2007年 10月の映画・演劇 評論

2007年

 グッド・シェパード

あらすじ:第二次世界大戦が始まる前のアメリカ。名門イエール大学で優秀な成績を誇るエドワード・ウイルソン(マット・デイモン)は同大学のエリート同窓生で作られた秘密結社に入会を許され、同じ結社に属する上院議員の娘クローバー(アンジェリーナ・ジョリー)を妊娠させた責任をとり結婚をする。甘い新婚生活をおくる間も無く、始まった世界大戦で、エドワードはロンドンに赴任し諜報活動をイギリスから学ぶ。そして、終戦。アメリカは激しさを増すソ連との情報戦に備えエドワードらを中心に「アメリカ中央情報局(CIA)」を設立した。1961年、キューバのカストロが政権を握ったが、アメリカの鼻の先に共産主義国ができることに反感を抱くアメリカ政府はCIAを使ってカストロを反撃する計画を建てた。しかし、そのキューバ侵攻作戦は情報が漏れて失敗した。CIAの誰かの裏切りか。エドワードのもとに送りつけられた録音テープと数枚の写真が意味するものは。。。

状況の説明が上手くできていない!
 今は巨大な組織となった「アメリカ中央情報局(CIA)」誕生から、キューバ侵攻作戦の失敗までを描いた、約3時間にも及ぶ大作だ。
題名の「グッド・シェパード」とは、「忠実な番犬」と捉えればいいのかな。

 「あらすじ」は、時系列に書いたけど、映画の方は、エドワードの学生時代や第二次世界大戦、戦後のベルリン、キューバ侵攻計画、CIA組織の対立などが、交錯した編集で、かなりの事実を知っている人は映画にでてくる年号と当時のフイルムで理解できるかも知れ無いが、多くの人には、整理ができないと思える構成だ。

 また、親ナチスと思っていた教授がイギリスのスパイであったり、アメリカに亡命したソ連KGBの大物が二重スパイであったなどは、もっと丁寧に描いてくれないと分かり難い。
アメリカとソ連との冷戦の時代にCIAがいかに活躍(暗躍?)したかを、不確実ながら記憶していると、他の伏線も楽しめるようだ。

 ベルリンで、常に冷静なエドワードが簡単に耳の不自由な振りをした秘書に騙される訳も、好きだけど結婚できなかった耳の不自由な恋人ローラの存在があった話は活きている。
英語として、「マザー」や「ユリシーズ」の持つ裏の説明も、英語圏以外の人にしてくれないと面白くない。
究極で述べられる、神とCIAは「The」が付かない訳は、キリスト教徒でないとCIAの尊大さが、実感できないもどかしさがある。

 チラシでは、組織と家族ー2つのファミリーに引き裂かれる男と女、とあるが、私の日本的な感覚では、情報機関に勤める以上、家庭(ファミリー)は当然崩壊しているのが前提にあるため、アメリカ社会が求めている家族関係は、描いても無駄と思う。
それよりも、建国から歴史の浅いアメリカ合衆国の国民の拠り所が国家組織への忠誠心(グッド・シェパード)であったと観ていて、特に感心を引いた。

 映画の手法としては、息子の恋人を殺しながら、息子を抱くなど、どこかに「ゴッドファーザー」の影響が出てくるのは、「ゴッドファーザー」出身のロバート・デ・ニーロ監督や製作総指揮をとったフランシス・フォード・コッポラなら仕方のないことか。

 大作ではあるが、中身には引き込まれない。

参考に、マット・デイモンの出ていた;「ディパーテッド」 
     アンジェリーナ・ジョリーの出ていた;「Mr&Mrs.スミス」

 キングダム ー見えざる敵ー

あらすじ:サウジアラビアの外国人居住区を狙ったテロが発生し、現地の石油会社に勤めるアメリカ人家族らを中心に300人を超える死傷者がでた。犠牲者の中にはFBI本部に勤める捜査官ロナルド・フルーリー(ジェイミー・フォックス)の同僚もいた。外交関係からサウジへの捜査派遣は5日間というタイム・リミットではあったが、ロナルドや爆発物の専門官(クリス・クーパー)、法医学のジャネット・メイズ(ジェニファー・ガーナー)ら4人が現地で首謀者を探す。宗教と習慣が異なる王国(キングダム)で、テロとの闘いが今日も続く。。。

