日本の将校が主張できただけでも、アメリカの民主主義の健全性は評価できるわね。

  でも、映画の内容としては、反戦よりも、なんだか、管理ふいきとどきで、テレビの前で頭を下げている経営者や責任者に対して、もっとキチンと責任をとりなさいっていっているように感じたわ。

男:監督:小泉尭史が言いたかった戦争がどこか別のところに行ってしまったんだね。
女:それに、ナレーションが重要な要素となっているのに、ナレーターの竹野内豊の語りでは、胸に沁みてこないのよね。
男:愛する家族についても、子供や赤ん坊を紹介するだけで、踏み込んだ描写がなかったね。
女:部下をマッサージするシーンは、当時の軍隊の中将がそこまでするわけないでしょうって思うわね。
男:結局、我々観客に残したい「遺言」は、充分に伝わってこなかったってことか。
女:でも、貴方の財産は「遺言」がなくても、全部わたしが頂きますからね。
男:いや、一部は寄付しようと考えているけど。
女:いいえ、全部私の物です!
男:そんなぁ...少しは、社会の役に立つように...
女:私の役に立てばいいの!

アメリカ側の検察官を演じるフレッド・マックィーンは、あのスティーヴ・マックィーンの息子だそうです。スティーヴ・マックィーンの面影があります。

監督:小泉尭史の作品なら;「阿弥陀堂だより」

 


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