● 2008年のトピックスは、またヨーロッパ旅行だった。

女:2008年もヨーロッパへいったのよね。
男:2006年にイギリス・ドイツ・スイス・フランスそしてイタリアと5ヶ国を巡ってきたけど、その時のパッケージにスペインとポルトガルが入っていなかった。
  どうせヨーロッパに行くなら、ヨーロッパはほとんど行ってみたかったから残っていたスペインとポルトガルにいってきた。
女:それで?
男:観光地は世界遺産が中心で、それらは結局古い建物、つまり教会が中心で最初は異文化の本筋に触れるので面白かったけど、暗い教会内ばかりでは飽きてしまったってところだね。
  でも、ヨーロッパにおける各国の興亡の跡。また、人種の対立、キリスト教とイスラム教の争いがいまだに引き続いているのがよく分かった。
女:詳細は、ヨーロッパ旅行 第2弾にもあるから、そのあたりでいいでしょう。

  他には、何かある?
男:使っているパソコンの本体をSOTEC製からDELL製に変更して、OSもWINDOWS XP から VISTA に変更したことだね
女:ファイルなんかの移行が大変だったようね。
男:インターネット関係でのファイルだけでなく、力を入れている「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の関係、また音楽や映画の資料も大量に入っているからかなり手間がかかったね。
  でも、ソフトはほとんどがそのまま使えたので、変更に伴う余分な出費がなかったので助かったよ。
女:世間では、北京オリンピックも開催されていたというのに、自分の世界で遊んでいたようね。

  体の調子はどうなの?
男:3年前に患った帯状疱疹後の顔の神経痛は、相変わらず時々ヒリヒリとあるし、夏には、眼の中に飛蚊症が現れるしで、年齢をしみじみ感じているね。
  病気がもう歳のせいで治らないってのが辛い。
女:でも、これだけは仕方のないことね。
  いつまでも、貴方の自慢と愚痴をきいていても、面白くないから、それは終わりにして、そろそろ映画の話に入りましょう。

○ 2008年に観た映画界の全体は?

女:2008年には何本の映画を観たの?
男:全部で49本だったね。
  月平均にすると4本だから、まあ普通の年だね。
女:内訳は?
男:邦画が14本で洋画が35本ってところだね。
女:2007年は65本も観たのにかなり減ったんじゃないの。
男:そうだね。去年みたいに1日に2本観るてのはなくなったね。
女:3時間以上も映画館の椅子に座っていると確かに疲れるわね。

○ 評論のやり方は?

女:最近「あらすじ」が上手く書けないってのがホームページにあるわね。
  どうして?

男:そうなんだ。
  私の「映画・演劇 評論」のホームページでは、「あらすじ」から始まり、みんな自分が劇場で観て感じたことを書いているから、パンフレットやネットでの文をそのまま引用していない。
  そこで、出来の良い作品は、流れが上手く纏まっているから、見た後でも「あらすじ」が書きやすい。
  しかし、内容の乏しい作品、そう出来の悪い映画を、他の人が読んで分かるようにするには、話が繋がっていないから大変な作業なんだ。
女:そこまで気を使っているとは、知らなかったわ。
  読んでいる人は、あまり気にしないで読み進んでいるようよ。

男:そうだろうね。
  でも、自分のオリジナリティーとしてこれだけはこだわって行きたいね。
女:そう、でも、以前の評論も読むと、かなり似ているのもあるわよ。
男:だろうね。
  こうやって、ネットに何年もの記録が残っていると確かにマンネリ化はあると反省している。  
女:まあ、その反省は今後につなげていって、2008年の映画をふりかえりましょうよ。

○ 洋画について

女:じゃあ、2008年の洋画から振り返ってみる?
男:うん、そうしよう。

女:1月のジョニー・デップが出ていた、理髪師が殺人を犯す話の「スウィニー・トッド」は、余りにも血の扱い方が嫌で貴方にしては、触れてほしくない作品だったのね。
男:確かに、表現の自由は保障されるべきで、様々な映画もあっていいけど、映画館で公開するということについては、それなりの責任も要求されることだと思っている。
  殺人の方法をここまで表現し、人の体を動物の肉と同じように扱うのは、人類の生命を軽んじている。
  それが、ファンの多いジョニー・デップがでている映画では、悪影響がありすぎる内容だった。
  そこを、指摘したい。
女:分かったわ。
  それじゃ、普通の映画に戻りましょうよ。

