2007年 4月の映画・演劇 評論

2007年

 クイーン

あらすじ:1997年8月、フランスはパリでイギリスのダイアナ元皇太子妃が交通事故で亡くなった。以前から離婚したダイアナとの確執が噂されていたエリザベス女王(ヘレン・ミレン)は皇室から出て行ったダイアナの死はもう皇室には関係のない民間人の出来事として、公式のコメントも出さず、葬儀にも深い関係を持たない積りであった。しかし、イギリスだけでなく、世界中から寄せられる「悲劇のプリンセス」に対する人々の気持ちは、ダイアナの死に冷たいイギリス皇室への批難となっていった。イギリスの国と人民のために50年以上も女王としての生涯を捧げてきたエリザベスの心の中で新しい動きに対応する感覚が薄れていたのか。若いブレア首相(マイケル・シーン)の意見も取り入れる必要があるのか。クイーンとして悩むエリザベスの進む道は。。。

ありそうだと思わせる出来栄えだ
 あのどこと無く寂しさを漂わせていたダイナア妃が、追っかけにあい交通事故死してから、もう10年が過ぎるのか。
月日の経つのが実に早い。

 私が抱いているダイアナ妃のイメージも、チャールズ皇太子と結婚して、二人の子供が出来たのに、昔から皇太子には好きな愛人がいたという余りにも酷い仕打ちを受けた「悲劇」のヒロインであり、またその最後がパパラッチ(追っかけ)のせいでの事故死では、同情からも、いくらもう皇室とは関係ないといっても、皇室としての対応は当然あっていいと思う。

 しかし、伝統ある皇室には皇室としての今までのやり方があり意見がある。世間が伝えるダイアナとは違った面も知っている。
たとえ多くの民衆が望んでも違う方向をとることもある。
その悩みを威厳と品格をもってヘレン・ミレンが上手に演じている。

 いつも公式の場で見せているエレガントだけでない女王の私生活の雰囲気を、多分そうだろうと思わせるまでだしている。
アカデミー賞の最優秀主演女優賞を取ったのも納得がいく。
また、彼女の演技もさることながら、衣裳やスカーフなど小物の扱い方のうまさにもよる部分が大きい。

 製作は、イギリス・フランス・イタリアの合作である点にも注目だ。

  日本の皇室を題材にした話は日本ではどこと無くタブーとなっていて、雅子皇太子妃の健康問題も詳細がよくわからない。
日本のマスコミや映画関係では絶対に取り上げられない素材を映画化したことも評価したい。

 気分転換といいながら、余り責任感のないフィリップ殿下に追われる鹿と女王の重責が重なりあう挿話も効果があった。

 でも、女王が自分で自動車を運転するのは本当かな?

 自慢ですが、去年のヨーロッパ旅行でロンドンもチョコト見ていて、バッキンガム宮殿も懐かしい。

 ツォツィ

あらすじ:南アフリカのヨハネスブルグ。公式には白人と黒人との人種差別(アパルトヘイト)は無くなっても、貧富の差はひどく、またエイズも蔓延していた。そのスラム街の土管の中で育ち、窃盗や恐喝で暮らす3人の若者の仲間を引き連れるボス(プレスリー・チュエニヤハエ)はツォツィ(ワル=不良)と呼ばれていた。いつものように金持ちの黒人女性の車を襲い奪ったが、その車の中には産まれてまもない赤ん坊がいた。赤ん坊の泣き声は、両親との寂しい思い出しかないツォツィの心の中に忘れようとしていた子供時代を呼び戻した。なんとか赤ん坊を育てようとするツォツィだったが、仲間とは溝ができる。若いツォツィの人生が変わりだす。。。

自分が得られなかった両親の愛を求める気持ちが伝わる
 2006年のアカデミー賞 外国語映画賞を取った南アフリカの映画だ。

 よく練られた場面構成と話の流れが上手く繋がっていて、素直な気持ちのまま最後まで引っ張られる。
冒頭の暴力シーンで、冷酷で無感情のツォツィの設定を表現し、サイコロ博打で足し算もできない貧民街の住人の環境を簡潔に表すとは、たいしたものだ。

 エイズに冒された母親、暴力を振るう父親からの逃亡も生きるための手段として止む無くとった行動と理解できる。
命の価値など認めていなかった冷酷な青年が、産まれたばかりの赤ん坊によって自分には無かった親としての「愛」を傾ける気持ちが充分に伝わってくる。

 オッパイを与えるシングル・マザーの優しい声に安らぎを見つけるシーンは感動ものだ。
男が持つ闘争心との対極にある慰めを、見事にとらえている。

 貧富の差やエイズなどの社会批判よりも、寂しく育った男の子の両親に対する愛情を求める気持ちが溢れている映画だった。
音楽もアフリカ的な感覚を伝えていていい。

でも、「ツォツィ」は発音も書き字としても面倒だ。

 ブラッド・ダイヤモンド

あらすじ:1999年。内戦が続く西アフリカの海に面した国、シェラレオネ。漁師のソロモン(ジャイモン・フンスー)の家族は勉強の好きな息子を中心に貧しいけれど幸せな日々を送っていた。しかし、反政府軍に村を襲われ、ソロモンは愛する家族と生き別れになり、山の中の反政府軍の資金源となっているダイヤモンドの採掘場に連行された。そこで見つけた100カラット余りのピンクのダイヤを隠したとき、政府軍と反政府軍の戦闘に巻き込まれ投獄される。その拘置所にはダイヤの密輸で捕まった傭兵上がりのダニー・アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)もいた。巨大なダイヤに託された家族との再会・闇の世界からの脱出の夢は、ダイヤ取引の実態を暴くジャーナリスト(ジェニファー・コネリー)も絡んで進んでいく。。。

