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パリに留学をしているカガリを尋ねたアスランは、二人で彼女の学校のクリスマスパーティに出席していた。

食事を取ってくるといったカガリを見送って、アスランは一人思い出していた。

カガリの下宿のリビングで見せられた写真。

それは幼稚園の最後の夏休み、二人だけで黙って出かけ、大騒ぎになって、双方の親に怒られて泣いたりした時のものだった。

「懐かしいな・・・すっかり忘れていた。」

そういえば、二人で始めて出かけたのはその時かもしれない。

 

 

「こうえんにいってきます。」

アスランはリビングにいる母親レノアに声をかけ出かけた。

「えっ!アスラン!ちょっと待って!」

アスランの声に気がついたレノアの返事は彼には届かなかった。

 

「あれ?」

公園に着いたアスランは首をかしげた。

いつもだともうここに来ている筈だろう友達が・・・金色の髪と茶色の髪の兄弟がいない。

「カガリちゃん?キラ?」

おばあちゃんの家から帰ってくる次の日は遊ぼうと言っていたのに、どうしていないのだろう?

アスランはもう一度、今度は時々二人が隠れて自分を驚かす場所なども探してみたのだが・・・やはり見つからなかった。

アスランは少し悲しくなった。

幼稚園は先週から夏休みに入った。

アスランも8月になると母親の研究所の近くの別荘で過ごすこととなっている。

だから遊べる時には二人と遊びたいのに、とアスランは思っていた。

アスランは砂場の側にしゃがみこんで思い出していた。

 

(中略)

 

駅までは大人の足で10分ほどの道のりだが、子供の足ではその倍はかかるだろう。

二人は手をつないでしばらく黙ったまま歩いた。

ちょうど半分くらいまで来たところで、カガリがアスランの手を引っ張って止まった。

そして不安そうにアスランの方を見た。

「おこられないかな。」

カガリは黙って家を出てきたことを思い出した。

もともと玄関の扉を勝手に開けてはいけないとも言われていたのだ。

アスランはカガリを安心させるようにニコリと笑って答えた。

「だいじょうぶだよ。5じまでにかえってくれば。」

「そっか・・・。」

カガリはアスランの言葉に安心した。

「そうだよな。ふたりだしな。だいじょうぶだ。・・・いこう。」

カガリはアスランの顔をみながら続けた。

アスランもカガリのその言葉に嬉しくなった。

二人はまた手をつないだまま駅へと向った。

アスランはカガリを安心させたくて彼女に話しかけた。

「そういえば、おばあちゃんちっていつもでんしゃでいっているの?くるまじゃないの?」

繋いでいる手をぶんぶんと振りながらカガリは答えた。

その表情はとても楽しそうでアスランも嬉しくなってきた。

「うん。おかあさんとキラと3にんで、でかけるときはいつもでんしゃだ。」

「どうして?」

「おとうさんしか、くるまのうんてんできないからな。」

アスランは不思議そうな顔をした。

「アスランのおかあさんはすごいよな。くるまのうんてんができて。かっこいいなあ。」

アスランは母親のことをいわれてちょっと照れくさくなった。

彼の母、レノアは仕事柄いつも車を自ら運転している。

ほぼ毎日郊外の研究施設へと車で通っているのだ。

だからどこの家でも両親が車を運転できるものだと彼は思っていた。

そのためアスランはもっぱら外出する時は車の時が多く、電車はあまり乗らない。

「わたしもおおきくなったら、くるまのうんてんするってきめているんだ。」

「カガリちゃんも?」

「うん。アスランものっけてやるよ。」

「わかった。でもカガリちゃんもぼくのくるまにのってね。」

「うん、いいよ。・・・はやくおとなになりたいな。」

「そうだね。」

二人の目の前に駅の建物が現れた。