思う心
医務室のベッドで目を覚ましたときに隣のベッドに寝ている君の姿に気がついた。
「カガリ・・・」
なぜ彼女がここに?
確か自分はMSに乗って、限界をつっきって地球に落ちたはずだ。
しまった・・・
思ったときにはもう遅かった。気をつけていたはずなのに。
地球の重力につかまって、もうMSを上昇することができない。
この機体はジャスティスやイージスではない。
以前のディアッカの言葉が思い出された。
もうだめかもしれない・・・このまま燃え尽きてしまうのか。
アスランの脳裏を諦めがよぎった。
まあ・・・いいか、それでも。
母の眠っているあのユニウス・セブンを仕方がないとはいえぼろぼろに壊してしまったのだ。
すみません、母上。
母の顔を思い浮かべてアスランは謝った。
が、その次に瞬間、金色のカガリの顔が浮かんできた。
あいつ怒っているだろうな・・・黙ってMSにのってきたし、な・・
泣き疲れて眠っていたカガリ。
くそっ!
アスランはMSの姿勢を背中から落下するように変えた。
コクピットへの負担を少しでも減らすように。
そう・・・諦めるものか。他に何かないか・・・
アスランは回りに障壁となるようなものがないか探し始めた。
ガツン
何だ?
何かにつかまれた感覚がした。と、そのとき
「何しているんですか?」
シンの声が聞こえた。
「お前」
モニターや計器から判断するとインパルスが機体の背中に張り付いているのがわかった。
「援護します・・・といってもどの程度かわかりませんが。」
「なぜ・・・いや・・・ありがとう」
計器を見つめると先ほどよりは熱が下がっている。
インパルスはザフトの最新鋭機だ、ジャスティスのように大気圏を単独で降下できるようになっているのだろう。
「まったく・・あなたって人は」
通信機から聞こえる彼の声に苦笑した。
彼がどうして助けてくれたのかわからない。
わからないが、これでなんとか君にまた会えるよ・・・カガリ。
そこから先の記憶はない。
「俺は助かったのか。」
アスランはだるい体を起こし隣のベッドに寝ているカガリの側に行こうと自分のベッドの端に足を下ろしたとき
シューっとドアの開いた音がした。
視線をそちらにむけるとレイだった。
「気がつかれました?」
彼はアスランの側に近づいてきた。
「ああ・・・」
「寝てなくてもう大丈夫ですか?まったくあなたは無茶をする。」
「・・・すまない・・・その・・・シンは?」
「あいつは大丈夫です。インパルスは大気圏突入も可能ですから」
「そうだな。助かったよ」
そう答えながら、アスランはちらりとカガリの方へ視線をむけた。
「ああ・・・代表は大丈夫ですよ。眠っていらっしゃるだけです。」
「そう・・・か。でもなぜ?」
「目が覚めてあなたが側にいらっしゃったら安心されると思いますが」
レイは微笑みながら言った。彼の質問の答えではなかったが。
「は?」
アスランはレイの言葉に頬を少し赤くしながらもう一度聞いた。
「でも、どうしてここに」
レイは少し困った顔をした。
私が話したとは言わないでくださいね、と前置きをしながらも彼女がここにいる理由を教えてくれた。
「実はブリッジで落ちていくあなたの機体がモニターに映し出された時
アスハ代表はとても動揺されて、取り乱されて、倒れてしまわれたのです。」
「ザク・ウォーリアが1機限界高度きっています。」
「アスラン!」
カガリはブリッジで思わず立ち上がって叫んだ。
「あの馬鹿!何しているんだ。あれはジャスティスじゃないのに!」
議長や艦長はその勢いに驚いて彼女を見つめた。
「ストライクでも大変だったのに・・・」
キラがストライクで大気圏突入をした時のことを聞いていたカガリは続けてさけぶ。
「このままでは・・・あいつは・・・私を守るといったくせに。」
「あの機体に乗っているのは誰?」
艦長が叫ぶ。そのときブリッジにレイとルナマリアが入ってきた。
「議長!どうしてあいつに最新鋭機を与えてくれなかったのですか。」
カガリがデュランデルのほうに近づいて言葉を続ける。
「あいつがアスラン・ザラと知っていたくせに。」
レイがあわててカガリにかけよる。
「あいつだったらどんなMSでもうまく操れる・・・どうして」
「落ち着いてください・・・アスハ代表。」
レイがカガリの肩をうしろからつかんで声をかけた。
「あの装備で、あのまま大気圏に突入したら・・・もつかしら」
ルナマリアがぽつんと呟いた。
「お前・・・」
カガリはルナマリアの方を見つめ・・・そして気を失った。
このまま・・・お前はいってしまうのか、アスラン。
「シンです。ザク・ウォーリアを援護しに行きます。」
「何だって・・・戻って来い。われわれは地球にはおりないのだぞ。」
アーサーは思わず怒鳴っていた。
「けど・・・あいつをほってはおけません。」
インパルスがザク・ウォーリアに向かっていく姿がモニターに映し出された。
「艦長!」
「仕方ないわね。われわれも降下してよろしいでしょうか?議長」
タリアがデュランデルの方を振り返っていった。
「そうだな。頼む・・・タリア」
そして彼はレイの腕の中で気を失っているカガリを見つめた。
この二人は今までどんなことを経験しているのだろう。
「レイ、ルナマリア・・・代表を医務室へ」
レイから話を聞いたアスランは穏やかな顔でカガリを見つめた。
「先日はシンが無礼をはたらいて申し訳ありませんでした。」
「いや・・・別に・・・カガリもわかっているよ。」
アスランはレイの顔を見て答えた。レイが意外そうな顔をした。
「俺も昔は・・・母がユニウスセブンでなくなった時は今のシンと一緒だったと思うから。」
「えっ・・・なのになぜ?」
レイの驚いた顔に、アスランはくすっと笑いながら答えた。
「気づかせてくれたから・・・彼女が。」
そしてアスランはカガリのベッドに近づき彼女の手を握った。
「心配かけてごめん、カガリ。」
(2004.11.13)
【あとがき】
すみません。某雑誌たちの情報をみてどなたでも浮かぶ戯言を書いてしまいました。
5話を見る前から書いていたのですが、5話で彼はカガリに黙ってMSに乗っていったので少し変えました。
6話ですが予告をみるとカガリが「アスラン!」と叫んでいそうですね。