メッセージの大きさに映像がついていっていない!
 単なるアクションものかと思っていたら、何と、壮大なメッセージが付いていた。

それは、テロリストの行動もFBIの行動も同じ「復讐」の発想で何時までも終わりのない世界であるということだ。

 確かに、国家権力が行う行動は治安維持で、反国家主義者が行う行動はテロとなり、その実態は同じではある。
だけど、そこには命の大切さがあり、民衆の支持の多少が大きく係わってくる。
人殺しは、テロリストがやってもFBIがやっても同じだと、主張するなら、この映画のように描いては、観客には伝わらない。

 車がすごいスピードでひっくり返ってもかすり傷しか負わないFBIの捜査官達。
四方八方からの銃撃戦でも、スーパーマン並みに敵をやっつけるFBI捜査官。
うまく外れてくれるロケット弾。
また、アメリカ政府内での司法長官とFBI長官の対立など、よくある設定は「復讐」の虚しさを全然主張していない。

 限られた日時で、テロリストの首謀者にまで迫ることができるようにした話の展開も、随分と無理があった。
中途半端な内容では、アクションとしても、社会批判としても面白くない。

ご参考までに、ジェイミー・フォックスが活躍している;「Ray/レイ」、「ドリームガールズ

 

 ローグ アサシン

あらすじ:アメリカはサンフランシスコ。FBIアジア犯罪担当の捜査官ジャック・クロフォード(ジェイソン・ステイサム)と相棒のトム・ローン(ジェット・リー)は、抗争に明け暮れる中国系マフィアと日本ヤクザの事件から、今まで謎の存在だった冷酷な殺し屋ローグをついに追い詰め、トムの弾丸がローグの顔面に当たる。しかし、海に落ちたローグの体は発見されなかった。それから数日後、トムとその家族が何者かに無残な姿で焼き殺される。ジャックは現場でいつもローグが使うチタニウム彈の薬きょうを見つけローグが犯人と分かった。その後も、中国系マフィア(ジョン・ローン)と日本のヤクザ(石橋凌)との抗争は激しさを増していくが、そこには、対立する二つの組織から巧みに報酬を受け取るローグがいた。ローグとは何者か。その不可解な行動の裏には何が隠されているのか。。。

冷酷、残忍だけど、スケールは充実している!
 あまり暴力物や残酷な内容は好きではないが、この映画は流れがよく、戦闘シーンよりもストーリー中心で観られる。

 無口な殺し屋を演じるジェット・リーは、評判になった「ダニー・ザ・ドッグ」を思い出させるが、この映画では、今までのアクションに加えて日本のヤクザとの殺陣もありで、フェンシングの構えではあるが、それなりの変化がある。
日本のヤクザが未だに、刀を使っているという定番的な発想は、チョッピリ不満といえば不満だけど、すべてが拳銃をぶっ放しての戦闘では、退屈だ。
バトル・シーンでの味付けとして、チャンバラは無理がなく活かされている。日本刀の切れ味はすごい。

 それにしても、日本のヤクザ組織も国際的になったものだ。

  セットの背景に掲げられた訳の分からない日本語の標語も、今回は充分には読みとれなかったが、マニア的には面白そうな気がする。

 この映画では、眼が一つの主題だけど、冷淡なジェット・リーと表情豊かなジェイソン・ステイサムの対比が成功している。

 特に良いのは、映像に凝っている点だ。
アングルや光の当て方が好印象だ。たくさんの土管を使ったところの殴り合いでの黄色の光が今でも眼に残る。

 家族を守るために仲間を売り、家族の復讐に燃えて仲間を殺す。
相反するテーマは、真摯な問題だ。
単に暴力が前面にでていないのが、大人としての鑑賞に堪えられる。

でも、日本女性のキラを演じるデヴォン青木のポッチャリ顔は幼児的で、ミス・キャストじゃないかな。凄みのある女優の方がよかった。

ご参考までに、ジェット・リーの:「Hero(英雄)」

 

