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(中略)
車の助手席に座ったアスランはカガリに文句を言い始めた。
「空港警察に頼んで足止めを頼むなんて、どうかしているぞ。
何を考えているんだ、お前は。」
「空港でつかまってよかったよ。」
彼女は彼の文句を無視して答えた。
「それに、私はちゃんと問い合わせたぞ、フラガ研究所に。
だが、取り次いでもらえなかった。だから仕方なく・・・。」
「お前からの連絡は取り次ぐな・・・って、助手に言っておいたからな。
でも、職権をつかったわけだ。」
一瞬、彼女は言葉に詰まった。
が、お互い様だと彼女は思った。
特にそのことに対しては言及せず、自分の用件を伝えることにした。
そもそも、そのためにわざわざ空港警察に借りを作ったわけだ。
「オロフォト郊外にある戦没者墓地で腐乱死体が見つかった。」
「あそこには腐乱死体がたくさんあるだろう。」
アスランはムスリとして言った。
「だが、見つかったのは棺に入ってない腐乱死体だ。
清掃のために池の水位を下げたところ、発見された。」
「そう。」
アスランは興味がなさそうに答えた。
丁寧な口調でカガリは言った。
「出張から戻ってきたところ申し訳ないが鑑定をお願いしたい。」
「いやだ。もう、鑑定はしないと、この間言ったはずだ。」
前回の事件の時にアスランが鑑定結果から推理した自分の意見についてカガリが権限外だといい採用しなかった。
それで、彼は、ただの鑑定マシーンなんて真っ平ごめんだと思い、捜査協力はしないと伝えたのだ。
「どうしたら、鑑定をしていただけるのでしょうか?」
アスランの態度にムッとしながらも、ここで怒っては前回の二の舞になるだけだと、カガリは思った。
「猫なで声を出してもだめだ。」
アスランはちょっと馬鹿にしたトーンで言った。
カガリは怒りを飲み込んで再度尋ねた。
「じゃあ、何が条件だ。」
「捜査への全面参加。」
「お前・・・。」
カガリは車を路肩に止め、アスランの顔をじっと見つめた。
「現場へはいつも同行させてもらう。」
カガリは視線を逸らした。
その思案気な表情にアスランは彼女の言葉を待った。
「ODIで鑑定の仕事はしたくないってこの間言ってなかったか。」
「鑑定だけならやらない。」
「現場には連れて行っているだろう。」
「身元を確認した後も、捜査に参加させてくれないなら、やらない。」
「どうして?」
「この間も言ったが、俺はただの身元鑑定マシーンじゃない。
法人類学者だ。
身元を鑑定するだけでなく、遺体・・・証拠から人類学的に犯人像を推測できるはずだ。
それは事件解決に繋がらないか。」
アスランの言葉にカガリは思いを巡らした。
彼の言葉も一理ある。
今日の鑑定もやってもらう必要がある。
副長官には事後報告か。
「全面参加の件はわかった。・・・現場に行くぞ。」
カガリは再び車を走らせた。