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(第1章つづき)
ピピ・・・・
目覚ましの音が聞こえてアスランは目を覚ました。自分の腕の中のカガリを確認し、彼は慌てて手をのばし目覚ましを止めた。
カガリは疲れているのかいつもと違って眠り続けている。
「7時か」
アスランはけだるさを感じつつ、充実した気分だった。今日はゆっくりモルゲンレーテに行けばいいから、そのままもう一度惰眠を
むさぼろうかと目を閉じかけた。が、カガリが昨日の夜、9時までにアスハの屋敷に行くといっていたことを思い出した。
アスランはカガリの額に口づけをして、そっとベッドから抜け出した。
朝食の準備をしたアスランは、リビングに置きっぱなしになっていたカガリのファイルを手に取り、もう一度見始めた。
テレビのニュースが7時45分を告げた。アスランはファイルから顔をあげ、カガリを起こすために寝室へ向かった。
彼女はまだよく眠っているようだ。昨日は久しぶりだったので夢中になってしまった・・・アスランは少し反省をした。
だが、そろそろ起こさないとまずい。アスランは声をかけた。
「カガリ・・・おはよう、そろそろ起きないと・・・」
「うーん・・・」
今日はカガリのほうがアスランの声から逃れるように寝返りをうった。
「そろそろ、8時になるぞ・・・9時にアスハの屋敷だろう?」
アスランは彼女の肩をつかまえてゆすりながら言った。
「えっ、8時・・・」
カガリがパチッと目を開けた。そして、しまった、という顔をした。アスランはその様子に苦笑しながら告げた。
「朝食は作っているから、急いで準備してリビングに来るといいよ。」
「わっ、わかった。」
アスランはカガリの頬にキスをして寝室から出て行った。
カガリのためにアスランはキッチンでコーヒーを淹れはじめた。ドタバタとカガリがリビングに入ってきた。
「寝坊した。・・・ごめん、朝食はいいから。」
コーヒーを片手にキッチンから出てきたアスランに向かってカガリは言った。アスランはカガリの言葉に眉をひそめた。
「食べていったほうがいいよ。」
「でも、8時半には迎えが来るはずだ。待たせるのは恥ずかしい。」
「今日は送っていくよ。・・・連絡してあるから・・・」
「えっ・・・」
アスランはカガリにウィンクした。
「ありがとう・・・助かる。」
カガリがほっとした顔をした。
「だから、朝食ちゃんと食べてね。」
アスランはそう言ってカガリの前にコーヒーを置いた。
(第2章から)
モルゲンレーテに出勤すると、エリカ・シモンズがアスランに一人の女性を紹介した。
その女性の顔をみてアスランは驚いた。土曜日に研究室を覗きにきていた女性だったからだ。
「えっと、アスラン、紹介するわ。彼女がノア、ノア・キャンベルよ。ノアこちらがアスラン、アスラン・ザラ研究員。
研究員といってもオノゴロ大学の講師をやっているので今は客員だけど。」
ノアと呼ばれた女性はアスランを少し驚いた顔をして見つめた。あまりにじろじろと見られるのでアスランは少し
居心地が悪くなった。感じが母のレノアに似ていると思ったが、性格は違うようだ。
「客員・・・講師・・・なんですか。へぇー。」
「あの・・・アスラン・ザラです。よろしくお願いします。」
「ああ・・・私はノア・キャンベルよ。ノアでいいわ。」
ノアはそう答えた後もアスランをじっと見ていた。
「何か・・・」
ノアはちらりとエリカのほうを見た。エリカはその視線に気がついて苦笑いした。
「じゃあアスラン、彼女をよろしく。一応3ヶ月の予定なので。2ヶ月で試作品を作成しそのあと実験かしら。」
そう言って部屋を出て行った。
「わかりました。じゃあ・・・机はこれを使って・・・」
「あの・・・聞いてもいいかしら?」
