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「カガリの事情」から
(中略)
一方、アスランの様子を見たカガリは、小さくため息をついた。
彼女はちょっと迷ったが、彼に印を見せることに決めた。
見せなくてすむにこしたことはないが・・・彼は、カサブランカを知らないようだ。
それにアスランは自分の正体を知っている。
隠す必要はないかもしれない。
逆に知ってもらっていないとまずいのではないかと判断した。
自分に何かあった時、SP達とアスランが話す機会もあるわけだ。
今回はたまたま、自分が軽傷で彼らと話すことができたから、助かったわけだし。
もし反対だったら、アスランは彼らを信用することができただろうか。
それに彼なら信頼できる。
教えてもいいだろう。
「えっと、これだ。」
カガリは、そう言って、腕時計をはずし、その裏側を見せた。
小さなゆりの花が刻まれていた。
「これか・・・。」
アスランは納得するように呟いた。
うん、と彼の反応に満足したカガリは、再び時計を身につけた。
「じゃあ、この間の事件の時のSPはどうなんだ?」
ファリードを射殺したSPはこんな徽章はつけていなかった気がした。
「お前、よく覚えているな・・・。」
カガリはアスランの言葉に、彼の記憶力のよさに驚きながらも、なかば呆れた口調で答えた。
「あれは、お父さまのSPの一人だ。
たぶん、私のSPは会場に入れなかっただろうから、キサカが手配をしてくれたのだと思う。」
「入れなかったって・・・。」
SPなのに、どうして・・・とアスランは困惑した。
すると、ちょっと呆れた表情で、じろりとカガリはアスランを見つめた。
「一応、この5年間は普通の生活をすることになっているから、お父様のようにべったりと彼らが私に張り付かないんだ。」
「ディアッカの戯言」から
シンの資料に目を通していたディアッカは大きく背伸びをした。
「電圧の件、よく気がついたな。」
資料を机の上に置き、彼は椅子の背にもたれた。
これで少し事件が進展するかもしれない。
誘拐事件が絡んでいると思われた焼死体が研究所に運ばれたのは昨日の朝だ。
自分達の調査で被害者を特定し、攫われている子供と誘拐されている理由もわかった。
後は、自分達が見つけた情報をODIが活用するだけだ。
ディアッカの頭にODIの捜査官カガリの顔が浮かんだ。
金髪でボーイッシュな彼女は、どこか気品があるといつもディアッカは感じていた。
そう、ODIの捜査官とは似つかわしくない気がしているのだ。
それで、彼は彼女のことをいつも『姫さん』と呼んでいた。
彼女はそう呼ばれると嫌な顔をするのだが、それもディアッカの楽しみだったりしていた。
それにもう一人・・・じろりと自分を見るアスランの表情もまた楽しみだったりするのだ。
まったくやきもちやきだよな、あいつは。
アスランのことを思い浮かべたディアッカは立ち上がった。
「ちょっと、眠気覚ましにアスランをからかってくるとするか。」
彼は、また背伸びを一つした後、自分の研究ブースから、アスランの研究室へと向かうことにした。