2006年 7月の映画・演劇 評論

2006年

  日本沈没

あらすじ:日本列島の各地で地震が多発し、火山活動も激しくなってきた。深海潜水艇の操縦士、小野寺(草g剛)も地震災害にあい、危ないところをレスキュー隊の阿部玲子(柴咲コウ)に救われる。地震研究家、田所(豊川悦司)の試算では、1年以内に日本列島が太平洋に沈む。危機管理の鷹森大臣(大地真央)を中心に日本国民の海外移住計画が進む。しかし、列島の沈没が始まる。どうなる、日本。。。

なまぬるい危機しか描けない映像が退屈!  
 作り物(フィクション)とはいえ、脚本:加藤正人と監督:樋口真嗣の罪は大きい。
日本列島が消滅し、日本国民 1億2千万人もの生命が危機にさらされると言う、いい題材を貰ったのに、緊迫感がまったく欠如した作品にしてしまった。

 男女の愛から始まり、家族の絆、国民の連帯感、隣国の対応など、2時間以上もかければ、充分に描ききれるはずだが、焦点の定まらない火山爆発と中途半端な建物崩壊の特殊撮影では観ている人に訴えるものが無い。

 国家存亡となる日本列島の沈没に対するイメージが、政府の対応を勉強していない脚本の段階から不足していたのではないか。

 この列島で育まれた文化・歴史に対しても認識が甘い。
一部の文化財の移転など表面だけの扱いでは、移すことができず、失ってしまう自然や莫大な財産。これらを後世に伝える事ができない哀しさがはっきりしない。
 
 また、たった一人の自己犠牲による、まるで第二次世界大戦の「特攻隊」の精神で爆薬を投下して日本を救うとは、今時分では理解できない。もっと科学的な解決策で列島を救って欲しかった。
さらに、 プレートの沈下が防げても、列島を取り巻く大きさから、その後の津波などの影響を考えれば、それからどうなったのかと突っ込まれる貧弱な設定で終わるのも問題だ。

  ダンス・オブ・ヴァンパイアミュージカル:帝国劇場)

あらすじ:吸血鬼を研究しているアブロンシウス教授(市村正親)と助手のアルフレート(泉見洋平)が雪深いトランシルバニアにたどりついた。ここの村人は夜を恐れ、皆んな「ニンニク」を身につけてる。近くにあるヴァンパイア城に住む伯爵(山口祐一郎)については、口を閉ざして話そうとしない。しかし、何も知らない宿屋の娘サラ(剱持たまき)は伯爵が催す舞踏会に誘われ城に行く。伯爵が吸血鬼であると見破ったアブロンシウス教授と助手が救出に向かうが夜が来る。。。

客席を巻き込んで、ロックの乗りの楽しい吸血鬼!  
 美女の首筋を噛んで、不死身のゾンビを増やしていく、あの吸血鬼たちが艶めかしく、しかし、激しく踊る、踊る。
基本となっているのは、映画「吸血鬼 ドラキュラ」でもお馴染みの、ニンニクと十字架に弱く、そして昼は寝ているヴァンパイア(吸血鬼)を退治しに行く話です。
でも、映画ほどの怖さはありません。笑いもあります。オリジナルはドイツのミュージカルです。

 何といっても、主演の山口裕一郎の存在がすごい!
出だしから、よく通る歌声で客席を魅了する。長身が舞台に映える。
吸血鬼としての不気味さが扮装と共に見事に一致している。
彼が踊るシーンはないけど、この作品は山口の新しい「十八番(オハコ)」に加えていい出来となっている。

 音楽もロック基調で、活気がある。
ともすれば、陰気で冴えない、夜の暗さばかりになる場面をミュージカルとして、ジム・スタインマン は盛り上げに成功した。(この、ジム・スタイマンは「フット・ルース」や「ストリート・オブ・ファイヤー」の音楽も手がけているとのこと。)
でも、セリフと歌詞が活かされるのは、訳詩が分かりやすくていいからだ。翻訳と訳詞を担当した竜 真知子の功績もある。

 人間としての究極の欲望「永遠の命」。でも、これを手に入れると「死にたいほどに退屈になる」。
この主張も、皮肉的に分かる。死があるからこそ生きている間の歓びが輝くのだ。

 宿屋の娘役の剱持たまきの手足の長さが生きているしなやかな踊りも、印象に残る。また伯爵の息子を演じた吉野圭吾、女中役の宮本裕子など、若い人たちも気持ちよく演じている。

 今回も補助椅子もでる超満員の客席を巻き込んで、まるでロック・コンサートのように楽しく仕上がっていた。
余り拍手のしすぎで、右手の指が痛くなっていました。

観るのでしたら:1階の後方の席がお勧めです。出演者がよく舞台から降りて、客席を回りますので。

ご参考までに:山口祐一郎が出ている「レ・ミゼラブル」

  親密すぎるうちあけ話(フランス映画)

