2006年 6月の映画・演劇 評論

2006年


  初恋

あらすじ:時代は1968年。世間では日米安保闘争や学生運動が盛んな頃、女子高生の みすず(宮崎あおい)は、父親を亡くし、母と兄とは別に叔母の家に引き取られて寂しく暮らしていた。学校でも友人もなく、読書だけの孤独な日々だった。そんな時、兄:亮(宮崎将)の行きつけのジャズ喫茶に通う内に馴染みの客たちと打ち解けて笑いもでてくるようになった。その客の中で他の連中とは少し距離を置いている東大生:岸(小出恵介)に対して淡い恋心が芽生えていた。ある日、岸から現金強奪の話しを持かけられる。彼の期待に沿うようにバイクの練習、犯行予定地の下見と計画は進む。そして、12月10日、東京、府中で3億円強奪事件が起きる。。。

完全犯罪の結果にあわせて都合よく作りすぎた!  
 今では時効となってしまった実際の「3億円事件」の犯人が、実は女子高生だったとは、かなり奇抜な設定である。
3億円の強奪は、偽白バイに乗った偽警官一人によって実行され、遺留品も多く、また犯人のモンタージュ写真も公開され、すぐに犯人は捕まると世間はみていた。
しかし、警察は犯人を割り出すことができず、時効になった。
この事件は、3億円という高額がたった一人の実行犯によって奪われたこと、また誰も傷などをおっていないことなどから、長期に渡り世の中の関心をひきつけていた事件であった。

 犯人を「男性」に絞ったために、結果として完全犯罪になってしまったというアイデアはいいが、その犯人が18歳の女子高生ではかなり話しとしての無理が目立つ。
当時としては珍しい自動車の運転ができて、その上バイクも乗りこなせる未成年の女子高生は、私が警察官でも容疑者としては考えられない。
世間の盲点をついたつもりなら、もっと丁寧にこの部分を描いて欲しい。
映画ではこの部分の説明があっと言う間に流れてしまった。

 犯罪の動機は、「初恋」にあり、事件の方の結果は余り意味を持たないと言うかも知れないが、それにしては、「恋」の描き方も物足りない。
恋の持つ不安感、切なさや喜びの場面が少ない。空き別荘で確かめ合うだけの印象しか残らない。みすずが一人部屋で岸の訪問を待つ侘びしさが、充分に伝わってこない。
はかなく終わった「初恋」の挫折感が必要だ。
この編集では兄:亮の荒れた生活の方がかってしまい、観客の感情の中心が兄の方へ移ってしまう。

 それにしても、恵まれない家庭での少女の扱われかた、解決できないことは政治がらみとする、一般的で安易な展開もいただけない。
ご参考までに;恋心なら、台湾映画の「藍色夏恋」はお勧め。

  トリックー劇場版2−

あらすじ:怪しげな超常現象の謎を解いている教授:上田(阿部寛)の研究室に富毛村の青年が訪ねてきた。その青年の頼みは、「10年前に行方不明になった幼馴染の美沙子が筐神島(はこがみじま)にさらわれていて、殺されそうなので助けて出して欲しい」というものだった。助けてくれたら、村に伝わる秘宝をお礼としてくれるという。筐神島は、一夜にして巨大な石を浜辺から岬の上に浮遊させた霊能力者:筐神佐和子(片平なぎさ)とその信奉者が住んでいた。一人で行く勇気が無い上田は、売れない奇術師:山田奈緒子(仲間由紀恵)と共に筐神島へ向かうが、佐和子が起す奇跡はすごい。山田と上田に迫るピンチをどう切り抜けるか。。。

脈絡のない話しと、簡単なトリックでは、笑えない!  
 テレビの放映では大分話題となり、映画の前作も観て、心からは笑えないと批評した作品だけど、少しは進歩したかと期待を込めて観たが、あまり笑えなかった。

 まず、堅物の研究者:阿部寛と貧乳マジッシャンに扮した仲間由紀恵のボケと突っ込みのセリフのやり取りが充分にかみ合っていない。
それは、話がかなり雑に作られているからだ。
もっと、場面とトリックの謎を練ってくれないと、ダメだ。
箱の下に穴があいているとか、鏡を使った手は、解説される前に、多分、ソウだろうと推定できる。
これでは、目新しくない。
  それに製作者サイドの遊び心は「よろしくね!」を合言葉にしていたり、あちらこちらの張り紙や画面のバックに様々な形で出ていて、面白そうだけど、余りにも多くて、それらバックの全部を追いきれない。これは、DVD化した時にリプレイで観るマニヤの話題でしかない。

 一番分からないのは、テレビとの流れから入れたようで、仲間由紀恵の母親役の書道家:野際陽子の選挙と、刑事役の生瀬勝久の風呂のシーンが出てくるが、これが本編の話しと関連していないことだ。
撮影でも、阿部や仲間と野際や生瀬が一つの画面で絡み合うシーンもなく、まったく選挙と風呂の話しは、唐突に挿入されている。
ナンセンスな笑いをとるためだけの設定なら、不要であった。

参考までに: 前作「トリック」

  ミー&マイガール(ミュージカル) 帝国劇場

あらすじ:1930年頃のロンドン。名門の伯爵が亡くなった。伯爵の隠し子:ビル(井上芳雄)が下町のランベスにいることが分かり屋敷に連れてこられる。ビルは遺言執行人であるマリア公爵夫人(涼風真世)とジョン卿(村井国夫)の教育で徐々に貴族らしくなるがそれは、下町に住む恋人サリー(笹本玲奈)との別れを強制されることだった。財産目当ての公爵夫人の姪ジャッキー(純名りさ)の誘惑も激しい。ビルとサリーの愛の行方は。。。