アスランは何だろう、という顔をした。ノアはアスランを上から下までなめ回すように見た。
「はい?」
「ラクス・クラインの婚約者のアスラン・ザラ?よね。」
「は?」
「まあ、同名ってこともあるわよね。でも、ザラってそんなにある名前じゃないわよね。」
(第3章から)
アスランはモルゲンレーテの会議室で準備をしていた。資料を机の上に配り、パソコンをチェックする。
その時、会議に出席するメンバーと思える声が廊下から聞こえてきた。
「で、昨日説明してもらったけど、やっぱりここの部分がわからなくて・・・」
「それはカガリ様、昨日もお話したように地球では・・」
ふと聞き覚えのある声がしたのでアスランは扉のほうに身体をむけてみるとカガリが入ってきた。
「カガリ・・・」
彼は声をかけようとしたができなかった。彼女は一緒に入ってきた男に色々と質問をしていたからだ。誰だ、こいつ。
アスランは少し不愉快になりながら二人をじっと見ていた。その視線に気づいたのかカガリがアスランのほうに顔をむけ、驚いた顔をした。
「アスラン、お前・・・。そうか。お前の仕事だったよな。」
くるりと振り向き、会議室のテーブルに座った。彼女と一緒に入ってきた男もまた彼女のすぐ隣にすわり資料の説明を続けていた。
モルゲンレーテの重役にアスハ家も名前を連ねていることはアスランも知っていた。
当然カガリがこの会議にでることも予想していたので、彼は事前に彼女に個別に資料もメールで送付もしていた。
確かに最近は仕事にかまけてあまりちゃんと連絡をとっていなかったのだが、彼女がその内容を見て、事前にわからないことがあれば
聞きにくるのではという期待もあったからだ。が、現実は違った。彼女の隣に自分の代わりに彼女に説明をしている男がいる。
彼は、誰だ・・・。アスランはカガリのそばにいる少し自分より年が上の精悍な男が気になった。
(第4章から)
「アスラン!」
「カガリ?」
アスランがユーリ・アマルフィとパーティ会場に着くやいなや、カガリから呼び止められた。
「どうした?」
「あぁ・・・よかった。ちょっと来てくれ。アマルフィさんもどうぞ。」
そう言ってカガリはアスランの手を握って、こっち、こっちだと彼を引っ張っていった。
その様子をユーリ・アマルフィは笑いをこらえながら見ていた。
「いったい何が・・・」
アスランはこういった公の場所でカガリと手を繋ぐということはないので、ドキドキしながら・・・
少し回りの視線を気にしながら、小さな声でたずねた。
「お前を紹介してくれっていう人ばかりで困っていたのさ。」
「え?」
アスランは目を丸くしてカガリを見た。
「今回の新ニュートロンジャマーの開発責任者に会いたいという人ばかりだぞ。」
なんだ、そういうことか・・・とアスランは少しがっかりした顔をした。
「うん?どうした?」
「なんでもない。」
そうだよな・・・カガリのパートナーとして紹介してほしいなんていわれることは・・・まだないか。
アスランはカガリに見つからないように小さなため息をついた。
「お待たせしました。」
カガリが4、5人のグループの前で立ち止まり挨拶をした。つられてアスランも頭をさげた。
「こちらが今回の研究のリーダーを務めてくれたアスラン・ザラ氏です。オノゴロ大学の講師で・・・
来月から助教授になられるそうです。あと、こちらはプラントから見えられたユーリ・アマルフィ氏です。
アスラン、アマルフィさん・・・こちらはマサチューセッツ工科大学(MIT)の・・・」
カガリが何人かの男性を二人に紹介した。いずれも高名な研究家たちだった。
ひとしきり挨拶がすんだあと、ユーリ・アマルフィがプラントの最新技術についての話をするために
彼らを連れて椅子のある方向へ移動してくれた。アスランとカガリは二人きりになった。
気を利かせてくれたのか・・・アスランはふとそう思った。