(前夜祭の情報を見て1話までの間に思いついたもの)
あと数時間後にミネルバはカーペンタリアに到着する。
アスランとカガリは展望ブリッジにいた。
「カガリ」
しばらく二人は地球を見ていたのだが、低い思いつめたアスランの声にカガリは彼の顔を見つめた。
彼女もまた彼のこれから話す言葉を想像できるのか少し寂しげな表情をしていた。
「俺は君が好きだ。」
あっ・・・とカガリの頬が少し赤く染まった。
そして思わぬ彼の台詞に少し驚きながら、恥ずかしさを隠すためかぶっきらぼうにいった。
「知っている。」
その表情と返答の仕方が彼女らしくてアスランはククッと笑った。
そして君は?と聞きたくなる衝動をおさえた。
カガリはアスランが笑ったので少し不機嫌な顔になっていた。
アスランは手を伸ばしカガリの頬に触れた。
「俺はずっと君のそばにいたい」
アスランが彼女の頬を撫でながら言った。
「そばにいて君にこうやって触れていたい。」
カガリの頬がさらに赤くなっていく。
「君を護りたい。護りつづけたい。」
そしてアスランはカガリを抱きしめ、彼女の肩に顔を埋めた。
「わ・・・私も・・・お前のそばにいたい・・・ずっと・・・」
カガリも勇気をだして告げる。
今言わないときっと後悔するという思いに駆られる。
「わ・・・私も・・・お前のことが・・・好きだ。」
アスランは嬉しくてぎゅっと彼女を抱きしめて答えた。
「知っているよ。」
それを聞いたカガリもまた彼をぎゅっと抱きしめた。
「けれど・・・俺は・・・」
ビクっと腕の中のカガリが反応した。
彼女もわかっているのだ・・・とアスランは思った。
アスランは顔をあげ、涙でいっぱいのカガリの顔を見つめながら言った。
「こんな状況では君の側にいてもできることに限りがある。」
カガリの頬を涙がつたう。それを優しく拭きながらアスランは続ける。
「だから俺は行くよ・・・プラントに戻る」
ああ・・・やっぱり・・・カガリは自分の想像があたっていたことを悟った。
覚悟をしていたものの・・・涙があとからあとからあふれてきた。
「ご・・」
「わかった。」
彼の謝る言葉を聞きたくはなかったカガリは言葉をさえぎった。
謝る必要などないからだ。
「お前が・・・今できること・・・やらなければならないことを・・・やらなきゃいけない。」
アスランは大きく目を見開いてカガリをみつめた。
「その舞台はオーブではなく・・・プラントだからしょうがない」
「カガリ・・・・」
「それに・・・終わったら・・・もっ、戻ってきてくれるのだろう?」
「あ・・・」
「違うのか?」
そう言ったあとカガリは恥ずかしくなったのか、アスランの胸に顔を埋めた。
「ああ・・・必ず。」
アスランは彼女を再びぎゅっと抱きしめた。
カガリは彼の胸にハウメアの石の存在に気がついた。
「これからも・・・この石に護ってもらえ。」
「ああ・・・そうする。」
「死ぬなよ。」
「ああ・・・君も」
「うん。」
「必ず・・・必ず君のもとに帰ってくるから・・・」
「うん。約束だ。」
「ああ・・・」
二人は見つめあい口付けを交わした。
そして寄り添いながら部屋へ戻っていった。
これは別れではない。
新たな道へ踏み出し、次にめぐり逢うための旅立ち。
それから半年後・・・二人はめぐり逢う・・・
爆発音!ブルーコスモスのテロか?
アスランは爆発音の聞こえた方へ向かった。
あのホテルか・・・
アスランは崩れたホテルのロビーに駆け込んだ。そして見つけた。
瓦礫の中に倒れている金髪の少女を・・・
「カガリ!」
よかった、生きている・・・けど、足を。
瓦礫をとりのぞき彼女を抱き上げた。
(おまけ)
立ち聞きするつもりじゃなかったのに・・・。
ルナマリアは寄り添って展望ブリッジをでていくアスランとカガリを見つめながら思った。
あの二人はこれから愛し合うのだろうか・・・。
ルナマリアは切なくて胸がいっぱいになった。
あと数時間後に地球へ降りることを聞いたルナマリアは展望ブリッジへ向かった。
彼女は初めて降りる地球への期待と不安でいっぱいだった。
しかし彼女は展望ブリッジにいる先客に気がつき思わず隠れてしまったのだ。
アスラン・・・
彼がこの艦に残ること、ザフトに戻ることを選んでくれた。
アスハ代表の護衛をやめて。
一緒に戦ってくれることを選んでくれたのは嬉しい。
けれども彼の気持ちは彼女のものだ。
あらためて実感させられた。
このまま一緒に戦って欲しい・・・
オーブに戻らないで欲しい・・・
そしてあの二人がずっと会えなくなった私にも・・・
そんな期待が無残にも崩れ落ちていくのを感じた。
そして半年後、彼女は二人の強い絆を再び見せつけられる。
爆発音に気がつき、飛び込んだホテルで
金髪の少女を抱きかかえている彼をみつけた
(2004.10.11)
【あとがき】
前夜祭も情報を見て浮かんだ話です。私の中ではルナマリア片思いの設定になっています。
別れのシーンはない方がいいのですが・・・・。