男:ハリウッドの大掛かりな、CG(コンピューター・グラフィック)技術の向上で、SF映画が作り易くなったようで、近未来の作品が多かったね。
女:「アイ・アム・レジェンド」から始まる流れね。
男:そうだね。1月のウィル・スミスが出ていた「アイ・アム・レジェンド」から2008年は始まり、4月の「クローバー・フィールド」、9月にはアンジェリーナ・ジョリーの「ウォンテッド」、最後の12月にはキアヌ・リーヴスの「地球が静止する日」までがあげられるかな。
女:アニメの「ウォーリー」も入れてよ。それから、シャマラン監督の「ハプニング」も忘れているわよ。

○ 映画のロケ地としてのニューヨーク

男:うん、そうだね。
  これらの殆どが、アメリカのニューヨークが舞台で、しかもセントラル・パークが中心なんだよね。
女:絵になる街なのね。
男:繁栄を極めたシンボルとしての超高層ビル群、きれいに区画された街並みを上空からの俯瞰。
  そして、人々が安らぐセントラル・パーク。まったく映像が定番でどの映画も記憶に残らない。
女:映画を作っている人が、アメリカ人で、彼らは都会しか知らないから仕方のないことね。
男:それと、ニューヨーク市から映画産業に、補助金が出ているようだ。
女:映画のロケ地としての観光価値に対してなのね。
男:映画で評判になると、一度は行って見たくなるからね。
女:東京もロケ地としてもっとあちらこちらを開放すると良いのにね。
男:どこも、人通りが多くて、交通を遮断すると影響が大きいので進んでないようだ。

○ SFが多い

女:で、映画の内容はどうだったの。
男:「アイ・アム・レジェンド」はウイルスに侵されて、多くの人がゾンビになり、孤独になった寂しい科学者の話だったが、どこかで観た内容だし、作りが荒くつじつまが合わない箇所が多かった。ゾンビなら音楽のマイケル・ジャクソンの「スリラー」のプロモションビデオの方が、出来がいいと感じた。
  「クローバー・フィールド」は、巨大怪獣がニューニョークのビルを次々と破壊していき、逃げ遅れた恋人を助ける話だね。
  踵の高いハイヒールを履いて壊れたビルから走って逃げるのは、おかしいよね。
女:貴方の基準では現実的ではなくても、少しは理論的であってほしいのね。
男:それもあるけど、映画としての主張が感じられないことの方を言いたい。
  恐怖を与えたいのか、未来予想なのか、テーマが絞り込めていないのだよ。
女:シャマン監督の「ハプニング」はもう論外なのね。
男:そうだね。人類が原因不明で自殺していく話だね。
  これも多分原因は植物の人類に対する反乱で、シャマラン監督は地球を大切にしましょうって言いたいようだ。
  でも、描き方が表面的で、シャマラン監督が考えている都合のいい方だけから描かれていて、風の吹き方など、観客がおかしいと思う箇所が多すぎたね。
  この監督に「シックス・センス」以上の作品を期待してはいけないね。
女:「ウォンテッド」はどうなの。
男:アンジェリーナ・ジョリーやモーガン・フリーマンが出ていたね。
  二人とも、「出る作品を選んだらどうだ」という他愛のない映画だった。
女:でも、少しは新しいアイディアもあったんでしょ。
男:撃った弾丸が円を描くのは、確かに漫画以上だけど、内容のない「アメリカン・コミック」から脱出していない。
女:12月に観た「地球が静止する日」は?
男:これも、シャマラン監督の「ハプニング」が植物の人類に対する反乱だったように、地球上の他の生命にとって危険な人類を、もっと高度な地球外生命がやってきて人類を滅ぼす話だ。
  この「地球が静止する日」も、50年以上の昔のリメイク作品で、実体の不明な地球外生命体がすぐに人間になってしまう所など、想像的な描き方がはっきりしていない。この手の宇宙人の表現は今となっては古い手法だ。
  リメイクするなら、どこか現代での解釈は欲しい。
女:植物と地球を滅ぼす人類の話が出てくれば、アニメの「WALL・E(ウォーリー)」に繋がらない?
男:そうだね。さすがにピクサーの描く未来型のロボット・イヴは奇麗でその立体感は、日本製作の宮崎アニメなどとは質感を異にしている。
  でも、前半のゴミ掃除とイヴとの出会いぐらいは、結構面白かったけど、後半の人間との絡みとなる宇宙船内での騒動は、他の作品でもよくある進化したコンピューター・システムとの争いで平凡だった。

○ アカデミー賞関係は?

