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そう、俺はあの時とても疲れていたのだ。

そして、大切なものを傷つけてしまった。

気づいた時にはもう怖くてやり直そうなんて言葉を今度は言えなくなっていた。

けれども彼女の中に芽生えていた小さな灯火、命が俺たちを再び結びつけてくれた。

 

 

あの戦争の後、アスランはプラントに戻らず地球へ降りることを選び、モルゲンレーテへ就職をした。

カガリはしばらくの間は叔父のホムラの下で勉強をし、オーブの代表となっていた。

戦いの中で芽生えた二人の恋心は、実を結び、愛を深めていった。

あまり公にできない仲だったが、お互いに自分たちのことを認めてもらうため、アスランは研究に、カガリは公務に励んでいた。

そんな二人の関係に転機が訪れたのは戦争が終わって4年目の春だった。

 

(中略)

 

アスランが逃げるようにモルゲンレーテの研究室にこもり始めて5ヶ月ほど過ぎようとしていたある日、

彼は眠い目をこすり、モルゲンレーテの書庫から資料を手に取り研究室へと戻っていた。

いつもは気にならないのだが、廊下に設置されているテレビから聞こえてくる声に彼は反応した。それは芸能ニュースのようだった。

 

―先日、アスハ代表が体調不調により3ヶ月の休養に入られると発表がありましたよね。

 

カガリが休養なんて・・・。アスランは気になり、思わず足をとめてテレビを見つめた。

彼女のことを忘れたくて普段ならばテレビを無視して研究室へと戻るのだが、体調が悪いと聞くと、気になってしょうがなかった。

女性キャスターと芸能記者が話をしているようだった。なぜ芸能ニュースにと訝しげに思っていたアスランだったが、

画面のテロップの文字に目を奪われ動くことができなかった。

 

(中略)

 

「はぁはぁ・・・」

アスランはかなり息が上がっていた。ここまで体力が落ちているとは・・・。彼は少し自嘲気味に笑った。

以前と同じように動けると思っていたのが、それは違ったらしい。両手を膝にあて、前かがみになっていた。

「かつての赤も台無しだな。」

頭の上から聞き覚えのある、聞きたいと思っていた声が聞こえてきた。

「悪かったな。研究室にずっと篭っていたからトレーニング不足だ。」

そう言いながらアスランは顔をあげた。

「で、これはどういうことだ。」

腰に手をあて、呆れた顔のカガリが聞いてきた。その表情を見てアスランの顔は綻んだ。

会いたくて仕方なかった。が、カガリの隣にいたキサカは苦虫を潰したような顔をしていた。