●アスランとカガリとルナマリア:in ミネルバ MSデッキ
セイバーのコクピットでアスランがキーボードをたたいていた。
その様子をカガリが上から覗き込んできた。
「なあ、アスラン」
「なんだ」
アスランは顔をあげず答える。
「オーブに戻ったらMSに乗るか?」
「は?」
「お前の専用機作るか?」
アスランが顔を上げてカガリを見つめた。
そのとき別な声が聞こえた。
「ちょっとそこのあんた、そこで何やってんの?」
二人はその声のする方を見つめた。
そこにはオーブの赤の制服をきた女の子がいた。
「誰の許可をもらってこの機体に触っているの?」
女の子は物怖じもせずまくし立てる。
「この機体は私が乗ることになっているのよ」
アスランとカガリは顔を見合わせた。
「そう・・・なのか・・・デュランダル議長からアスランを貸してくれと言われたから
てっきりこの機体だと・・・」
カガリが戸惑いながら答えた。
「何ですって。そんなこと聞いてないわ。」
女の子は怒りを表面に表していった。
「この機体は、新型で、選ばれたザフトの赤にしか乗れない機体なのよ。
なのに、なんであんたが乗っているの?」
「そっか・・・だからアスラン、お前が乗るんだ」
カガリが妙に納得してアスランにいった。
アスランはアハハッと苦笑した。
「そうよ・・・赤の私・・・って。何であんたがザフトの赤なのよ」
「かつての・・・な」
カガリは懐かしむようにいった。
「君の名前は?」
今まで黙っていたアスランが女の子に聞いた。
「えっ・・・・ルナマリア・ホーク・・・」
「俺はアスラン・ザラ、彼女はカガリ・ユラ・アスハ代表だ。よろしく」
カガリもあわせてうなずき言った。
「そんなに文句を言う暇があれば、艦長にでも確認してきたらどうだ。」
「・・・・・・・」
ルナマリアはフンとして、離れていった。
【あとがき】
ルナマリアの性格がカガリに似ているという話を聞いて、もしかして彼女はイザーク女性版かとふと思ってしまいました。
ここでは、彼女はアスランのことを知らないことになっています。
(2004.9.3)
●アスランとカガリとルナマリア:in ミネルバ トレーニングルーム
「勝負?」
ミネルバのトレーニングルームで筋力トレーニングのマシンと戯れていたアスランは
カガリと顔を見合わせて言った。
「勝負って何の?」
カガリがルナマリアに向かって聞いた。
左手を腰にあて、ルナマリアはアスランの方を指差しながら言った。
「あなたに言っているんじゃないわ。この人にいっているの。」
相変わらず物怖じをせず堂々という姿はどこかの誰かに似ているなとアスランは思い
カガリの顔をみた。
「もちろんMSの操縦よ」
「わかっているって・・・で、どうする、アスラン?」
カガリは笑いながらアスランに声をかけた。
彼は黙ったままだった。
「セイバーのパイロットについて今はあなただと確かに聞いてきたわ。
でもあなたより私の方の腕が上だって証明すれば・・・」
「で、どうやってやるんだ?セイバーとザクウォーリアと実機で戦うのか?」
カガリが口を挟んで聞いてきた。
「カガリ」
アスランが戒めるような口調でいう。
「何馬鹿なこと言ってんのよ。もちろんシュミレーションに決まっているじゃない。
セイバーVSセイバーなの。」
まったくなんであんたの方いろいろ聞いてくるのよ・・・と小さくルナマリアがつぶやいた。
「ヘェー・・・シュミレーションか。私もやりた・・・」
「カガリ!」
今度は強い口調でアスランは言った。カガリはペロっと舌を出し小さく笑った。
まったく・・・とアスランは小さくつぶやいたあとルナマリアの方を向いた。
「君と勝負するつもりはない。」
「なっ、何で・・・」
ルナマリアは真っ赤な顔をして不満を表した。
「君があれに乗りたいのであれば、そう進言すればいいだろう。」
「だから・・・」
それはとっくにやっている・・・が取り合ってもらえなかった。ルナマリアは悔しそうに唇を噛む。
「MSの操縦は遊びじゃないんだ。わかっているだろう。勝負で勝ったり負けたりという話では
ないだろう。」
そういってアスランはトレーニングを再開した。
ルナマリアは気がおさまらなかった。
「逃げるの?」
ルナマリアはアスランの顔を覗き込んで言った。