女:毎年アカデミー賞には一言あるんでしょう。
男:まあ、アメリカという一地方の賞だけど、影響力のある映画界の最高の賞だから、なにかいいたいよね。
女:それで。

男:作品賞を獲った「ノーカントリー」は見ごたえのある作品だった。
  殺し屋がおかっぱの髪型とは、笑いというより変に存在感が出ている。
  圧縮空気を使うとは、もうすごいアイデアで感心したね。
女:助演男優賞を獲ったスペイン出身のハビエル・バルデムが上手いってこともあるんじゃないの。
男:それは、言えるね。
  でも、「ノーカントリー・フォア・オールドメン」の原題が意味する「年寄りには住み難い国」のテーマは少しばかり、無くなっているのは残念だった。
女:もう一つの「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」はどうだったの。
男:こちらは、主演のダニエル・デイ・ルイスが「主演男優賞」を獲った。
  アメリカの西部開拓時代の話で、金儲け主義が絡んだ反宗教的な主張があるので、どうも日本では受けなかったようだ。
  私としては、面白かったけど。
女:宗教色の濃いのは、日本人には背景が分からないから、説明が省略されているとついていけないわね。
  それと、題名の付け方が「ノーカントリー」にしろ「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」にしろカタカナばかりで日本的になっていないわね。
  「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」じゃ多くの人は、内容が想像できないもの。

男:その点、昔の映画は原題と映画の内容をうまくマッチさせた日本的なタイトルをつけていたね。
  今は、外国と日本との公開時期に差がないので、配給会社の人も内容を吟味できないからどうしても原題を使うけど、せめて「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は日本的なタイトルにしないと観客が呼べない。

女:そこは、今後の配給会社の課題にしておいて、主演女優賞は、「エディット・ピアフ」のマリオン・コティヤールだったわね。
男:「エディット・ピアフ」の評論は、2008年の評論ではなく、2007年に観たので2007年の10月号に載せたけど、フランスが誇る偉大なる歌手・エディット・ピアフの人生での真実かも知れないけど、老いなどのマイナスの面が強調されていて、ストーリーとしては不満だ。
女:助演女優賞を獲った「フィクサー」のティルダ・スウィントンは。
男:汚いもみ消しなど裏の世界に生きる弁護士:ジョージ・クルーニーと問題を起こした巨大製薬会社で法務担当のティルダ・スウィントンとの対決だけど、ジョージ・クルーニーがどうしてもかっこをばかりを気にする「良い奴」ばかりを演じていて、汚れ役が演じられていない。観ていても入っていけなかった。
女:外国語映画賞を獲った「ヒトラーの贋札」も観たわね。
男:ナチスから迫害を受けるユダヤ人だけど、生きるためには「贋札作り」に協力をしなければならなかった苦しさは、うまく表現できていた。

○ 他の映画は?

女:アカデミー賞の受賞作品はそのくらいにして、「アメリカン・ギャング・スター」は。
男:麻薬捜査官のラッセル・クローと新しくニューヨークのギャングにのし上がるデンゼル・ワシントンが互角に渡りあってたけど、どうも黒人の差別の扱い方に気を使いすぎているようで、1960年代ではもっと黒人は汚く蔑視されていたのに、きれいな扱いになっている。白人に近い黒人では、面白くない。また、ギャング物では、どうしても名作「ゴッドファーザー」と比べると劣る。 
女:他に言いたい作品はある。
男:「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」かな。
女:もう、終わりと思っていたハリソン・フォードとスピルバーグ監督の「インディ・ジョーンズ」が復活したのね。
男:アクションを次から次ぎへとつないで行く手法は健在だったけど、2年後ぐらいに、DVDでまた観るかと訊かれたら、多分「いいえ」って言う映画だね。
女:ここ数年続いている、リメイクやシリーズ物の多さは、本当に、ハリウッド映画の終焉が近いと思わせるわね。
男:映画が好きな私にとっては非常に残念だけど、今後は、日本とヨーロッパに期待したいね。
女:「大いなる陰謀」は、大物俳優がたくさん出てたわね。
男:ロバート・レッドフォードがベトナム戦争を経験した大学教授で、メリル・ストリープが特ダネをつかもうとする新聞記者、新聞記者を利用しようとする上院議員がトム・クルーズでアフガニスタンでの争いを描いていたね。
  監督も勤めたロバート・レッドフォードがベトナム戦争で犯したアメリカの軍事介入のミスをアフガンでもやっていると言いたいようだけど、それが「個人的なぼやき」の段階で終わってしまった。
女:同じアフガンを、トム・ハンクスも取り上げていなかった。
男:トム・ハンクスが政治家を演じた「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」だね。
  これは、真剣な政治家と女遊びが好きなふざけた面との対比が共に中途半端だった。