女:ちっぽけなダイヤが多くの人の運命を変えるのね!
男:そうだね。ダイヤとしての100カラットは大きいけど、石として見ると小さいものだね。
  そんなダイヤの持つ不思議な価値をうまくアクションと結びつけた。
女:ダイヤの原産地のアフリカでは単なる小石でも、ヨーロッパの白人世界では、最高の宝石となってまたお金も動くのね。
男:その、ダイヤの高価格を維持するために、市場にでてくる量を一部の組織がコントロールしていることは知られている話だね。
女:そして、アフリカでは各地で部族間の抗争や内戦も随分と起きているのね。
男:日本のマスコミはアフリカという遠くの世界の出来事と日本人が絡んでいないので、あまり報道していないけど、コンゴからアンゴラ、ソマリヤ、ルワンダなどアフリカの殆どの地域で紛争があって、難民が続出してる。悲しい現実だね。
女:この映画でもでてくる「少年兵」は事実でしょ。
男:うん、子供は大人より「洗脳」し易いから、戦闘兵として養成している。
  話題となっているね。
女:洗脳された息子が父親に銃を向けるシーンは、もしかしたら殺しちゃうかと、ハラハラしちゃった。
男:僅かな間に、子供の性格を変えて、人を殺すことに罪の意識をなくさせた大人のひどさを追及していたね。
女:この映画に出てくる人は、自分の利益のために他の人を利用しているけど、そうでない人もいるのよね。
男:それは、途中ででてくる学校の話で言いたかったようだね。
  紛争をなくし、長い眼でアフリカの将来を考えた教育は本当に必要だ。
女:それは、日本でも言えるでしょ。
男:そうだね。

女:演技としては、ディカプリオは良かったわよ。
男:このところ、「ディパーテッド」でも悪役だったので、しっかりと役どころを捉えたのかな。
女:雑誌記者のジェニファー・コネリーの太い眉毛をみていたら、昔のデミ・ムーアを思い出させるわね。
男:「ゴースト/ニューヨークの幻」の頃だね。
  でも、ジェニファーには、アフリカに入り込んだんだから、もっとスクープを狙う野心に燃えたバリバリとした動きのある演技を期待したかったね。

女: 色取り としては、活躍の場が少なかったわね。
   全体としては、ちょっとばかり長い映画(143分)だったけど、日本の平和の大切が分かったわ。
男:そうだね。国内で争うことのない日本を世界がまねてくれたらいいのにね。
女:ダイヤよりも平和よ!
男:そう、君にあげたダイヤもアフリカ難民救済に寄付する?
女:それは、別な話!
男:ヤッバリ。

ディカプリオが良かった;「ディパーテッド」

 あかね空

あらすじ:江戸は深川の表通りで豆腐屋を営む相州屋の夫婦(石橋蓮司、岩下志麻)には、幼い一人息子がいたが、ある日迷子になり行方不明となる。それから20年、深川の裏長屋に京都から豆腐屋を開くことを夢見て永吉(内野聖陽=うちのまさあき)がやってきた。同じ長屋に住む面倒見のいい娘おふみ(中谷美紀)と恋仲になり二人は所帯を持つ。苦労の結果3人の子供と共に相州屋の店を借り受けて商いをするまでになった。しかし、長男の栄太郎(武田航平)は賭場にいりびたり、永吉の店を狙う同業の平田屋(中村梅雀)と賭場を仕切る傳蔵親分(内野聖陽 二役)の罠にかかる。永吉が馬にあたって亡くなり、おふみの家族に降りかかる浅間山の噴火の灰と危機はどうなるのか。。。

永吉と傳蔵をつなぐ糸が不明確だ
  京都から出てきた永吉がまるで、行方不明になった息子のようなもって行き方の、で出しには困惑する。
いくら、映画とはいえ、幼子が江戸から京都まで行くとは思えないからだ。
でも、これは最後には、杞憂と分かるが、この流れでも分かるように、話の纏め方が良くない。

 あっという間に過ぎていく20年や40年間の省略が映画を面白くなくさせた。
裏長屋から夫婦が苦労して表通りへ出て行く話、おふみが長男を溺愛することになった火傷の話などが、後からの説明では、衝撃も薄くなる。

 ここは、二人が共に額に汗をし懸命に働いた姿を見せ、単に仲の良い順調な暮らしではなく、そこには夫婦間の溝もあり、成功するために払った犠牲も大きかったことをきちんと描いて欲しかった。

 江戸時代の下町のほのぼのとした人情が、一番の悪人である傳蔵までが、皆んな「善い人」という強引な感じの結末では、ただ「そんなバカな!」という感想で心に残らない。

 豆腐という庶民の食べ物に注目して、京都と江戸の違いは興味を引くが、売れない京都の豆腐がどうして売れるようになったのかも分かり難い。
そして、博徒とかたぎとの対比をもっと明らかにした構成にするとメリハリがついたようだ。

観ていても、豆腐の上で咳をするのは、かなり気になるシーンだった。

中谷美紀が良かった;「嫌われ松子の一生」


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