2003年 10月号 映画・演劇 評論

☆十二夜  (ミュージカル)  帝国劇場

あらすじ: 中世のヨーロッパ。とある海辺の町に、嵐で船が難破し双子の兄妹の妹の方のヴァイオラ(大地真央)が流れ着いた。ヴァイオラは女であると危険なので、男装し町の貴族:オーシーノ公爵に小姓として仕える。公爵が想いを寄せるオリヴィア(愛華みれ)に接近している内にオリヴィアに惚れられてしまう。しかし、ヴァイオラは女、また彼女は公爵が好きになっている。そんな時、ヴァイオラにそっくりな兄のセバスチャンも町にやって来たから話は複雑になる。誰がヴァイオラでどちらがセバスチャンか。。。

大きな舞台を充分に使った、楽しく、可愛いミュージカルになった!

 いやーっ、実に大地真央の男装がキュートで可愛く人形みたいだ。華があり舞台に光が射す。
  宝塚出身の彼女に男装が似合うのは当然といえば、当然かも知れないけど、これは一見の価値がある。
また、狂言回しをする「猫」を演じている本田美奈子も上手い!  
おどけた表情、すりよる演技、そして、歌も申し分ない。細い身体から伸びのある高音が、広い帝国劇場に響き渡る。

  良く似た双子を象徴して使われる大きな鏡が幻想的な雰囲気を出し、上條恒彦に操り人形をやらせたり、二段で舞台を見せたりと、舞台中間部の活用も充分だ。
  ダンスも切れがよく振り付けがされていて、気持ちが良い。
男装から女性への衣装の早変りもあり、またウエディング・ドレスもありと女性の観客だけでなくとも楽しめる。
駄洒落の多用は、チョットばかり笑えないのもあったが、全体としては、仕合せな気分にしてくれる舞台でした。

☆陰陽師U

あらすじ: 時は平安京。京の都では高貴な人たちが肩、鼻、口などを噛み千切られて殺される事件が次々と起きていた。滅ぼされた出雲の国の領主(中井貴一)が怨念で息子を鬼に変え復讐をしていたのだ。 帝に仕える源博雅(伊藤英明)は陰陽師(野村萬斎)の力を借りて何とか鬼退治をしようとする。しかし、博雅が好意を寄せる日美子(深田恭子)も出雲に関係がありそうだ。。。

前作にも増して、オドロオドロした内容だけど、野村萬斎の活躍が少ない!

 「ヤマタの大蛇(おろち)」や「アマテラス  オオミカミ」の「天の岩戸」の神話を取り入れて鬼を作り出し、退治するが、肝心の陰陽師である野村萬斎が余りにも活躍していない。
  ゆったりと酒を飲んでばかりいるのが目立つ。
最後に女性に扮して舞うが、この舞が欲しいために、強引に「天の岩戸」伝説を映画にしたと言う無理さが、話を退屈にさせた。
  それにしても、配役が完全にミス・キャストではないか?
中井貴一は、どうしても「良い人」で悪人にはなり切れないし、深田恭子のセリフは棒読みだ。
彼女は単に、ふっくらとしていて、母親的な「天照大神」のイメージだけから選ばれているのか?  それなら、安易なキャステイングである。
中心になる日美子の弟が変身する鬼の演技が特に悪い。
まあ、若さ故っと言ってしまえばお終いだけど、もう少し監督も演技指導をすべきだろう。
  もっと、話の中間ぐらいに野村萬斎の踊りや、活躍を入れたら、少しは引き締まったかなー。

☆ジョニー・イングリッシュ

あらすじ: 英国秘密情報局に内勤するジョニー(ローワン・アトキンソン)は外で活躍するエージェントになることに憧れている。 彼の失敗で、多くのエージェントが死んでしまい、ただ一人残ったジョニーにエージェントとして英国の王冠警備の役目がくる。しかし、王冠はフランス人の富豪パスカルに盗まれてしまう。英国の王になろうとするパスカルの野望をジョニーは阻止できるか。。。

汚い笑いもあるが、皮肉もきいていて笑える!

「007のジェームズ・ボンド」を下書きにしたコメディで、正に「ビーン」で活躍したローワン・アトキンソンの出番という映画だ。
2つの似たようなビルがあれば、お約束通りに、間違えて侵入するし、まじめにやればやるほど、笑ってしまう ドジさが上手い。
  アクション物に必須条件のカーチェイスも「007と同じ「アストンマーチン」を使って行われるが、不法駐車のレッカー車を使うとは、面白いアイデアだった。
ウンチを題材にした臭い笑いは、嫌だけど、イギリスの王位継承制度やフランスとの関係も巧みに皮肉られていて、笑ってしまう。
イギリス全土に世界中の悪人を閉じ込め、イギリスを世界の刑務所にするのは、グローバル(地球的)に考えると、まじめな話としてもいけるかも?!
  ローワン・アトキンソンの敵との一人芸を見ていたら、先日みた「座頭市」で太鼓持ち(幇間)が座敷でしていた芸を思い出し、芸人の世界にも国境がないと感じた。

ご参考までに; 「座頭市」

☆永遠のマリア・カラス

あらすじ: 美貌と歌声でオペラ界に時代を作った天才歌手マリア・カラス(ファニー・アルダン)も50歳を過ぎ、もう声も出なくなり、また恋人の大富豪オナシスにも捨てられ、薬に溺れ寂しくパリに住んでいた。そんな時、以前から付き合いのあるプロデュサーに勧められ、若い頃録音した声を使い歌劇「カルメン」の映画を撮る。カラスの復帰があるのか。。。

美しく歳をとることの難しさが現れている!