○ 女優は?

女:2008年は、あなたのお気に入りのニコール・キッドマンは活躍してなかったけど、他に気になった女優はいたの?
男:キーラ・ナイトレイとナタリー・ポートマンだね。
女:キーラ・ナイトレイは「シルク」「つぐない」ね。

男:「シルク」はヨーロッパから見た戦国時代の日本の女性を「絹=シルク」に象徴させていたけど、日本での女優:芦名星が新人で、また絹が持つ滑らかさとキメの細かさの感触が無かったのが残念だ。
  次の「つぐない」は、姉妹の関係での、少女時代の軽い嫉妬が招いた罪の意識を追及している。
  でも心の葛藤を表現するまでには、演出が出来ていなかった。
女:ナタリー・ポートマンは「宮廷画家ゴヤは見た」と「ブーリン家の姉妹」ね。

男:「宮廷画家ゴヤは見た」は、ナタリー・ポートマンと「ノーカントリー」のハビエル・バルデムが出ている。
  スペインの中世の魔女狩りを絡めて、これも胡散臭い宗教家が出てくるが、ナタリー・ポートマンにとって記念的な映画になったと思う。
  「スター・ウォーズ」のお姫様から完全に脱却した演技だ。
女:ずいぶんと高い評価ね。
男:かなり見苦しい老婆まで、しっかりと演じていたね。
  「ブーリン家の姉妹」は、王妃になる姉妹の争いを描いていた。
  映像はアングルも凝っていて奇麗だった。だけど脚本の端折りがあり出来としては良くなかった。
  でも、今後のナタリー・ポートマンは稼げる女優になるよ。
女:ヨーロッパ各地を旅したあなたなら、また歴史などのウンチクもあるんじゃないの。
男:うまく出番を作ってくれるね。
  英国のイングランド王ヘンリー8世の王妃を描いた「ブーリン家の姉妹」で出ているアン女王の産んだ娘エリザベスは、女性でありながらイギリス統一を果たしケイト・ブランシェットが演じた「エリザベス ゴールデン・エイジ」に続くんだ。
  この映画は、ケイト・ブランシェットのファッション・ショーだったけどね。

  彼女の時代に、スペインの無敵艦隊を破り、それを機にスペインの衰退が始まり、イギリスが地方の一国家から世界的に隆盛していく。
女:そして、それが、あなたの「スペイン・ポルトガルの旅」へ続くわけね。

○ 高齢者も活躍していた

女:60歳を過ぎたあたなにとって、同年代の頑張って生きようって映画があったわね。
男:自分が生きてきた道に過ちはなかったという女性の愛を描いた「いつか眠りにつく前に」と、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが死ぬ前に今までできなかったことをやる「最高の人生の見つけ方」だね。
  また、リチャード・ギアとダイアン・レインの中年の恋を描いた「最後の初恋」も高齢者の関係に入るかな。

  人生の過去を振り返る「いつか眠りにつく前に」と、歳をとっても新しいことをやろうとする「最高の人生の見つけ方」は対照的だけど、映画界にとっても、これからの観客の中心となる高齢者をターゲットとするマーケット戦略としてこれからも、取り上げる分野だと思う。
  「最後の初恋」は、舞台の設定が危なっかしい海べりの家だとか、傲慢な医者の改心では、他人事で終わり、観ていても感情が入らない。
  男女に関係なく、幾つになっても燃えるような恋をしたい気持ちを、映画が代わりに表現して欲しいけど、この浮ついた設定では無理だった。

○ コメディは?

