2003年 1月号 映画・演劇 評論


映 画

☆猟奇的な彼女  (韓国映画)

あらすじ: 気のいい大学生のキョヌ(チャ・テヒョン)は、電車の中で酔っ払ってゲロを吐き意識不明になった猟奇的な彼女(チョン・ジヒョン)を介抱する羽目になり、警察署に拘置されたりして散々な目にあう。容貌はキョヌの理想のタイプの彼女だけど、自己主張と正義感が強く、飲み物まで指図されるので余り付き合いは乗り気では無かったが、気の弱い(優しい?)彼は、彼女のペースに巻き込まれていく。でも死んでしまった前の彼を忘れなれない彼女は、キョヌとの交際も終わりにする。

ストーリーの展開がいい!   
 素直な感情がうまく表現されている。
猟奇的とは、韓国語で”ヨプキ”と発音され「少し変わっていて、いけてる」の意味だそうです。 日本語の題名から、怪奇映画か?と思って観ないで下さい。少し面白い恋愛映画です。
今の日本では無くなってきている、「年上の人を尊敬する」「援助交際はさせない」「電車では老人に席を譲る」などのキーワードが猟奇的な彼女を通じて主張されます。
韓国では、まだ儒教の影響が残っていて日本よりも、年配者を敬う気持ちは強いかと思っていましたが、若者はもう日本と同じ、自己中心の世界にあるようです。
作者は暴力的な彼女を介して逆説的に若者達に訴えています。
彼女が希望することを、何とかしてやろうと、いろいろと行動するチャ・テヒョンの包容力のある演技も違和感がありません。
学校でピアノを弾いている彼女に花を贈ったり、脱走兵が出てきたりして、メリハリが生きています。
悲恋で終わるのか、それともハッピーエンドになるのか。このもって行き方も上手い。

近頃の韓国映画は、活気があって面白い!

ご参考までに;韓国映画のラスト・プレゼント

☆ボーン・アイデンティティー

あらすじ: 嵐の地中海で漁船が漂流していた筋肉の逞しい青年(マット・ディモン)を助ける。青年は弾丸の傷を負っていたが、遭難前の記憶を失い、自分の名前も身元も分からなかった。身体に埋め込まれたスイスの銀行の口座番号を頼りに銀行に行き貸し金庫を開けるとそこには、彼の写真が貼られた異なった名前とパスポートが多数あった。パリの住所を手がかりにフランスへ向かう彼をCIAが殺しにくる。どうして彼がCIAに狙われるのか!? 自分は何者なのか?...

パリを舞台のミニ・クーパーでのカー・チェイスのアイデアは買えるが。
  でも、どこかで観たような.....。
冒頭シーンでお尻に隠されたスイスの銀行の口座番号が簡単に出てくるのは、少しばかり不満が残るが、主人公に記憶が無い以上、どこかにヒントが必要という事で我慢しよう。
壁をつたわって逃げるのも、建物から脱出するためには、よくある事だと、辛抱しよう。
アクション物には、カーチェイスが必要と監督が単純に考え、でも、乗用車やスポーツ・カーでは他のまねだと言われると思って、ミニ・クーパーにしたのは、チョッとは考えたのダナー。でも、対向車の隙間を縫って走るのは、他の映画”RONIN”を思い出した私がいけないのだと、言い聞かせよう。
どうして、殺人マシーンに改造されたのに、子供の為に暗殺計画に失敗したのかは、監督が強調しないのだから、あまり掘り下げないでいい事にしよう。
自分の身元(アイデンティティー)を追求・確認して、分かったからどうなるの?  も、もう考えない事にしよう。

ひとつだけ、すごいシーンがあった。それは、死んだ人間をクッションにして螺旋階段の上から、飛び降りながら、相手を撃つシーンです。ここは見もの。

☆壬生義士伝

あらすじ: 徳川幕府も終わろうとする頃、京都は新撰組の屯所・壬生(みぶ)。ここに東北の南部藩を脱藩して入隊を希望する剣の使い手・吉村貫一郎(中井貴一)の姿があった。吉村には田舎に残してきた愛する妻や子供があり、飢饉に苦しむ彼らの生活費を稼ぐ必要があったのだ。新撰組に入隊し徳川家の為に戦うが時代の波には勝てず、不本意ながら自害する。だが、家族への愛は残る。

