宇宙(そら)での邂逅
「あれは・・・・」
ブリッジの中で声があがる。
ミネルバはガーディ・ルーと激しい戦闘を続けていた。
インパルスとセイバーはカオス、ガイア、アビスを抑えていた。
ブリッジのスクリーンには1台の戦艦とそこから発進されたMSが映し出されていた。
「味方なの?」
メイリンが震えた声でつぶやく。
「艦の特定急いで!」
タリアの声が響く
「アークエンジェル・・・フリーダム・・・フリーダムがなぜ?」
カガリがシートから立ち上がり呟いた。
なかなか帰ってこない代表を迎えにきたか・・・
デュランデルがそれを見つめて小さく舌打ちをした。
一方、セイバーで戦っていたアスランも新たな参戦者に驚きの声をあげた。
「アークエンジェル・・・あれはフリーダム?キラ?キラなのか」
「こちらフリーダム・・・って、アスラン、なんで君がその機体に?」
「アレックスだ。どうして・・・」
「訳はあとでゆっくり・・・カガリを迎えに来た。」
くっ・・・・アスランはキラのその言葉に苦虫をつぶしたような顔をした。
「こちらも艦長からの許可がでれば・・・援護をする。」
「すまない。」
「艦特定・・・オーブ軍・・・アークエンジェルです。」
ブリッジがどよめいた。
「アークエンジェルから通信入っています。」
「つないで・・・」
「こちらオーブ軍所属アークエンジェル、艦長のマリュー・ラミアスです。アスハ代表を迎えにまいりました。」
スクリーンにマリューの顔が映し出される。
「カガリ様・・・お元気そうで安心しました。」
マリューがカガリの姿をみつけ微笑みながら言った。
「すまない・・・ラミアス艦長」
カガリもホッとした顔で答えた。
と、同時に苦虫をつぶしたキサカの顔を頭に浮かべ、マリューに気づかれないように小さなため息をついた。
マリューさんまで巻き込んで・・・私は。
マリューは戦後オーブへ移住し、現在はモルゲンレーテでMS開発を担当している。
そのマリューがオーブ軍と名乗ってアークエンジェルに乗っているということは、自分のためにわざわざ来てくれたということだ。
オーブ軍の中でも宇宙軍は他に比べると軍備、人材について層が薄い・・・。
特に艦長を担うような逸材は数が少ない。
当然彼女がオーブに移住したいという話があったとき、オーブ軍に是非と頼んだのが断られてしまったのだ。
「ザフト軍ミネルバの艦長、タリア・グラディスです。」
タリアがデュランデルをチラリと見た後、マリューに対して話し出した。
「迎えにこられたということですが、ご覧の通り本艦は現在戦闘中でおこたえすることはできません。」
マリューはわかっていると頷きながら答えた。
「オーブとしても無用な争いはしたくないので、先方に戦いの中断の通信をこれから行います。」
ミネルバのブリッジの中に安堵の空気が流れる。
「その際にはオーブの民間人を迎えに来たとのみ伝えます。そのほうがお互いに都合がよろしいですよね。艦長」
タリアはデュランデルを見つめた。彼は頷いた。
確かにオーブの首長代表がこの間に乗っていることが連合軍に知られるのは都合が悪い。
いろいろ勘ぐられるだろう。それに議長まで乗っているなんて知られたら・・・。
「わかりました。お願いします。」
「あの機体は・・・」
シンがフリーダムに気がついた。
脳裏にあのオーブでのつらい思い出がよぎった。
ガイアをふりきり、フリーダムの方へ向かっていった。
「あの機体が、父さんと母さん・・・そしてマユを!」
アスランが驚き、アビスの攻撃をよけ、セイバーを変形させフリーダムの方へ向かった。
「おい!シン!戦闘中だ、それにそれは友軍機だ。やめろ!」
そして、フリーダムとインパルスの間に立ちはだかった。
「おいおい・・・何やってんだ。あいつら。」
スティングがあきれた声をだした。
「仲間割れ?」
アウルは何かおもしろいものをみたようにつぶやいた。
「それにしてもあの機体は?敵か?」
2人ともしばし攻撃の手をとめ様子を見ていた。
相変わらずガイアだけはシンを追いかけ、3機に向かって砲を撃ってきた。
フリーダムがそれに気づきシールドで弾く。
と、信号弾がミネルバ、ガーディー・ルーから同時に上がった。
パイロットたちがいっせいに反応する。
「信号弾?何で」
「よくわかんねーけど、戻るぜ。パワーもそろそろ危ないし。」
カオスとアビスはガーディ・ルーの方へ向きを変えた。
「ああ、相変わらずステラは暴走しているぜ。」
「わかっている。ネオ・・・ステラを頼む」
「あれは・・・」
アスランが驚いて声をあげた。
「ああ・・・戦闘の中断の交渉がうまくいったのかもしれない。」
キラが答えた。
「何で邪魔をする。こいつはあの時の・・・」
「シン!その機体は敵じゃない。」
アスランがシンに対して怒鳴った。
「何で邪魔を・・・」
「戻るぞ、シン。帰還命令だ!」
「アレックス・・・いくらお前でも・・・」
「その機体のパイロットと話したければ、ミネルバに帰還しろ。」
「しかし・・・」
「その機体のパイロットもミネルバに来るはずだ。そうだろ?キラ。」
俺を殴りに・・・