 エディット・ピアフ − 愛の讃歌 −

あらすじ:第一次世界大戦中の1915年、パリの街頭で歌う母と大道芸人の父との間に生まれた、エディット・ジョヴァンナ・ガション(マリオン・コティヤール)は、祖母が営む娼館に引き取られて育てられたが、病弱で失明の危機もあった。しかし、天性の喉を活かし街角で歌っているところを、名門クラブのオーナーに認められ、歌手エディット・ピアフとしてフランス中の人気者になっていった。アメリカでのコンサートも好評で、ボクシングの世界チャンピォンのマルセルとも睦まじく付き合い幸せであった。だが、マルセルの事故死から麻薬に溺れ、アルコール中毒もひどくなっていく。歌を愛し最後まで舞台で歌い続けたエディットであったが、ついに。。。

女:歌姫のマイナスの部分が強調されすぎね!
男:それは、どういうこと?
女:エディット・ピアフの人間としての悪い部分ばかりが印象に残るのね。
男:例えば?
女:そうね、わめく、アル中、わがまま、額の深い皺、猫背なんかで良いところがないわね。
  観ていても、老いていく者の惨めさや、教養の無い身勝手な振る舞いの方が強烈な感覚としてあるわね。
男:それが、現実のエディット・ピアフに近いようだけど。
女:でも、みんなの心に響く歌い手よ。
   歌手としてのエディットが歌う楽しさがないのね。
  歌によって人を喜ばせたり、泣かせることって、すごく 歌手としての生きがいでしょ。
  この描き方では、歌う楽しさよりも、歳をとることや病気なんかの、そう人生の惨めさを強く感じるのね。
男:そうか、舞台の華やかさや恋する乙女の輝きはまったくないね。
  でも、それが監督:オリヴィエ・ダアンの狙いじゃないのかな。
  よくある貧困から、のし上がった歌手の出世物語でなくて、栄光の陰はこんなものだと一つの部分を掘り下げて捉えたらこうなるんじゃないの。
女:確かに、一部分はそうかも知れないけど、私にはフランス文化の中でのシャンソンに対する思い入れもあるのよ。
  そう、エディット・ピアフやその後にでてきたシャルル・アズナブールやイヴ・モンタンが歌う鼻にかかったフランス語と「シャンソンの品格」ね。

  1960年代のアメリカのロック・ミュージックにはない落ち着きと文化を、シャンソンは与えてくれたわ。
男:それが、マイナスの部分ばかりのこの映画では壊されたってことかい。
女:そうよ、マリオン・コティヤールの必死の熱演はそれとして認めるけど、シャンソンの「愛の讃歌」を知ったのは、原曲のエディット・ピアフの歌よりも、越路吹雪さんが堂々と歌う日本語の方が先だったし、シャンソン歌手というと石井好子さんや美輪明宏さん(今の金髪ではない頃の)なんかのイメージから、フランスの芸術と文化が感じられたのね。
男:この映画で描かれるエディット・ピアフは生の人間の香りが強すぎて、きみのイメージに合わなかったってことか。
女:フランスに住んでいる人には、多分、日本人のそんな思い入れを理解して頂戴といっても無理とは分かっていても、歌う楽しさをもっととり入れて欲しかったわ。
  それと、回想でアメリカ公演での話が飛び飛びに挿入されているのと、エディット・ピアフの周りの人たち、クラブの経営者や音楽関係者とが入り組んでいて、どの人が誰だか区別できないのもいやね。
男:きみもそう感じたんだ。マレーネ・デートリッヒはともかく、外人の顔は本当に区別できないね!
  似たような顔で、チョットだけ出てすぐにいなくなるので、見分けがつかなかった。
女:でも、エディット・ピアフのあの広いヒタイと皺は、目立ちすぎよ。特にいやね。
男:しかたないよ。きみももう少ししたら、ああなるかも。
女:いいえ、私は歳をとらないから、そうはならないの!
男:エッ?そんな、無茶な...

ついでながら、私は、この中で歌われる「愛の讃歌」「ばら色の人生」のほかに「パダン・パダン」も好きな曲です。
エディット・ピアフは高齢者には有名なようで、観客には、かなり年齢の高い方たちが目立ちます。

マリオン・コティヤールが出ていたという;「ロング・エンゲージメント

 


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