 若い頃得た栄光や華やかさが大きければ大きい程、晩年での肉体の衰え、精神力の減少は身につまされる物となる。
普通の人であれば、平凡に歳を取ったと済まされるが、一度喝采を経験した人にしてみれば、まだまだ世間に通用したい、もう一度脚光を浴びたいと願うのは当然の気持ちだろう。
  その感情をファニー・アルダンは上手く表している。
今までの経験からくる自信。しかし、もしかしたら、一般大衆にはもう受けないかもしれないという不安。
高揚と恐れが交錯して話も纏まった出来になっている。
 50代頃の多くの人が抱く、「人生でもう一度華を咲かせたい」願望をきれいに取り上げてくれた。
また若い頃の録音を吹き替えに使い、世間は誤魔化せても、自分は偽れないと言う最後の仕上げもいい。
流れる「カルメン」の歌声にゆったりとした、いい時間を過ごすことができた。

☆S.W.A.T.

あらすじ: ロサンゼルス市警察のエリート特殊任務チームS.W.A.T.の一員であるストリート(コリン・ファレル)は銀行強盗制圧の任務で仲間と判断が違いチームを外される。しかし、また新チームが結成され復帰できる。そんな折、世界的な麻薬王が捕まり、ストリート達は彼の護送の任務に当るがこの麻薬王が「俺を逃げしてくれた奴に、1億ドル払う」とマスコミの前で宣言したから大変。元のS.W.A.T.メンバーが麻薬王を逃亡させようと攻撃してくる。。。

スカットしないS.W.A.T.!  先が読めるぜ!

 冒頭の仲間と別れるシーンから始まり、一時は閑職に追いやられ、また苦労して復帰する話はもう多分こうなるであろうと、後の話が推測できる。
現場の警官と警察署のトップとの軋轢も、今まで良く描かれた話で平凡である。
女性がS.W.A.T.の仲間として参加するが、存在理由が不明だ。
ストリートの恋人にする訳でもなく単なる彩りでは、話がアクション物にならない。
脚本家が、無理やりに男ばかりでは映画としてつまらないと考えて、女性を入れたのがみえみえで、観客に迎合する安易な態度が返って面白くなくしている。
  その中でも、小型ジェット機で橋に着陸するアイデアは評価できるが、多分離陸は橋桁等が邪魔になって出来ないだろうと、想像はつく。
でも、どうして、僅か1日ぐらいで、地下鉄を利用したり、ジェット機を奪ってなどの緻密な脱出作戦が立てられたのか、話の構成が荒すぎた。

☆座頭市

あらすじ: 盲目の按摩:座頭市(ビートたけし)は眼は見えないが優れた感覚を持ち、刀を仕込んだ朱塗りの杖を武器にして、悪人たちやヤクザ者をやっつける。でも、弱い人や困っている人の味方である。イカサマ賭博を見破り、賭場のヤクザの用心棒(浅野忠信)と闘うことになる。また、両親を盗賊に殺され仇討ちをしようとするわけアリの姉妹とも絡みがでてくる。金髪の座頭市の剣が光る...

女:細かなところまで手を加えた、面白い出来ね!

男:うん、  これは随分と見ごたえのある作品だった。
女:だから、前から見ましょうよって言っているのに、中々見ないんだから。
男:実は、俺は余り残酷な暴力物が好きでじゃないんだ。 
  それで、北野武の「その男、凶暴につき」や「BROTHER」 はもう、暴力ばかりで、うんざりの映画だったから、この「座頭市」も評判でも気乗りがしなかったんだ。

女:確かに今度も「血しぶき」は派手に使われているわね。
  でも、撮り方がいいから、残酷というよりは、小気味が いいといったら、ちょっと表現がおかしいかしら。
男:そうだね。残酷とか気持ちが悪くなる感覚は、その残虐なシーンを長く、繰り返しで見せたり、 アップしたりして強調するから引き起こされるけど、この「座頭市」では、一時的な流れの中でしか見せていない ので、かえって爽快感さえ感じるやり方だね。
女:切られた着物の下にも、ちゃんと刺青が丁寧に彫られていて、細かいので感心しちゃった。  
   それに、全体として、リズムがいいのよね。
  殺陣に始まり、畑の作業、家を建てるシーン、最後の下駄でのタップ ダンスには驚きと感激が一緒になったわ。
男:まったくそうだね。殺陣も今までの、突きや襖を使ったやり方も取り入れているけど、竹竿から割り裂いて 行くやり方、石灯篭も一斬りするシーンと斬新だった。
   踊りと言ったら、あだ討ち姉妹(?)の おせいが稽古する場面で子供の頃と現在をオバーラップさせるところは 涙がでたね。

女:全然悲しいとかいうところではないでしょう!  でも、北野武の演出に負けたのね!
  登場人物の今までが、ちゃんと分かりやすく映像で物語られているから、言葉の要らない、感情移入ができるのね。
男:それにしても、瞼に眼を描いたりして、やっばり「ビートたけし」とおもわせるお茶目さが息抜きになって いたよ。
女:そうね、見る前は「金髪の座頭市」もどうかと思ったけど、全然違和感は無かったわ。
男:監督・脚本・編集と北野武が一人でやっているようだけど、カメラ・殺陣・踊りなどで良いスタッフが 彼の周りに集まり出したと言う気がするね。
女:じゃ、次回の作品も期待ね。
男:それは「座頭イチ」が「座頭ニ」になるってこと?


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