2007年 9月の映画・演劇 評論

2007年

 さらば、ベルリン (白黒)

あらすじ:第二次世界大戦がドイツの降伏で終わり、アメリカ・ソ連などの首脳がベルリン郊外のボツダムで戦後処理の会談を開いていた。アメリカ人記者のジェイク(ジョージ・クルーニー)も取材にやって来たが、ベルリンは以前彼が住んでいた思い出の地でもあった。ジェイクの運転手として付けられたタリー伍長(トビー・マグワイア)は、戦後の混乱に乗じてソ連軍とも裏取引をする汚い兵士だったが、ボツダムの川で10万マルクを服に隠した状態で殺されていた。しかし、アメリカ政府は1兵士の死を闇に葬ろうとする。正義感に強いジェイクが事件の真実に迫ると、そこにはジェイクの昔の愛人で今は娼婦となっているレーナ(ケイト・ブランシェット)の悲しい秘密も隠されていた。過酷な戦争を生き延べなければならなかった無力な女性の過去が。。。

稚拙な脚本と、軍服の似合わない男ではうんざり
 あの偉大な名作「カサブランカ」や「第三の男」を真似して、第二次世界大戦後のドイツ・ベルリンを背景にミステリーも含んだ複雑な男女関係を描くことに挑んだらしい。

 勝手に挑んで、自宅で発表会をやるならそれでかまわ無いが、劇場で公開してお金を取るなら、もっとチャンとした物にして欲しい。

 川で死んでたタリー伍長の存在や、ロケット開発に携わっていた人間など、その場で解決できるのに、何か訳ありって感じで後まで引張、結局理由が分からない。
大体、片腕を折られたのに、ジープが楽に運転できるって所から、ジープはオートマチック車ではないよ突込みが入る。このあたりから、ひどい話とは予感できた。
それにしても、必死で守ってきたレーナの夫の余りにもあっけない殺され方やアメリカ軍内部の抗争も、恋愛だけでは、「第三の男」に近づけないのでミステリーの一部として、適当に加えてみましたでは、観客を馬鹿にした展開だ。
 
 レーナがここまでして支えた夫の存在、生きるために止むをえず選んだ娼婦の手段が上滑りしている。
それは、男女の浮気の対象としての、ジョージ・クルーニーが愛にのめりこんだ演技ができず、正義感に溢れて仕事に熱心に取り組んでいる状況を作り出せないからでもある。
ケイト・ブランシェットが、白黒の画面を上手く活かして、影のある演技をしているのと比べると、極端に差がありすぎた。
ジョージ・クルーニーは単にカッコをつけているだけしかみえない。
観終わっての思いは、この映画は、男性の方から描くのではなくて、女性であるレーナを主題に据えたら、また観られたようだ。

 またまた指摘するが、どうして感動的と盛り上げる方法に「雨」を中途半端に入れたがるのか。
「雨」を使ってしか演出効果が期待できないと思っているのか。多くの平凡な映画の踏襲では、ダメだ。

 それにしても、1940年代の雰囲気を出すためにワザワザ白黒映画にしたのでは能が無い。
当時の映画は、全編カラーにできない時代であっただけで、特に意識的に白黒フィルムを使った訳ではない。
今の映画なら、時代は40年代でも男女の情感やセットもカラーで表現は可能だ。
 すべては、監督:スティーブン・ソダバーグの責任ではある。

 主題となるべき、ミステリーもきれいに謎解きが欲しい!

ケイト・ブランシェットなら「バベル」

いつもカッコをつけているジョージ・クルーニーの;「シリアナ」「ディボース・ショー」

 ミス・ポター

あらすじ:1900年代始めのイギリス。女性が仕事をするなんてことはありえず、両親が決めた男と結婚するのがあたりまえの上流社会に暮らす、ビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガー)は、ウサギやアヒルたちの絵本を描くことが大好きで、親がすすめる縁談を断り、なんとかアーティストとして自立したいと思い、いろいろな出版会社を巡っていた。そこで、編集者のノーマン・ウォーン(ユアン・マクレガー)と出会い、彼の協力で、青い服を着たウサギ「ピーター・ラビット」の絵本が出版された。「ピーター・ラビット」はベスト・セラーとなり、続編も好評でポターはアーティストとして認められ、両親が反対する身分違いのノーマンとの結婚を目前にしていた。しかし、ノーマンの突然の病死。失意のまま、ロンドンから北の「湖水地方」に住居を移したポターに、今度は美しい湖水地方の乱開発の嵐が襲う。ポターはピーター・ラビットの故郷を守れるか...