女:笑える映画はなかったの。
男:単純なコメディだけの映画は観てないね。
  恋も絡めた物は「ベガスの恋に勝つルール」かな。
女:仕切屋のキャメロン・ディアスが恋人に振られて、衝動的にラスヴェガスで結婚してしまう話ね。
男:まあ、言うまでもないけど、結婚は一時の気分が盛り上がった時の心の踏切だから、後でおおいに後悔することはある。
女:どうして、そこを強調するの。
  他には。

男:恋愛ものでよくあるパターン、そう、近くにいる異性の存在に急に気が付く「近距離恋愛」は、アメリカ国内向けの笑いだった。
  これは、結婚の儀式を中心にアメリカ文化と日本の違いがよく分かる。

女:でも、文化の違いと言葉を知らないといろいろな場面で笑えないのね。
男:そうだね。宗教を中心にした文化の違いは、理解するまでに時間がかかるだろうね。
  「フーテンの寅」さんの日本的な内心の機微が海外では、なかなか笑ってもらえないからね。

○ 邦画は?

女:それで、だいたい洋画のめぼしいところは、終りね。
  邦画に移りましょうか。

男:2008年の邦画も14本とは観た方だね。
女:吉永小百合さんが出ているのが、2本もあったのね。
男:そうだよ。いっちゃあ悪いけど、いまだに年間2本を封切りさせることのできる女優はすごいことだよ。
女:でも、内容も問題にしなければいけないでしょう。
男:そうか。
  1本目の山田洋次監督の反戦映画「母べえ」は、さすがに山田監督が「こだわり」と「手を抜かない演出」を十分にみせてくれた。
  声高に「反戦、反戦」と叫ばなくても戦争の持つ愚かさ、国家権力を自分の為に利用する偽政者が出ている。
  でも、2本目の民間の盲目の歴史研究家が古代の邪馬台国の存在を探す「まぼろしの邪馬台国」は、夫婦愛の表現方法が定型だ。
  監督の技量と脚本の差が明確に表れている。
女:「まぼろしの邪馬台国」はスポンサーにも気を遣いすぎよ。

   反戦思想なら、空爆で捕虜にした米兵を処刑して戦犯になった「私は貝になりたい」でしょう。
男:福澤克雄監督の未熟さがもろに出てしまった映画だね。
女:すごい言い方ね。
男:でも、場所を南国の高知県と設定して、大雪のシーンはないよね。
  これでは、北の秋田県と南の高知県が合体してしまう。日本人として地理から勉強が必要とはひどい頭脳だ。
  映画も作りものだから、一部のシーンにこだわりがあるのはいいけど、それがまるで観光のためのような雪・紅葉・川の流れなどの画面を想定したのは、筋から外れすぎる。
  脚本を担当した橋本忍がこのような設定を我慢したのも不思議だ。
  基本的には、発声からの勉強を必要とする中居正広を起用したというミスキャストもあるけど、製作陣がもっと映画化に対して妥協のない姿勢まで煮詰めてほしい。
  TBSの財産である名作をもう2度と使えなくした。
女:そんなに罪な出来なの。
男:戦争という巨大な国家権力の行使の前には、庶民がいかに無力であったのか。
  みんながおかしいと思っていた軍隊の組織が維持された反省を訴えなければ、また映画化する意味がない。


女:同じ日本空襲の米軍捕虜を処刑した題材を将校の立場から描いた「明日への遺言」は、どうなの。
男:藤田まことが岡田中将を演じた作品だね。
  太平洋戦争での米軍の日本無差別空襲は、罪のない民間人を何100万人も犠牲としていながら、その米軍の殺戮行為は裁かれず、何故に日本軍だけが責めを負うのか、これは日本としても提起していい。
女:ピカソの絵の「ゲルニカ」でも取り上げられた殺戮行為ね。
  でも。

男:そう、映画「明日への遺言」の主張が、潔い上官の立場になっている。
  敗戦国・日本から戦勝国・アメリカを糾弾する姿勢が弱いね。
  ナレーションが入るってことは、画像としての説明を補うことになるけど、映画ではそのような説明は、できるだけ少なくして観る場面で分かるようにしてほしい。