あらすじ:父親の代からやっている小さな税理事務所を引き継いだウイリアム(ファブリス・ルキーニ)の元に突然人妻のアンア(サンドリーヌ・ボネール)が訪れ、一方的に夫婦間の悩みを話して帰って行った。同じ階にある精神科医と間違えたのだ。翌週もアンナはやってきて、ウイリアムが精神科医ではないと説明する機会もないうちに、また夫とのセックスの話をして帰ってしまった。暫くして、間違いを知ったアンナが怒って訪ねて来るが、アンナもウイリアムもどこか魅かれる気持ちがあり、カウンセリングの状況は続く。しかし、アンナの話はどこかおかしい。愛に傷ついた二人の行方は。。。

ちょっとサスペンス風でエロチックな大人の愛!  
 間違いから始まる恋愛物もかなりあるが、それが不自然でないので入り込める。
いくらなんでも、税理事務所と精神科の部屋を間違えるのはおかしいと思うが、長椅子などそこは上手く扱っている。

 他人の秘め事を知りたいと思う気持ちは誰にでもあるし、それをどこか影のあるいい女が勝手に話せば、いくら固い男でも、それからどうなるか、興味はそそられる。
特に、夫婦間のセックスならなおさらであり、精神科医でもないのに悪いことではあるとは知りつつも、もっと知りたくなるのは、ウイリアムでなくても当然だ。
間違いから始まった二人の関係であるが、この出会いをもとに、何となく不満な現状からの脱却のバネにしたい気持ちも、監督:パトリス・ルコントは丁寧に描いている。

 いつでもネクタイをしてスーツを着ている堅物の税理士にも、オモチャの趣味もあり、ダンスも踊るし、殻を破りたい夢もある。
女性にも、暗い自分を捨てて、明るい南の土地へ行きたい、バレエをやりたい夢がある。
でも、何かのきっかけが無ければ、踏み出せない。
挑戦したい気持ちを徐々に高めていく設定が、付き合っている内に変っていく二人の表情としていい演技であらわされている。
暗い感じから、明るくなるサンドリーヌは見ものだった。

 また、アンナのうちあけ話がどこまで本当なのか、気をもませる演出も憎い出来だ。
ウイリアムが本物の精神科医に相談して、金をとられるシーンなどの笑いもあり気分転換としていきている。
撮影も、大部分は事務所だけど、しっとりして飽きさせない。

 久し振りに大人の映画でした。

ご参考までに:サンドリーヌ・ボネールが出ている「灯台守の恋」もあります。

  ホワイト・プラネット

あらすじ:多くの生物、動物が生きている「北極圏」。しかし、その「白い世界」が地球温暖化でなくなろうとしている。
マイナス50度にもなる冬。北極熊の母親は穴の中で赤ちゃん熊を産み、春には外で狩を教える。大きな角をもったイッカク、ここに棲むアザラシやセイウチ。そして、夏にやってくる巨大なザトウクジラの群れ。地上ではカリブーの大群が危険を侵して、ツンドラを移動する。また、この北極の氷の下でも生命は育まれている。白い世界は寒さだけでなく、命の源なのだ。人間の都合で、他の生物が絶滅していいのか。。。

撮影の苦労がしのばれる映像!  
 北極熊の成長を中心にしてあるが、他の生物も丁寧に撮った映像だった。
熊の巣穴の中や、氷の下、暗い海中でのたこを追うシーンなど、光の当て方も、かなり苦労して撮影している。
ジャコウ牛のオス同士の頭突きでの闘いは、観ていても頭が痛くなる迫力だ。
 冷たいブリザードが吹き付ける冬場だけでなく、夏にはカリブーにたかる蚊など、ヘリコプターでの空からの撮影も含めて裏話だけでも、また別の映画にできそうだ。
広い北極圏の中で、対象の動物を見つけるだけでも大変な作業で、その上、撮影となるともう機材や野営設備も考えると、必死の覚悟が必要だ。

 そこまでしても、提起したい「地球温暖化問題」。
氷河の大きな氷が融けて海中に崩れ落ちるシーンを観ていると、本当に数十年後には、北極圏や南極の氷が無くなり、生態系が変ることが予想できる。
それだけでなく、海水面が上昇して、水没の危険性がある、太平洋の珊瑚でできた島々。
地球は人間が勝手に変えてしまっていいのか?
 生命に満ち溢れ、様々な動物・植物を育んできた地球。
大切なこの惑星をどうするか?
失われて行く物、変化していく自然は、地球の歴史では今までもあったことではある。
増殖する人類が地球を長持ちさせるためにできることは何か。
問題の提起は成功している。

ご参考までに;似たような「ディープ・ブルー」


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