クライマックスである、自害のシーンが一番面白くない!
 東北から京都の新撰組に出稼ぎにくるというアイデアや、死に場所を探して死ねない新撰組の仲間・佐藤浩市との対決から友情への変化など、面白くリズムもよい。
しかし、金の為に殺人部隊の新撰組に入隊したにもかかわらず、変なところで「武士の義」を持ち出し、「金」から「南部藩」や「徳川家」への奉公にもって行くところから話が退屈になる。
官軍との戦いに敗れ「南部藩」に逃げ込み、腹を切るまでのシーンにおいて、家族のために、まだまだ生きていたい気持ちの描写が弱すぎる。
それが中井貴一と三宅裕司の演技力の無さと言ってしまえば、終わりだけど。肝心のところが感動の出来になっていないのだ。また、このシーンが少しばかり長すぎた。
いっその事、戦で中井貴一が死んでしまった事にした方が良かったか?
前半はかなりの出来栄えだけに、残念であった。

それにしても、雨の中の決闘なんてありふれたパターンを使うのは、止めて欲しい。他にアイデアは無いのか?

ご参考までに;雨の決闘は「ロード・トゥ・パーディション」

演 劇

☆夫婦漫才  (芸術座)

あらすじ: 昭和20年の大阪。15歳の伸子(十朱幸代)は、これから戦地へ向かう幼馴染の伸郎(矢崎滋)と結ばれる。戦争が終わり、シベリアで捕虜になっていた伸郎が戻ってくる。生活は苦しかったが子供もでき、夫婦の会話はまるで漫才のように明るかった。軽い気持ちで始めた素人演芸は段々と人気がでてくる。子供を病気でなくしたり、寄席の先輩たちのイビリなどがあるが、賞をもらうまでになる。

二人の会話では、漫才の息があわない!
 正月の初笑いと期待していたのに、笑いが少ない。漫才コンビに必要な、「マ」と「つっこみ」のタイミングがあっていない。
原因は「大阪弁」にありそうだ。矢崎の大阪弁が笑いの調子を下げてしまう。そのために会話が弾まない。東京の芸術座で公演するなら、もう大阪漫才でなくて、東京弁の漫才にしたほうが、すっきりしたのではないか。
観ていて、笑いよりも、眠気を誘うテンポの悪さだ。それに、十朱のセリフと笑いの取り方は「浜木綿子」ににている。十朱と浜のどちらが先にやりだしたのか知らないが、独自性が欲しい。
芦屋雁平や曾我廼家文童などの会話の方が夫婦のやり取りよりズゥッーと面白のは残念である。
もっと、会話の訓練をしてから上演して。

映 画

☆運命の女

あらすじ: ニューヨーク郊外に住むコニー(ダイアン・レイン)は、運送会社を経営する夫エドワード(リチャード・ギア)と一人息子の三人で一見幸せそうな生活をしていた。しかし、強い風の日、足に怪我をしたコニーに親切にしてくれたフランス人の青年ポール(オリヴィエ・マルティネス)を知ってから彼女の生活はポールとの愛欲の日々に変わる。妻の不倫に気付いた夫は、ポールの部屋に乗り込み逆上してポールを殺してしまう。コニーとエドワードの仲はどうなるのか.....