○ 名作のリメイクは、映画界の衰退を招く

女:邦画も名作のリメイクが続くわね。
男:「私は貝になりたい」はテレビからのリメイクだったけど、映画界の名作「隠し砦の三悪人」が去年の「椿三十郎」に続いて作られたね。
女:共に黒澤明監督で、東宝の財産ね。

男:2007年の「椿三十郎」は、ほとんど前作に近く作り失敗したので、「隠し砦の三悪人」は、松本潤や長澤まさみなどの若手を起用して観客動員を狙ったけど、作品としてみると練られていない。
女:城の爆発のシーンなんかがCGで表現できることが、作品に重みを与えていないと思わない。
男:鋭い指摘だね。
  昔の映画は、セットを組んで表現していたから、費用の関係から、燃やしたり爆破シーンなどは1回限りの撮影であるため、何度も頭の中で練ってねっての本番だった。
  その苦労は作品に反映されている。
女:CGでの表現が、現実性を薄くしたのね。
男:それと、「隠し砦の三悪人」はもともと若者中心の映画ではない。
女:そうね。
  ある程度世の中が分かっているずるい役を演じたぼけと突っ込みの千秋実と藤原釜足がいたから主役の三船が引き立つ構成が上手いのね。

男:東宝も名作の「題名」で客を呼ぶという安易な発想を止めないと、地下から黒澤監督が「ウラメシー」って出てくるよ。

○ 新しい作品は?

女:リメイクはもう今に始まったことじゃないから、言い出したら止まらないわね。次に行きましょう。

  医療の現場を描いたのがあったわね。

男:心臓手術が「故意の殺人か事故」かを、厚生省の安部寛ととぼけた感じの女医:竹内結子がやや面白く演じてた「チームバチスタの栄光」だね。
女:最近の医者不足と医療事故に怯える医者の立場をミステリーにして面白かったわ。
男:どうしても、生死にかかわり深刻になる病院の設定を、たまには息抜きをいれた脚本はいいね。
女:男女ペアにしたのは原作と違っているようね。
  映画のあと放映したフジ・テレビでは、男女のコンビではなく、男同士のコンビで放映していたわよ。
  そして、映画は好評だったので、また、パート2も作っているようね。

男:柳の下にドジョウが何匹いるかね。

女:本が原作で映画化したのは、「クライマーズ・ハイ」もそうね。
男:群馬の地方新聞社に勤める堤真一が日航ジャンボ機の遭難事故を大手新聞社と張り合って取材する話だね。
女:この「クライマーズ・ハイ」は、NHKテレビの方が映画よりも先に放映したでしょう。
男:同じ原作を、どう料理するかは、監督・脚本・現場の設定など比較できる。
  地方新聞社に訪れた大きな取材チャンスを登山家が登頂に成功したときに味わう「興奮状態」に例えたが、これはNHKテレビの方が印象に残る出来だった。
女:監督が俳優に妥協したとあたたは言ってるわね。
男:大物俳優である山ア努などは、新聞記者からみれば悪役に徹して終わればいいのに、誤解されていた「良い奴」に戻すのは、描き方として常套だった。
  例え新聞社でも、経営をするには、政治的にも動き、広告も必要で正義の前に、会社として生きることは非情なものだという現状の認識も取り入れていい。
女:仕事以外の余分な味つけが、作品の旨味を奪ったのね。

  山ア努といえば、「おくりびと」でも重要な役だったわね。

男:都会で挫折した楽団員の本木雅弘が、田舎に戻り「納棺師」になる映画だね。
女:だいたい「納棺師」なんて職業を知っていた?
男:多くの人は、知らなかったと思うよ。
  私も、葬式の手順は分かるけど、その前に納棺師がこんなに、死者を手厚く扱ってくれているなんて、全然知らなかった。
女:死んでしまった人は、もうその後の自分がどう扱われているかは、当然知らないし、関係がないけど、ある人の「死」は、残された人々の死者に対する思い入れでしょ。
男:そうだね。
女:死んでしまえば、裸になっても、もう恥ずかしくはないけど、女性としては特に人間時代にもっていた、生きていた状態での感情も残して置きたいわよね。
男:そう「死者への尊厳」だね。
女:「納棺師」を演じた山ア努と本木雅弘の死者に対する思いやりの気持ちが、着替えのシーンなんかで見事に出ているのよね。
男:死者と向かい合った時の体の位置や手の動かし方なんかは、もう「芸術的な美」を感じた。
  ここまで、丁寧に扱ってくれるなら、いつでも安心して死ねるね。
女:まあ、そんな寂しい話は、映画だけにしてよ。

○ 明るい映画は?

