*ブラウザの「戻る」で戻ってください
「はじまり」 から
初めて会ったのは木漏れ日にあふれる公園だった。
滑り台でいつものように遊んでいた金色の髪と茶色の髪の子供達は、声をかけられて顔を見合わせた。
「こんにちは、この近くに住んでいるの?」
その人は初めて見る人だった。
そして、濃紺の髪の子供が一緒だった。
子供は彼女の後ろに隠れていた。
「うん、あそこだよ。」
金色の髪の子供が公園の門の方を指しながら答えた。
そちらを見て家を確認した女性が、あら、と驚いた声を出した。
「だめだよ、カガリ。しらないひとにおしえちゃ。」
茶色の髪の子供が注意するように言った。
カガリと呼ばれた子供が頬を膨らませて答えた。
「でも・・・」
「ねえ、もしかして、あなたたちは、キラ君とカガリちゃん?」
二人の言葉を遮るように女性は聞いた。
「どうして、しっているの?」
カガリは思わず尋ねた。
すると、隣の茶色の髪の男の子がもう一度たしなめるように言った。
「だから、だめだよカガリ。しらないひととはなしちゃ。おかあさんにおこられるだろう。」
「でも、キラ、このひとわたしたちのことしっているみたいじゃないか。」
「けど・・・ぼくたちはしらないだろう。」
カガリの顔が再び不満そうに膨らんだ。
その様子をみた女性はクスクスと笑った。
「えっと、私はレノア・ザラ。キラ君とカガリちゃんのお母さんのお友達なの。
お父さんが駅前でケーキ屋さんを開いているでしょう。それに、二人は双子なのよね。」
彼らは目を丸くして、また顔を見合わせた。
確かに家はケーキ屋で、それに双子だ。
そして彼女は自分達の名前も知っている。
ということは、この目の前にいる人は、本当にお母さんのお友達なのかもしれない。
どうする・・・と、二人は顔を近づけてこそこそと内緒話を始めた。
レノアはじっとその様子を眺めていた。
彼らの相談の結果を待つことにしたのだ。
「ふたご・・・ってなんですか。」
だが、先にレノアに尋ねたのは彼女の後ろにいた子供だった。
彼はいつの間にかレノアの横にいて、彼女を見上げて尋ねてきた。
内緒話をしていた二人が顔をあげて同時にその子供を見つめた。
視線を感じた彼は恥ずかしいのか、慌ててまたレノアの後ろに隠れた。
苦笑しながら彼女は後ろに隠れた彼を前に引っ張り出して話し始めた。
木漏れ日に溢れる庭で
(中略)
駅の改札口からカガリが出てきたのを見つけたヴィアは、アスランの手を振り切って駆け出した。
が、後ろから続いて改札を出てきたフレイとカガリが話をしているのに気がつき、足を止めた。
カガリはヴィアに気がつき手を振ったが、彼女はくるりと方向を変え、すごすごとアスランの所へ戻ってきた。
そしてアスランの手をギュッと握った。
彼はその様子に苦笑しながら、カガリ達に手を上げた。
「もしかして、人見知りなの。」
一連のヴィアの行動を見たフレイの言葉に苦笑しながらカガリは頷いた。
「少し・・・だけだと思うけど。」
「よく保育所に預けているわね。」
「今は慣れたみたいで大丈夫だ。逆に楽しみにしているくらいだよ。最初のうちは大変だったけどね。」
カガリと一緒なので保育所には入る。
しばらくカガリや先生と遊んで、様子を見てカガリがそっと会社に行っていた。
が、彼女がいなくなったとわかった途端、わんわんと泣いていたそうだ。
「アスランに似たのね。」
フランス語でポツリと言ったフレイの呟きにカガリは笑った。
アスランに言わせると自分は泣いたりはしなかったらしい。
「ただいま、ヴィア、アスラン。迎えに来てくれてありがとう。」
カガリはヴィアに近づいて声をかけた。
「おかえりなさい。」
カガリの隣にいるフレイが気になるのか、小さな声でヴィアは答えた。
そして、彼女はアスランの後ろにまわり、彼の足を抱きしめながら覗き込むようにフレイを見つめた。
「こんばんは。」
フレイは日本語で挨拶をした。
が、ヴィアは相変わらずもじもじとしてアスランの後ろに隠れていた。
「どうしたの、ヴィア?」
アスランは彼女を抱き上げた。
「だれ?」
アスランの耳元で小さな声でヴィアは尋ねた。
「お母さんのお友達だよ。」
「おともだち?」
ヴィアは首をかしげた。
「おとうさんは?ともだちなの?」
「ああ・・・俺・・・お父さんも友達だよ。」
「ふーん。」
ヴィアはそう答えて、それからじっとフレイを見つめた。
「おともだちなの?」
「そうよ。お母さんのお友達のフレイ・アルスターよ。前も会ったことあるのよ。小さいからもう忘れちゃったでしょうけど。」
「まえ?」
フレイの言葉に首をかしげる仕草が、カガリそっくりで彼女の笑いを誘った。
パリにいたときは毎日のようにヴィアと会ったものだ。
「やっぱりカガリに似ているわね。」
「そうか・・・。ヴィア、ご挨拶は。」
カガリはちょっと照れくさそうにしながら、アスランに抱かれているヴィアの頭を撫ぜながら言った。
「ヴィア・ザラです。」
小さな声で恥ずかしそうに頬を染めて、頭をペコリと下げた。