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(中略)

入学式の次の日から早速カガリとアスランは自転車で学校へ通い始めた。

春休み、2人でグラウンド整備に行っていたので、もうすっかり慣れたものだった。

カガリは自転車をこぎながら、気になっていた昨日の野球部の様子をアスランに尋ねることにした。

まあ、彼の表情が不機嫌ではないので、悪くはなかったようだと感じていた。

本当は、昨日、家に帰ってから聞きたかったのだが、入学式ということで、自分も彼もそれぞれ家族で外食だったので、できなかったのだ。

「なあ、アスラン、結局、何人集まったんだ。」

「ああ、野球部のことか。えっと・・・10人。」

カガリの唐突な問いかけに、アスランは確認しながら答えた。

「うゎー、ぎりぎり。」

思わず、カガリの口から零れた。

「そうだな。だが、全くの初心者は1人だから、いいほうかな。」

ほぉーとカガリも彼の返事にちょっと安心をした。

人数は少ないが、試合には出られる人数だ。

アスランはまずまずかな・・・と思っていた。それに、ほぼ経験者だ。

「投手いた?」

「いた。あと、細かいポジションは聞いていないけど、内野が4と外野が3。」

あと、捕手のアスランと投手か、とカガリは勘定をした。

「うわー、ちょうどいいな。よかったな。」

カガリの言葉にアスランも頷いた。

メンバーも、ニコル以外に顔を見たことがある奴が3人いるし、投手もいた。

投手も思ったよりよかった。

これで、試合も何とかなるだろう。

 そういえば、とカガリは昨日知り合った後ろの席のキラのことを思い出した。

あいつは、ちゃんとグラウンドに行ったのだろうか。

それでカガリは尋ねた。

「なあ、キラ・ヤマトって、昨日来ていたか?」

アスランは、あれ、と思った。

キラ・ヤマトって・・・昨日の投手の名前だ。

でも、フラガ先生のクラスだと聞いたから・・・カガリと同じクラスなのか。

でも、なぜ彼女が知っているのだろう。

「ああ、来ていたけど・・・。」

あいつ、行ったのか・・・。

カガリは不安そうにしていたキラの顔を思い出し、ホッとした。

「よかった。」

よかった・・・って、いったい何がよかったのか、アスランは首を傾げた。

「私の後ろの席が、そのキラ・ヤマトなんだ。

なんか両親の仕事の都合で、隣の県から来たんだって。

だから、中学の知り合いとかいないだろうからクラブ入った方がいいって勧めたんだ。

中学で野球をやっていたって言うし。」

なるほど、席が後ろなのか。

アスランはカガリが彼のことを知っている理由に納得した。

そこで、彼は昨日グラウンドでキラ達が話していた話題を思い出したので聞いてみた。

「そういえば、席って、9組はくじで決めたって聞いたぞ。」

今度はカガリが、アスランはよく知っているな、と思い、目を丸くした。

「そうなんだ。いい加減だと思わないか、フラガ先生。」

「ああ、昨日、先生、野球部に来た。それに、9組の連中も言っていた。」

フラガがグラウンドに顔を見せた時、シン、キラ、ディアッカの驚いた顔をアスランは思いだした。

一方、カガリはアスランが連中・・・と言っていることに驚いた。

「キラの他にも9組の奴がいるのか。」

「ああ、確か、9組は3人いたような気がする。」

「へぇー、3人も・・・。1人はキラ・ヤマトだよな。」

ああ、と頷いたあと、アスランはシンのことを思い出した。

彼女に会ったら彼のことは話さないと、と思っていたのに忘れていた。

きっと、彼女もびっくりするだろう。

「そういえば、カガリ、A川シーの4番がいたぞ。」

「えっ・・・まじ?」

ああ、とアスランは大きく頷いた。

やはり彼女も興味があるだろう。

「お前と同じクラス。」

「えっ、本当か。」

「確か・・・。」

アスランは名前と背格好をカガリに告げた。

だが、うーんと彼女は首を傾げた。

昨日は気がつかなかったようだとアスランは彼女の様子で思った。

じゃあ、と彼はもう1人の生徒ディアッカについても説明をした。

すると、カガリもシンと同じように、くじの奴、という反応をしたので、アスランは笑った。

「まあ、今日、たぶん自己紹介があるだろうから、チェックしてみるよ。A川シーの4番。」

「ああ、頼むよ。」

「でも、どうしてうちの学校なんかに来たんだろう。

野球をやるんだったらうちじゃないほうが・・・。」

「まあ、そうだな。

でも、ニコルの話だと家がグラウンドの隣らしいから・・・。」

「隣って・・・。」

カガリはグラウンドの周りを思い出した。

3塁側のフェンスから外野にかけては畑があって・・・。

じゃあ、1塁側の家のどれかがそうなのか、と彼女が尋ねると、アスランは、いや畑の方、畑の持ち主がシンの家みたいだと伝えた。

「なるほど・・・でも、ラッキーだな。

それで、今日からもう練習だよな。」

「ああ、そうだ。・・・みんな来てくれるかな。」

アスランが珍しく弱気な声を出した。

特に、女の監督なんて考えられないと文句を言ったイザークのことが気になった。

「大丈夫だろう!」

カガリが明るく言った。

アスランはその笑顔を見てホッとした。

彼女が言うと昔から大丈夫だと彼は思えるのだ。