「ああ・・・」
「どうして・・・」
シンが驚いた声を発した。
「オーブからの迎えだ。」
信号弾があがる少し前・・・
「艦長、ミネルバの後方から不明艦が近づいています。」
「何?ザフトの艦か?」
「不明艦からMS1機の発信が確認されています。」
ガーディ・ルーのブリッジがざわざわとし始めた。
「あらら・・・あの艦は・・・それにあのモビルスーツは・・・」
ネオはニヤっと笑った。
しかし何でこんなところに・・・彼は栗色の髪の女性の顔を思い浮かべた・・・まさかな。
「不明艦の照合急げ」
艦長がどなった。
「不明艦から通信です」
そこへアークエンジェルからの通信が入ってきた。
「不明艦へ告ぎます。こちらオーブ軍アークエンジェル・・
ザフト軍ミネルバに収容されているオーブの民間人を迎えにきました。
こちらの作業が終了するまで戦闘の中断を要求いたします。
要求が認められない場合は、そちらへの攻撃もやむをえず・・・との命をうけております」
ネオはその声が自分の予想したとおりだったので少し驚いた。
彼女がまだあの艦に指揮官として乗っていることが意外だった。
もれ聞こえたところでは、軍はやめて生きていると聞いていたからだ。
その彼女とこうしてここで出会うことになるとは・・・。
「へぇーわざわざオーブ軍がお出迎えとはどんな人物がのっているのやら・・」
ネオはそう呟いた後、金髪の少女の顔をおもいだした。
そしてもう一人彼女の隣に常にいた濃紺の髪の少年・・・。
あの赤い機体はもしかしたらあいつがパイロットか?
どおりで手強いわけだ・・・・。
「どうしますか?」
艦長がネオに声をかける。
「そうだな・・・・通信回線をつないでくれ・・ただし映像はいらいない。」
「いいのですか?」
「ああ・・・オーブ軍とここで戦争するわけには行かないだろう。」
「通信回線開きます」
「こちらガーディ・ルーだ。あのザフト軍の艦にオーブの民間人がのっているというが本当なのか?」
「ええ・・・アーモリー・ワンのシェルターに入れなかったもの数名が収容されていると聞いております。」
「しかしながらそういうことをいって、貴艦がザフト艦に武器などを補給するのではないか。」
「こちらからはシャトルを1台とモビルスーツを1機のみザフトの艦へ派遣します。」
「それを信じろと・・・」
「オーブとて無用な争いはしたくありません。ザフト軍にもすでに通信済みです。」
「しかし・・・」
「2時間だな」
ネオが割り込んできた。
えっ、この声・・・、マリューは驚いた。
「けれど、大佐」
ネオは艦長を手で制して続けた。
「2時間中断しよう。その間にお姫様でもなんでも連れて行ってくれ。」
「あっ、ありがとうございます。」
マリューは動揺をおさえながら答えた。
そんなはずはない・・・そんなはずは・・・彼はあの時、目の前で逝ってしまった。
「時計を合わせよう・・・いいか、いまから5分後、信号弾をあげる。もちろんザフトの方も、だ。」
「はい・・・・」
「それから2時間、休戦しよう。2時間後にはまたこちらは戦闘を開始する。いいか?」
「わかりました。」
「けど・・・大佐。ザフトが・・・」
「ザフト艦の信号弾があがらなかったら、戦闘は続行する。いいか?」
「わかりました。こちらの申し出をのんでいただいてありがとうございます。」
アークエンジェルからの通信が途切れた。
「いいのですか?大佐。」
艦長が遠慮がちに尋ねる。
「いいだろう・・・オーブと戦争しても、な。それにオーブ代表でも乗っているかもよ。あのザフト艦」
「まさか!」
「わざわざオーブ軍のお迎えだぜ。」
「確かに・・・ただの民間人の迎えに軍が出てくるとは考えにくいですね。」
「だろう?」
艦長はうなずいて命令を告げた。
「信号弾打ち上げ後、ミラージュコロイドを・・・」
「ミラージュコロイドの展開はやめておけ。オーブ軍の前ではまずい」
続く
(続きはオフ本で作成します)
(2004.10.21)
【あとがき】
続いてしまいます・・・だってアスラン、キラになぐられてないもの。
その1とはちょっと別設定になっています。
どうも1、2話をみている前作をなぞっているような気がしてならないので、
もしかしたら、迎えがくるのかしら・・・なかなか戻ってこないカガリにたいして・・・
と思いはじめて浮かんだ妄想です。
そしたらついでにマリューとネオを邂逅させてしまおうと・・・
キラも登場させちゃおう・・・キラVSシンもありかな・・・とどんどん妄想が膨らんでしまっています。
それからネオ=ムウの設定です。記憶喪失ではありません。彼は敢えて今連合軍にいると思っています。
内部から変えないとだめだと思っているのでは・・・。
そうそうあまり前作をなぞっているストーリー展開はちょっと・・・と感じてはいますが。
【追記】2004.11.24
本編は別な展開になってしまいました。が、これはこれでと思っています。
このあとの書きたいことのネタをあげていったらなかなかいい数になったので
ここでは更新せずに本にまとめてみようと思っています。