見えぬ傷

 

「お前に何がわかるというのだ・・・あいつの悲しみを。

あそこにはあいつのお母様が眠っていらっしゃるのだぞ。

それをあいつが落としに行くというのだ。

あれが地球におちないように・・・・」

 

シンはカガリの紡ぎだす言葉に目を大きく見開いた・・・。

眠っているって・・・まさか・・・あいつも。

 

軌道をかえ、地球へ落下し始めたユニウス・セブンを

ザフト・地球連合が共同で破壊することになり

アスランもMSに搭乗しその作戦に加わることを選んだ。

そのことに対しシン・アスカが「何をいまさら・・・」と

食堂で彼にくってかかった姿をほんの少し前にカガリは目にしていた。

士官室に戻るアスランの悩む姿をみつめ、彼女は展望室にむかった。

と、そこにシンがいたのだった。

 

「確かにお前にはオーブは・・・父は悪いことをしたのかもしれない。

お前が私を、アスハを、オーブを憎んでもしかたないと思う。

けれど、あいつに対してそれはやめてくれ。

あの戦争で家族をなくしたのはお前ばかりではない。

あいつだってプラントにいて、家族なくして、友達無くして、友達と戦って

いろいろ悩んで迷って今はオーブにいる。

あいつがきめたことをお前が否定することや非難する筋合いはない。

あの戦争でうけた傷、悲しみは一人一人違う。

お前だって、悩んで迷って・・・プラントにいる、ザフトに入ることに決めたのだろう。」

 

「お前に、何が・・・・」

シンがそういい捨て・・・カガリの近くに寄ってくる。

カガリはひるむことなく続けた。

 

「シン・アスカ。

私の・・・オーブのやっていることはお前にとっては奇麗事にしかみえないかもしれない。

 けれど、オーブはプラントとは違う。大西洋連邦とも違う。

 オーブにはコーディネータもナチュラルもどちらも住んでいる国だ。

 そのことの意味を考えたことがあるのか?お前は。 

 お前の両親がなぜオーブにいたか・・・その意味を考えたことがあるか?」

 

「うるさい!お前になんかいわれたくない。」

 

「もっと周りを見て考え、学ぶべきだ。戦争の根っこを・・・憎しみだけでは何もえられないぞ。」

 

「なんだと!」

シンがカガリの胸倉をつかみ展望室の窓に彼女を押し当てた。

「まあ・・・私もそういう意味ではまだまだなのかもしれないが、な。」

カガリはちょっと目を伏せ、ウズミの顔を思い浮かべ・・・自分に言い聞かせるように呟いた。

そして顔をあげ、シンを睨んでいった。

「だが、少なくとも・・・戦争の根っこについてはお前より理解しているつもりだ。」

 

(2004.11.8)

【あとがき】

カガリとシンの直接対決。テレビではどんな感じでしょう

シンが4話でアスランに対して言った台詞を見て思いついたものです。

カガリは自分のことに関してはシンとはぶつかれないような気がしますが・・・

(一応2年たったので)アスランの事に関しては文句を言いそうな気がします。

目次へ戻る