女:中途半端なリチャード・ギアね!  イライラするわ!
男:ダイアン・レインとオリヴィエとは、かなり濃厚なセックス描写だったね。
女:妻に裏切られる役なんて、リチャード・ギアには似合わないのよ。
男:彼もいつまでも「プレティ・ウーマン」の時のような、カッコいい2枚目は続けられないと思って今までの役を変えたんじゃぁないかなー。
女:リチャードはそんなことに挑戦しなくていいの!  いつまでも2枚目でいいのよ!妻が不倫をしてオドオドするような情けない台本には出ないで欲しいわ!
男:それは、この映画ではリチャード・ギアの存在がないってことかい?
女:そうね。これは、ダイアン・レインとオリヴィエが主役の作品で、夫の役は別にリチャードでなくても良かったのよ。
夫・子供との満足した、でも平凡な生活に飽きた、主婦の浮気と簡単に割り切ってしまえばいいものを、未練たらしくグジュグジュするから、おもしろくないの!
男:そうだね。君が不満なのは、ストーリーがつまらなかったのが、最大の原因じゃないの?
家庭があっても、女として、愛人を持って上手く夫にばれないでやれば良いってことかい?
女:そうよ。家庭も失いたくないならそれなりにやることよ。
男:それって、君の本音?
女:な、なにを言っているの。これは映画の話よ。さぁ、飲んで。飲んで。今年も元気にね。
男:なにか、引っかかるけど.....

☆グレースと公爵

あらすじ: 1790年のパリはフランス革命の最中で時代が大きく変わろうとしていた。英国人でありながらフランスに移り王制の存続を支持する貴族グレース(ルーシー・ラッセル)は強い女性であった。今は革命派に担がれている元の愛人オルレアン公爵(ジャン・クロード・ドレフェス)との間に信条は違うが、互いの存在を認識し交流を続け、フランス貴族の逃亡にも、公爵は影から力を貸していた。
しかし、革命は激しくなり、ルイ16世は処刑され、オルレアン公爵にも身の危険が迫る....

絵画の中の人物が動き出す!  不思議な、しかし、新しい映画だ!
 パステル調に描かれたパリの絵。それは、当然、止まったまま。しかし、その絵に登場する人たちが動き、言葉を話し、生き生きと生活を始める。
出だしから眼を惹く。監督エリック・ロメールは81歳とのことだけど、何と斬新な描き方だ。
  殆どの舞台が、グレースの部屋や寝室など限られた場所で、グレースと公爵との会話だけど、飽きさせない二人の演技力は素晴らしい。
気丈なグレース役をルーシー・ラッセルが全身で表現している。正しく胸を震わせての熱演だ。しかし、処刑された首を見る時には、可憐に脅えている。このあたりの表現もうまい。
  多くのシーンはないけれど、フランス革命の騒動は十分に観ている人に伝わってくる。

☆シャーロット・グレイ

あらすじ: 1943年、第二次世界大戦の最中、イギリス。シャーロット(ケイト・ブランシェット)は看護婦でフランス語も堪能であった。あるパーティで出会った空軍パイロットと恋に落ちるが、彼はフランス上空で撃ち落され行方不明になる。彼の消息を確かめるために諜報員となり、フランスに潜入し現地の共産主義者のレジスタンスと共にドイツ軍と戦う。恋人を探す甘い気持ちが戦争によって厳しく変えられて行く。

ケイトのしっかりした演技が冴える!
冒頭の空軍パイロットにすぐ、べた惚れになっていくところは、少しばかり簡単な結びつきの設定であるが、 フランスに渡り現地レジスタンスとの関係からは、しっかりした出來になっている。
軽い気持ちで参加したナチス/ドイツ軍との戦闘は、現地連絡員の厳しい状況、共産主義者の息子を受け入れない古い気質の父親、両親を収容所に連れ去られた幼いユダヤの兄弟などの話をうまく絡ませ、単純に恋する看護婦だった女性が、家族の愛情そして母性にも目覚めて行く過程が、ケイト・ブランシェットを介して見事に描かれている。
  戦争という巨大な渦に巻き込まれ、生きて行く為には、身内の犠牲も止むをえない選択であることも理解できる。そして、政治は戦争中であっても、すでに戦後を考え、共産主義者を犠牲にするという行動をとることもあり得ることだ。
シャーロットが大戦後に選んだ相手もいい結末となっている。


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