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(中略)

面白そうにアスランを眺めていたキラはあることを思い出した。

「シンの話で思い出したけど・・・。」

キラはアスランの反応を少し楽しみにして、ちらりと様子を見ながら続けた。

「そういえば、最近来ないよね、あの娘。」

アスランは誰のことを聞かれたのか考えた。

シンで思い出した、ってキラが言ったので頭にシンの顔を浮かべてみた。

うーん、思い浮かばない・・・。

アスランが思ったような反応を示さなかったのでちょっと面白くなさそうにキラが言った。

「ほら、ODIのあの娘、シンとよくケンカしているというか、まあシンが勝手に噛み付いているのだけど・・・。」

「ああ・・・。」

アスランの表情が柔らかくなったのをキラは見逃さなかった。

まだ本人は無自覚なようだが、彼が表情を表に出すことはいいことだとキラは思っていた。

「俺が出て行くような事件がないのだから、いいことじゃないか。」

アスランの脳裏に金髪の表情をくるくると変わる女性の顔が浮かんだ。

そういえば、ここ1ヶ月は会っていないことに、アスランは気がついた。

どうしているのだろうか・・・。

自分の言葉に時おり、ムッとし頬を膨らませる顔をアスランは思い出しクスリと笑った。

 カガリは好奇心が強い。

この仕事にはあまり乗り気がなさそうに見えたが、研究所に来るのは面白いようだとアスランは感じていた。

事件が起きると、積極的に彼女はここにやってきた。

シンは作業を邪魔されるといって、相手をしようとしないが、キラやディアッカはそうでもなかった。

「いや・・・カガリと定期的に連絡とっているかと思っていた。」

キラの言葉にアスランはドキドキと心臓が鳴り始めた。

自分の反応に驚きながらも、悟られないように冷静さを装った。

だが、周りから見ると親密そうにみえるのだろうか?アスランにはキラの真意がわからなかった。

「この研究室のこととか、もうちょっと情報交換をしているかと思っていた。お互い仕事を円滑にすすめるために、さ。それに・・・。」

意味深顔の表情をキラは見せながら続けた。

「どうして、そんなことを聞くのか?」

「アスラン、彼女のこと気にいっているように見えるから・・・。」

「気にいっている・・・というか、よきパートナーだとは思っているよ。」

アスランは少し赤い顔をしながら言った。

「ふーん、良きパートナーね・・・。」

表情をさらに窺うようにキラはアスランを見た。

彼はプイと視線を逸らした。

キラはその態度にいい傾向だと内心ちょっと満足していた。

アスランが他人に心を許しているのは余りないことだからだ。

「本当にそれだけ?」

キラの言葉にアスランは首を傾げた。

彼が言っている意味がよくわからなかった。

「いや、珍しく気を許しているな・・・と思っているのだけど・・・。」

「えっ、俺が?」

うんとキラは頷いた。

「アスランも人間関係をもう少し広げたほうがいいよ。オーブではこの研究所くらいしか知り合いはいないでしょう。」

故郷プラントでもそう知人が多いほうではないだろう・・・アスランは自嘲気味に笑った。

そのことを敢えて忠告するのは目の前の彼くらいだろう。

「だが、どうしてそういう話になる。」

「だから、さっきも言ったとおり、珍しくアスランが気に入っているな・・・と思ったからだよ。

そうだ、今度ラクスがプラントからオーブに来た時に4人で食事に行くのはどう?」

「何で、か・・・。」

アスランに口を挟まれないように、キラは一気に話した。

「いや、この間、カガリの話を通信でしたのさ。そうしたら会ってみたいってラクスが言うから・・・。

アスランも一緒に行けばちょうどいいよね。」

アスランは呆れたように大きなため息をついた。いったいラクスに何とキラは吹き込んだのだろう。