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(中略)

カガリはカールの家から少し離れた車を止めた。

二人はそこから歩いて向かうことにした。

そこは閑静な住宅街だった。

「ここか・・・。」

二人はレンガ造りの1軒の家の前に立った。

カガリがアスランの顔見て言った。

「私が話を聞くからな。アスラン、お前は何も言うなよ。」

アスランは苦笑いをした。

お前は相手の気持ちを考えて物を言わないから・・・とカガリに彼はよく言われていた。

彼が被害者の死因などを専門用語のままストレートに話してしまうからだ。

そんな細かいことを言ったって、被害者の家族はわからないんだから・・・それが彼女の言い分だった。

カガリは玄関の扉をノックした。

「デッカーさん、こんにちは。・・・デッカーさん。」

中から物音一つ聞こえなかった。

アスランは玄関の近くにある窓に気がついた。

彼はそっと窓の方へ近づいて行った。

「おい、アスラン勝手に・・・。」

アスランは窓から部屋の中を覗いた。

そこにはきちんと片付き、整理整頓されていた。

カガリも彼の隣へ移動し、一緒に覗き込んだ。

「思ったより片付いているな。」

彼女の脳裏にアスランの部屋が浮かんだ。

男の一人暮らしにしてはこぎれいな部屋だ。

こいつとカールは似ているのかもしれない・・・彼女はちらりと横顔を見て思った。

「お前と似ているな。」

「えっ、俺?」

アスランは彼女の言葉に驚いた。

俺と・・・って、いったいどこが。

彼はもう一度、部屋の様子を観察した。

テーブルの上に薄っすらと埃があるように見えた。

・・・ここしばらく使われていないと感じた。

「お前の部屋だってかなり整頓されているじゃないか。

こことあまり変わらないと思うぞ。」

「違うぞ、生活感のない部屋だぞ、ここは。

テーブルを見ろ。」

まったくちゃんと観察しろ・・・と、呆れたような口調でアスランはカガリに向かって言った。

「そうかな・・・。」

カガリは首を傾げながら答えて、玄関に向かうために体の向きを変え、一瞬視線を止めた。

2軒ほど向かいの家の前が気になった。

何だ・・・。

運転席の男がカメラを下ろしていたと彼女は思った。

おかしい・・・。

彼女は、そっと玄関に行く振りをしながら、急に方向を変え、車の方へと向かった。

「カガリ?」

急に駆け出したカガリに気がついて、アスランも彼女の向かう先の車に気がつき、あとを追った。

近づいてくる二人に気がついた運転席の男はこの場から一旦引くために、エンジンをかけようとした。

が、できなかった。

カガリは肘を思いきり当て、運転席の窓ガラスをたたき割った。

と、同時に車の後部の扉が開いた。

「アスラン!」

扉から飛びだしていた相手をアスランが地面にねじ伏せた。

彼女はそれを確認し、相変らずの手際のよさに感心しながら、運転席の中の人間に銃をつきつけた。

「ODIだ。」

「連合司法局だ。」

相手も両手を挙げながら大きな声で言った。

「えっ。」

カガリもアスランも顔を見合わせた。だが、銃を構えたまただった。

「カール・デッカーにODIが何の用だ。」

両手を挙げている連合司法局の男が言った。