激しさは無いけど、ほのぼの感に溢れている
 世界中で愛されている「ピーター・ラビット」の女性作者、ビアトリクス・ポターの物語だ。
「ピーター・ラビット」が出版されてから、もう100年以上が経つが、確かにその絵本は、今も色褪せずに、しっかりと生きている。

 ちょっとばかり恥ずかしそうなレニー・ゼルウィガーの表情が、当時のポターを充分に再現させてくれる。
彼女には、ガンガン活躍する女性よりも、どこか気の弱い感じの役柄があっているようだ。

 イギリスだけでなく、日本にも社会階級制度が残っていたのは、そんなに古いことではなかったことも思い出させる。
上流社会の拘束、自由な恋愛が許されない時代、でも、恋は障害があるからなおさら燃えるという事実。
また、恋人の死により、悲劇の主人公になれるという逆説な喜び。

 ストーリーとしては、王道を歩む作りであるが、ピーターやアヒルが動いたりして楽しい。
ノーマンの姉で独身主義者のミリーを演じたエミリー・ワトソンの存在も光る。
また、今はイギリスの観光地として有名な「湖水地方」の自然が、このような形で守られた事実は大変に興味深い。

 丁寧な作りときれいな風景は、ポターの絵本の意図を表していた。

レニー・ゼルウィガーがでている; 「シンデレラマン」、「コールドマウンテン」

ちなみに、イギリスのロンドンには、私も行っています;「駆け足で回ったヨーロッパ −イギリス編ー」

 

 オフサイド・ガールズ (イラン映画)

あらすじ:宗教上の戒律が厳しく、女性が外では男性に肌を見せてはいけない、また女性は競技場で男性のスポーツを観戦してはいけないなどの規律があるイラン。2006年ドイツで開かれるサッカー・ワールド大会の出場権をかけた試合が首都テヘランで催されるがこれも女性の入場は禁止だ。しかし、女性であっても、テレビにはない現場の臨場感を味わいたいと思うのは当然の気持ち。だけど、女性は入場できない。そこで、考えたのが「男装」だ。だが、ゲートには田舎からも駆り出された警備の兵隊がいて、見つかり捕まってしまう。他にも同じ気持ちの女性がいて、スタジアムの側にまとめて拘留される。壁を隔てて聞こえてくる観客のどよめき。サッカーに勝ったイランだけど、彼女たちはどうなるのか。。。

ゆるやかな笑いのなかに伝わってくる体制批判
 イランの監督:ジャファル・パナヒの作品だ。
俳優は、素人を使い、バックのサッカーの試合は、本物だけど映画では、雰囲気が伝えられるだけで、競技の中継的なシーンはない。
ちなみに、この作品は、本国のイランでは上映が禁止されているとのこと。

 本当に男装してスタジアムに紛れ込む、熱狂的な女性のサッカー・ファンもいるだろうとは思えるが、これは創作だ。

 女性を守るといいながら、女性の自由を奪っている、男性中心の規律に対する批判が、笑いの中から伝わってくる。
どうして、イランの女性というだけで、日本女性ならイランで開催されても問題なく観られるサッカーの試合をスタジアムで味わうことができないのか。
確かに、おかしな規律です。

その理不尽さを追求する都会暮らしで口の達者な女性陣と、説明する田舎からでてきた古いタイプの兵士の存在も面白い。
男性みたいな女性、兵隊に化ける子、やっぱり古い思想をのこした娘など多様な背景が僅かな描写で適格に描きだされていて飽きさせない。
トイレの話は、女性の貞操を大げさに守る兵隊の純粋さがうまく表現できていた。

 映画の中で、たびたび自由の国の例として登場する日本だけど、当たり前となっている自由は、無くなって初めて気がつくことを、逆に教えてくれた。

 