フレシュな踊りが古い作品を蘇えらせる!  
 このミュージカル「ミー&マイガール」の初演は、今から約70年も前とのこと。20年前にブロードウェイでリバイバル上演され、日本でも宝塚などで上演されたので、タイトルは知っている。

 主役の井上芳雄が26歳、笹本玲奈が20歳。この二人の若さに合わせて踊りや、セリフも現代的になっているようだ。
中心となる タップ・ダンスは確かに若くなければできない動きをみせてくれて楽しいし、また井上のセリフもはっきりとしていていい。
音楽の方はどうしても、かなり古さを感じさせる、一本調子の旋律が多いけど、帝国劇場という大舞台を、主役の二人を始めとして、他の出演者も臆することもなく、伸び伸びと演じていて気持ちがいい。

 客席と舞台が一体となる「ランベス・ウォーク」の演出は、高校生が多かった、この日は特に観客と出演者を近づけていた。
ビルを誘惑する純名りさも今回は随分と大胆な下着姿で、頑張っている。
 セットも無駄のない流れで組み合わされていて、間延びしなかった。
一部は同じような内容の「マイ・フェァ・レディ」を思わせるが、これもパロディとして笑える。

 ビルがサリーの家を訪ねるシーンが少しばかり盛り上がりに欠けたが、今後の演出のメリハリに期待しよう。

参考までに: 開場前に劇場のロビーで「ランベス・ウォーク」の振り付けの講習がありますので、行く人はお見逃し無く。
ついでに:「マイ・フェア・レディ」

 嫌われ松子の一生

あらすじ:昭和22年生まれの松子(中谷美紀)には、病弱の妹がいて、父親(柄本明)の愛情も松子より妹に偏っていた。でも松子は、明るさが取り柄であった。中学校の教師として勤めていた23歳の時、生徒が窃盗事件を起し、学校を辞めることになる。それからの松子の人生は悲しいものだった。暴力を振るう作家の卵と同棲するが、その作家は自殺。彼の友人であった岡野(劇団ひとり)と不倫関係になるが、妻にばれて捨てられる。ソープ嬢になるがヒモ(武田真治)を殺して逃亡する。でも結局捕まり、刑務所暮らし。出所して、教え子のヤクザ:龍(伊勢谷友介)と同棲生活。またその生活も長くは続かず今度は龍が服役。一人暮らしで荒れる松子を待つ悲惨な結末は。。。

女:けられても、殴られても求め続ける愛がいとしいわね!
男:すごい内容の映画だね。
女:そうよ。お話しとしては、人を殺して、自分が殺されるまでの壮絶で不幸だらけの松子の53年間の人生な訳でしょう。
  でも、それが、「歌」と「花」によってうまく区切られて、憂鬱な気分にならないのが、よかったわ。
男:男の愛を求めて、いつも裏切られるという本当に暗い話しの連続だけど、「花」が出てくるので、ファンタステックなウキウキの気持ちに変えてくれる。
女:そのファンタジーな感じはディズニーも顔負けのCGの出来よ。
  それに、音楽が実に効果的に使われているわ。
男:♪「愛はバブル、愛はトラブル♪」って歌詞は劇場を出る頃には覚えてしまったね。
  五輪真弓の「恋人よ」は知っているけど、新しい曲もこの映画から流行っていきそうだ。
女:監督:中島哲也の前作の「下妻物語」はチョットばかり話しが軽そうだったので、観てないんだけど、この監督はいいんじゃない?
男:うん、手を抜いていない演出だったね。
   しっかりと隅々まで昭和の時代背景を押さえ、松子が最後に殺される設定は社会批判にもつながり、世の中を見渡している。
女:余分なものが無いでしょう。いろいろなシーンがみんな意味をもっているのね。
  だから、観ていても画面に引き込まれるのよ。
男:それにしても、主演の中谷美紀は今までと違った、女優生活を変える役柄だけど、この作品は自分でも記念になるいいできだ。
  撮影中は、監督と争いもあったようだけど、結果としてはいい監督と出合った。
女:出番は少ないけど、男優陣も個性的で良かったんじゃない。
男:松子の人生でかかわりあう設定のため、僅かなシーンしか出ていないけど、中でも劇団ひとりと床屋の荒川良々が特に目立ったね。
女:そうね、荒川良々の平凡でさえない感じはよくでていたわね。
男:テレビ画面だけで出ている片平なぎさも変った使われ方だったね。
女:深刻な話に時々、笑わせる場面をもってきているのね。
  この息抜きの切り替えのタイミングが活きているのよ。
男:後半での中谷美紀の太った姿は、後姿が多くて、顔など余り大写しのない撮影だったけど、笑ったね。
女:そうでしょう。「電車男のエルメス」美人でも太って歳をとれば、普通のオバサンになるのよ。
男:元々、普通のオバサンは歳をとるとどうなるのかなぁ。
女:何か言った?
男:いや、何も。。。

追記;中島哲也監督の「下妻物語」もこの後、テレビ放映されたので観ました。
   最初は深田恭子のロリータにはうんざりでしたが、ヤンキー役の土屋アンナのセリフの切れのよさに引き込まれ、そして、最後のドンデン返しには驚きです。
   この監督は観客の心を読み、その上をいく、かなり計算された作品が作れるようです。
   遊び心もあり、下妻物語」も中々面白い作品でした。


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