「私に負けるのが怖いから逃げるの?」
アスランはムッとした。もともと負けず嫌いな性格だ。
その様子を見たカガリは笑いをこらえていた。
「逃げてなんかいない。」
「じゃあ、勝負を受けてよ。」
アスランは言葉に詰まった。
「やっぱり・・・負け・・・」
「わかった。・・・そのかわり1度きりだぞ。」
アスランが観念したように言った。
ルナマリアの顔がパァと輝いた。
「じゃあ、明日の10:00にシュミレーション室で待っているわ。じゃあね。」
そう言い残して彼女はトレーニングルームから出て行った。
笑いをこらえていたカガリがククッと声をたてて笑い出した。
チラッとアスランはカガリの方をみて頬をこづいた。
(2004.9.17)
●アスランとカガリとシンとルナマリア:in ミネルバ シュミレーションルームA
「へぇー」
カガリはミネルバの訓練室にあるシュミレーションマシンを覗き込んでいた。
アスランとルナマリアがそれぞれシートにつき準備を始めている。
「セイバーVSセイバーか・・・」
カガリが呟く。
「どうしてここにあなたがいるの?」
ルナマリアがカガリに気がついていつものように強い口調で言った。
「部外者は許可なく入れないわよ。」
ザフトでもないくせに・・・
「ああ、艦長の許可はとってあるさ。それにあいつだっているじゃないか。」
カガリはシンを指差した。
「ああ、シンはあなたと違って勝負の立会人よ!」
カガリをにらんで、ルナマリアはフンとモニターに顔を向け調整を再開した。
その立会人のシンはアスランと話をしていた。
「大丈夫ですか?使い方とかわかりますか?」
「ああ・・・たぶん。以前とはそうかわらないだろう。」
「えっと、ここでは仮想の宇宙空間でのシュミレーションとなります。
今回はL4の廃棄コロニー近くをイメージしてあります。」
「わかった。」
「では、準備が済んだら声をかけて下さい。」
そうして二人の戦いが始まった。
(2004.10.3)
●カガリとシン:in ミネルバ シュミレーションルーム
アスランとルナマリアの戦いが始まった。
その様子をコントロールルームで見ていたカガリがシンに声をかけた。
「お前・・・えっとシン・アスカだったっけ」
「はい」
「頼みがあるんだけれども」
「何ですか?」
「私もシュミレーションをしてみたいのだけれども。」
「は・・・はぁ?」
シンが驚きを通り越してあきれた顔をした。
カガリは少しシュンとして上目遣いに言った。
「だめか?」
「だめか・・・って。あなたはザフトの人間じゃないし。」
「かっ艦長の許可はもらったぞ」
カガリが必死で訴える。
シンが本当ですか・・・と、疑いの目を向けた。
「けど・・・あなたはナチュラルでしょう。」
「ナチュラルだからって馬鹿にするな。そりゃあお前の乗っているあの機体やセイバーや
あの娘ののっておりものは難しいのはわかる。普通のジンとかでいいから」
「けど・・・」
「だめか?」
再びカガリが上目遣いでシンを見つめた。
シンはため息をつく。
「それじゃあ、あいつ・・・アスランさんに頼めば・・・」
「だってあいつには内緒で艦長に許可をもらったんだ。」
シンは頭を抱えたくなってきた。
「それに・・・あいつはやらせてくれない。」
カガリは沈んだ声でいったあとうつむいた。
はあ・・・シンはもう一度、今度は大きくため息をついた。
この人は本当にオーブの代表か?まったくMSのシュミレーションをしたがるなんて。
「わかりました。こちらへ」
カガリがパッ、と顔をあげシンに向かって満面の笑みを浮かべた。
彼は思わずドキッとした。
「ありがとう」
シンが根負けした形になってカガリをシュミレーションマシンへ誘導した。
(2004.10.3)
●カガリとシン:in ミネルバ シュミレーションルームB
「私も昔、MSに乗っていたことがある。」
シュミレーションマシンへ向かう途中カガリがシンに告げた。
シンがギョッとした顔をしてカガリをみた。
「まさか・・・あの・・・いや。」
「まあ実践は1回きりなんだけれども。」
「1回きり?」
「ああ、今は第2次ヤキン・ドゥーエと呼ばれている戦いさ。
機体がそのときまで間に合わなかったからな。」
この人がMSに乗って出て行った?
