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(中略)
「それってどういうことだ。」
「ディディニウムや繊毛虫は淡水の生き物だ。
カイルが目撃された港にはいないものだ。
遺体は、淡水と海水の両方に浸かっていたってことになる。」
アスランがカガリに判りやすく説明した。
カガリもその事実が示すものに気がつき、面白くない気分になってきた。
そして、それを決定づける言葉がディアッカの口から出てきた。
「その上、淡水には少なくとも半年くらいは浸かっていた。
・・・しかも海水より先に。」
「カイルは殺人をやっていないかも・・・。」
ポツリと呟いたアスランの言葉に、カガリはかなり不愉快になった。
それが、事実だとしても・・・いい気分ではなかった。
彼女は顎に手をあて考えこんだ。
ナイフや遺体を包んでいたシートやロープは彼のものに違いないのに・・・。
「じゃあ、カイルがやっていないとしたら、犯人は誰なんだ。
本当にあいつじゃないのか。」
「カガリ。」
はっ、彼女は顔をあげた。
「殺された場所が港ではないとわかっただけだ。」
アスランのたしなめるような言葉に、彼女は再確認をするように頷いた。
「そうだな。」
そう、まだ彼が殺していないと決まったわけではない。
カガリはパソコンに近づき、画面に地図を広げた。
湾の近くに淡水の場所があれば・・・いいんだ。
だが、見当たらなかった。
彼女は面白くなくて、頬が膨らんだ。
「本当に淡水に浸かっていたのか。
港の近くには沼とか湖はないぞ。」
振り返り、ディアッカの方に向かって言った。
それから再び彼女はマウスをクリックして地図を拡大していった。
が、ディアッカは首を振った。
「淡水にいたのは事実だ。証拠はそういっている。」
カガリの手が止まった。
ディアッカの調査は正確だ。
それは知っている。
が、今回ばかりはその結果に納得がなかなかいかない。
他に容疑者といえば・・・カレンくらいだ。
が、カーリーが失踪後にカイルと知り合っている。
殺す動機はないのだ。
「他に手がかりを探してみよう、カガリ。」
アスランがカガリの側に近づいて、肩に手をあて説得した。
だが、自分を見上げた不満そうな彼女の表情に彼は困った。
以前だったら、証拠が正しいと突き放すように言えたのだが・・・。
「カガリ、ディアッカの・・・。」
「わかっている。・・・けど、犯行現場が港じゃなくて・・・港に近い淡水の場所も可能性としてあるだろう。」
「それはそうだが・・・。」
彼はちらりとディアッカの方を見た。彼は首をすくめた。
「まあ、いい場所が見つかったら教えてくれ。
ちゃんと調べるから。
俺はこれから骨の傷についた微粒子を調べるよ。
それも殺害場所の特定に繋がるだろうし。」
「ありがとう。」
カガリはディアッカの返事に嬉しくなり、アスランに向かって笑った。
「じゃあ、私はもう少しここで場所を探すよ。
端末使わせてくれ、アスラン。」
彼は小さくため息をついた。
きっと、今何を言っても彼女は聞かないだろう。