女:邦画の笑える作品はあったの?
男:三谷幸喜監督のギャングと売れない俳優が殺し屋と間違えるられる話の「ザ・マジックアワー」を6月に観た。
女:三谷幸喜監督が無茶苦茶にテレビやラジオにでて宣伝してた映画ね。
男:三谷監督の作品は、前作の「The 有頂天ホテル」にしても、有名な俳優を多く使っているけど、彼ら有名人の出番をあちらこちらに挿入するため、全体としての笑いのドタバタが中断する傾向がある。
女:でも、もともと三谷監督は、舞台でもそんな演出でやってきたんでしょ。
男:舞台なら、有名な俳優が出るだけで、客席も沸くだろうけど、映画では、話に繋がっていない有名人を出してもどうしてここでこの人が登場するのかって疑問がでてきて、話と流れが途切れる。
女:「ザ・マジックアワー」での綾小路きみまろの使われ方などをいっているのね。
男:もし、次回作があるなら、俳優を絞ってドタバタにしたらどうかな。

女:ビートたけし監督の「アキレスと亀」も観たでしょ。
男:豊かな家庭に生まれ画家になることを強制された真知寿(まちす)の一生を描いた作品だね。
  これは、笑える場面が少なかったね。
女:どうして?
男:ビートたけしがあまりにも、個人的な、自分だけの笑いの世界感を出し過ぎだ。
  世の中の決りごと(ルール)や品物など、様々な物を破壊することは、快感であり無鉄砲にやることは、傍でみていても笑いを誘うけど、それだけで後に何も残らない。
女:それに、話が統一されてなかったんでしょ。
男:多分この作品には、脚本もなく、ビートたけしの現場での思いつきで撮影もされたようで子供時代・青年時代はまあまあ話もつながるけど、晩年はハチャメチャのコントが出てくるだけだ。
女:前作の「座頭市」とは、まったく違った評価ね。
男:北野武のように個人色が強い監督作品は、出来不出来がはっきりする。
   その時の監督の気分次第だから、止むをえない。

女:飛行機のトラブルを描いた「ハッピー・フライト」も観たでしょう。
男:矢口史靖(しのぶ)監督作品だね。
  こちらは、北野武監督の思いつきと違って、事前の下調べが十分だ。
女:旅客機と飛行場関係の裏話が満載だったわね。
男:内部事情ばかりを題材にすると、その業界の紹介映画で終わるけど、さすがに矢口監督はそこに笑いをうまくちりばめている。
女:おなかを抱えた大笑いまでにはいかないけど、クスクス笑いは随分とあったわね。
男:綾瀬はるかのような、若い女優が喜劇に向かってくれると邦画界も楽しみが増える。

女:あとは、何かある?
男:救助隊が活躍する「252 生存者あり」かな。
女:でも災害の扱い方が中途半端だったのでしょ。
男:生存者の救出に優先順序をつけていいのか。
  二次災害をださないためにはどう対処しなければいけないのか。
  災害と救助隊が抱える題材としては真剣で、なかなか答えがだせないテーマをもっているのに、耳の不自由な娘、挫折している医者の卵、苦労人の町工場の経営者などの設定がもう安易すぎる。
女:また、救助が成功するのも都合のいい話ばかりで、荒い持って行き方だったわね。

○ 最後に一言

女:じゃあ、2008年であなたが、一番良かったと思う作品はなに?
男:いつも言っているけど、作品のランク付けは好きじゃないけど、2008年ははっきりいえる。
女:それは?
男:「おくりびと」だね。

女:やっぱりね。
男:納棺師というユニークな職業を芸術的に演じた本木雅弘とそれを見事に仕上げた瀧田洋二郎監督の成果を絶賛したい。
女:洋画の他の作品も含めての評価なの?
男:そうだね。
  2008年映画界の最高の作品と認めるよ。
女:分かったわ。
  じゃ、2009年も評論ができるように、ガンバッテね!

男:できたらいいね。

 

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