 HERO

あらすじ:最終学歴が中学卒業で、スーツを着ない、通販での買い物が大好きな異色の検事 久利生公平(くりゅうこうへい)(木村拓哉)が、沖縄や山口の勤務を経て、6年ぶりに古巣の東京地検・城西支部に戻ってきた。事件の大小に関係なく信実を追求する久利生と彼を補佐する生真面目な検察事務官 雨宮舞子(松たか子)が担当することになったのは、同僚の芝山検事(阿部寛)が起訴した、容疑者も犯行を認めている簡単な障害致死事件だった。しかし、公判で容疑者は、犯行を否認し自白を警察に強制されたと主張する。凄腕弁護士 蒲生(松本幸四郎)の攻勢にあい、再び証拠かために、韓国まで出かける久利生と雨宮。その裏には、贈収賄疑惑の大物政治家 花岡(森田一義=タモリ)のアリバイ工作が絡んでいた。窮地に追い込まれた久利生を仲間は救えるのか。。。

女:結末は想像できるけど、面白くなっていたわね!
男:フジテレビで放映された番組の映画版だ。
女:2001年に3ヶ月ぐらい放映されて、去年は、中井貴一もでたスペシャル版も見たわよ。
男:検事といえば、本当に、裁判官と並ぶ法の番人としての固さが特徴だけど、この久利生検事は、事務所でもスーツは着ないで、茶色のダウンウエアやジーンズで取調べをして、またテレビ通販での買い物が好きという設定は良かったね。
女:それと、小さな事件でも、手を抜かないで取り組むという基本姿勢がテレビでも高視聴率になっていたようね。
男:そうだね。みんな、検事になった最初は、この久利生のように、1つ1つの事件を何度も現場に足を運んで、丁寧に調査していたのが、いつの間にか膨大な事件数と組織での出世欲などから、当初の信念が無くなってどこかで自分に妥協し事務的に処理をしてしまうんだよ。
  会社勤めならそれも仕方ないといえるけど、法をあつかう検事には、出世なんかで信念を変えて欲しくないという一般の気持ちが久利生には託されているんだ。
女:どんなささいな事件でもその裏には、起訴状の文章や証拠の記録だけでは表されていない人間の感情があるってことね。
  警察や検事、そして判事にはそこまで汲み取って欲しいわね。
男:そのあたりの主張がちゃんと映像化されている。
女:犯罪捜査ばかりだと、固すぎて飽きるところを、通販グッズで程よく息抜きも考えてるのね。
  キムタクも長いセリフに負けないで良い感じでやっていたわよ。 素敵よ

男:松たか子とのやり取りは、二人とも実に自然だね。
女:いままでも、テレビの番組でキムタクと松たか子は色々と共演しているから、そこらはうまく息があってるのね。
男:おれは、「武士の一分」での木村拓哉の演技は評価できなかったけど、この「HERO」の木村拓哉の伸び伸びとした演技は買えるよ。
女:そういえば、松たか子も、キムタクと同じように山田洋次監督の「隠し剣 鬼の爪」にでてたわね。
男:泣いたり叫んだりするオーバーな演技は、印象に残るけど、別に難しい物ではない。
  普通の自然な感じが観客に伝わるようになってこそ、真の俳優だね。
  山田監督や香港の映画出演を通じて、段々と木村拓哉にも何が演技か分かってきたのかな。
女:厳しい見方をしていたのね。
  私は、端正なキムタクと韓国のイ・ビョンホンがでているだけで、もう幸せよ。

  他では、特徴のある検事達の部屋のセットもテレビと同じだったでしょ。
男:ウン、あの四角い間取はいいアイデアだね。
  上からの俯瞰映像も面白い。
  それから、何でもそろえるバーテンダー(田中要次) は、いつも少ししか出番が無いけど良い味をだしているね。
女:黒幕政治家のタモリはどうだった?
男:まだ、まだ大物政治家にはなれないね。裁判所でも、オタオタしている。基本的にお笑いの芸人だ。
  それに比べると裁判長役の岸部一徳は冷静な感じがでていて上手い。
女:彼は、悪人でもいいおじさんでも、何でもできて、話を締めてくれるので、監督としては信頼できるんでしょね。
  最近は、 あちらこちらで引っ張りだこよ。

男:それは、俺に似ているね。
  俺だって、色々とできるせいか、今も、あちらこちらで、引っ張りだこだよ。
女:あなたの場合は、単にお金をばらまくのでスポンサーとして呼ばれているだけよ!
男:エッ! そんなッ?!

木村拓哉の:「武士の一分」

同じく山田洋次監督の松たか子が出ている:「隠し剣 鬼の爪」

 


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