シンは当惑していた。
(2004.10.4)
●カガリとシン:in ミネルバ シュミレーションルームB
「えっとわかりますか?」
「ああ・・・大体」
「ここのスイッチをいれて、えっとカガリさんに合わせたプログラムはないので一般的なものを
設定します。」
「ああ・・・」
「トレーニング内容も1番最初のステージとなります。よろしいですよね。」
カガリはうなずく。
シンの説明はつづく。
ここは仮想の宇宙空間であること。
アスランとルナマリアも同じところで現在戦っていること。
二人の邪魔にならないようにしてほしいこと。
そして自分の指示に従うこと。
「わかった。」
「じゃあお気をつけて」
そしてカガリは感覚を研ぎ澄まし、意識を集中させた。
以前ストライクルージュに乗っていたときを思い出して。
カガリはジンを発進させた。感じるGに耐え姿勢を維持する。
「じゃあ、あのデブリまで行って、こちらへ戻ってきてください。」
マイクからシンの指示が入った。
「わかった」
カガリはジンを加速させ進んだ。
くそっ、もう少し早く反応させないと・・・カガリはさらに意識を集中させた。
コントロールルームでは少し動作がのろいが悪くないとシンは感じていた。
【あとがき】
ナチュラルでも天才はいると思います。
だからザフトのMSもそこそこ操縦できる人が少しはいるのでは。
まあアスランやキラのように最新鋭機は難しいかもしれないけれど。
キラがMSをあそこまで操って、カガリがストライクルージュに乗ったりすることから考えると
カガリにはMSを操る資質は十二分にあるのではと思っていたりしています。
(2004.10.4)
●アスランとカガリとシンとルナマリア:in ミネルバ シュミレーションルームA
一方アスランはルナマリアと戦っていた。接戦のようにみえた。
まあ悪くないけど・・・アスランは呟く。けど教科書どおりって感じか。
ふと、モニターの奥にジンが滑空する姿が目に入った。
あれは?
ふと思い当たり、アスランはチッと舌打ちをした。
そしてサイバーをMAに変形させ加速し、ルナマリアの機体に一気に近づき元に戻した。
「えっ!」
息つくまもなくサーベルを取り出しルナマリアの機体の足を切った。
「きゃー!」
そしてくるりと機体の向きをかえ滑空しているジンの直前へ飛び込んだ。
「うわぁー」
今度はカガリが叫び声をあげ驚きひるんだ。
セイバーはジンを捕まえ押さえた。
と同時に動きを固定させ、アスランはシュミレータマシンから飛び出した。
辺りをみまわしカガリのいるボックスを見つけ近づいて怒鳴った。
「カガリ、何をしているんだ」
カガリがばつが悪そうに頭をかきながら答えた。
「いや・・・その・・・シュミレー・・・」
「もうお前には必要ない。」
そしてコントロールルームから飛び出してきたシンに向かって怒鳴った。
「君が乗せたのか?」
「えっ・・・いや・・・」
シンはアスランの勢いに押された。
「あいつじゃない。私が頼んだだけだ。あいつは悪くない。」
マシンから出てきたカガリが今にもシンに向かっていきそうなアスランの腕をつかみ言った。
「ごめん。私が悪かった。もうしないから。アスランすまない。約束する」
「カガリ・・・頼むから、もうMSには乗らないでくれ。」
アスランはカガリを抱きしめた。
【あとがき】
最後の1行は迷ったすえ追加。
シンもルナマリアもいるのですが、それよりもカガリの件でかなり動揺しているので気がつかなかった
ということにしたいな・・・と。
(2004.10.4)
●カガリとシン:in ミネルバ 展望室
「さっきはすまなかったな。」
カガリがシンに気がついて声をかけた。
「あ・・・いえ。」
「あいつは心配性だから。」
そしてカガリは視線を窓の方にむけ地球を見つめた。
「どうしてMSに乗ったのですか?」
シンは尋ねてきた。
「さっきもいったが、乗ったといっても戦闘にでたのは1回だけだ。」
「でもあなたはオーブの代表の娘で・・・」
それにあの第2次ヤキン・ドゥーエの戦いだ。
「そうだな。私もMSに乗れる技量が多少あって、こんな私でもあの時は必要とされていた
からな。」
カガリはシンの顔をみつめ答えた。
シンは先ほどのシュミレーションでのカガリを思い出していた。
この人はナチュラルだ。なのに、ジンとはいえ操った。
パラメータをこの人に合わせて変えればもう少しスムーズに動かせるだろう。
「それに死なせたくない奴等がいたし・・・」
奴等・・・それにはあいつ・・・アスランも入っているのだろうか。
あのザフトのエースだった彼とこの人はどうやって知り合ったのだろうか。
カガリは再び視線を窓に戻していった。
「けどな・・・守れた者もいれば・・・守れなかった者もいる。」
「・・・・・」
「自分の力だけでもだめなときがある。」
「・・・なっ・・・」
「それが戦争さ。」
戦争・・・オーブでの苦い過去が脳裏によみがえり、うつむくシン。
「おまえは何のためにMSに乗るんだ?」
(2004.10.4)