ルー・リードに関するリンクをまとめまし
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** エドガー・アラン・ポーについて ** 最初の『Closed On Account Of Rabies』というCDはポーの詩や短編を音楽とむすびつけたものでした(前ページに載せてあります>>)。ビートニク詩人たちを惹きつけ、ロックミュージシャンにも愛され、そして今度はルー・リー ドが『The Raven』(ザ・レイヴン)(大鴉)というポーの最も有名な詩をタイトルにしたア ルバムによってポーの世界を表現しました。なぜ詩人やミュージシャンはポーに魅了されるのでしょう。 1809年1月19日、ポーはアイルランド系の旅役者の父、そして同じく旅芸人の母のもとに生まれ
ました。エドガーが生まれたその年の10月、舞台に出たあと父親は姿を消してしまい、その1年後には母も亡くなります。孤児となったエドガーは、たばこ輸
出業を営むアラン家の養子となり、6歳になったエドガーは養父に連れられて英国へ渡り、そこで教育を受け、米国へ戻りました。 審美眼を真中に置いたのは、心の中でそれの占めてい る位置がちょうどここだからである。それは両端の各能力(純粋知性と倫理意識)と密接な関係をもつ。(中略)知的能力は真理と関わり、審美眼は美について 教え、倫理意識は義務を守る。義務に限っていえば、良心はそれをどう果たすかを教え、理性はそれがいかに方便になりうるかを説くいっぽう、審美眼はその魅 力を示すだけに甘んじる。審美眼が倫理的悪徳を攻め立てることがあるとしても、それはひとえにその悪徳が醜くぎこちないものだから――それがどうにも不釣 合いで場違いで不調和をきたすものだから――つまりは美を損なうものだからである。 少し難しいですが、ポーはなによりも「美」を作品に求めたということなのだと思います。ポーの「審
美眼」に適うものであれば、倫理や道徳的基準と相反することもありうる、というわけです。「美意識」に対する考え方は、18世紀以降のヨーロッパ世界で大
きく変化を遂げ、それまでの厳しい倫理観、宗教観に左右されない新しい「美学」を芸術家や文学者たちは求め始めたのでした。産業や技術の発達が人間の行動
範囲を拡げ、人々は未知の世界への関心を示し、南極やアルプスなどの自然の険しさ、荒々しさや、船の航海を襲う大嵐や幽霊船を目撃した恐怖なども詩の題材
として書かれるようになっていきます。そしてやがてパリやロンドンに都市生活が生まれ、現代人のようにアパートメントの暮らしで隣室に見知らぬ他人が暮ら
し始めるようになると、人間に対する不安や疑心暗鬼、そして恐怖が生まれていきます。 |
** The Raven / Lou Reed (2003年) ** さて、ルー・リードです。ルー・リードはもう説明の必要はありませんが、NYを代表するロック
ミュージシャンであり詩人です。アンディ・ウォーホールのプロデュースによって誕生した伝説のバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのヴォーカリス
トとして登場して以来、ソロになって発表した数々のアルバムも含め、ほぼ全ての作品の詩をルー・リードが書いてきました。 ルー・リードがポーに惹かれた理由は、今回の『The
Raven』のライナーにも書かれていますが、「なぜ、人は、禁じられたものに引き込まれるのだろう。なぜ
手に入らないものを愛してしまうのだろう」というルーの言葉に尽きると思います。上で書いたポーの「美学」とまったく同じことですね。だか
ら先ほどの「Perfect
Day」もじつは、普通(という言葉も曖昧ですが)では許されないような恋人同士の一日なのでは・・?ということが想像されるのですね。
『The
Raven』は、日本語のライナーつきの国内盤と、2枚組みスペシャルエディションの輸入盤とがあって、スペシャルには朗読のみの15作品が加えられてい
る、ということです。最初、翻訳なしでポーの世界をアレンジしたものを聴くなんてムリ、と国内盤を買いましたが、余りの素晴らしさに、ちょっと朗読のみの
ものも聴きたくなっているところです。 告げ口心臓の鼓動の高まり。早すぎた埋葬者が土
の下から囁く声や叫ぶ声。 などと少し気取った書き方をしてしまいましたが、これらにはたくさんのポーの詩や短編のイメージが
重ね合わされています。私自身がまだまだ不勉強なので、ポー作品をもっともっと読まないとルーが作品に込めたものは本当には見えてこないかもしれません。
でも、こんなにも素晴らしい音のポー論を創り上げてくださったことが嬉しくて、ずっとずっと大事に聴き続けていきたいアルバムになりました。
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ルーの『The Raven』を聴いてからもう半年になろうとしています。過去の総括というよりも、過去から現在までの自分自身の全霊を込めて、ポー作品の得体の知れない 不安感や、人間のどうしようもない背徳(Vicious)への欲望・誘惑、見方ひとつによって変わってしまう世界の不確実性、そんなものを描き出したこの アルバム。ああ、ライブを見たいなあ、と思ってそれがもうすぐ実現します。 ルー・リードの経歴を語れるほど私は詳しいファンではないので、それは他へお願いすることにして、この半年で教えていただいたこと、感じていることなど 少しだけご紹介しましょう。 旧BBSで教えていただいたり、自分で書いたりしたことですが・・ * ルー・リードのシラキュース大学時代の恩師で、尊敬する詩人であるというデルモア・ シュワルツの本が2冊、日本語翻訳されています。その一冊は可愛らしい絵本。なんと私が何も知らずに、大好きな画家バーバラ・クーニーの挿絵と言 葉の美しさに惹かれてだいぶ前に買っていた本でした。 翻訳詩集のこのページに載っているルーの解説によれば、「彼(シュワルツ)の額にはおおきな傷痕があった。ニーチェと決闘したのだそうだ。彼が (『ユリシーズ』の)ブルームで、私(ルー)がディーダラスだった」、とあります。アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスの長編小説『ユリシー ズ』の主人公ブルームをデルモア・シュワルツになぞらえ、その主人公ブルーム(彼は一人息子を亡くしている)が、文学青年ディーダラスと出会い、 「深夜、ディーダラスと共に淫売窟へおもむいて彼の中に失われた息子を発見する」(新潮世界文学辞典より)として、ディーダラスをルーになぞらえているわ けです。 『The Raven』でも重要なテーマとして語られていたポーの作品『跳び蛙』。独裁者である王と権力を握る一部の支配者。王の道化で ある跳び蛙と、踊り子のトリペッタ。屈辱に耐える跳び蛙は、やがて王たちを縛り上げ、焼き殺すための芝居をうつ。。 今、もうルーは日本に来ているはずです。彼の公演を、もし自分なりに理解する事ができたら、またレポを書いてみたいと思います(書けるかな・・・? 難 しそうだな・・) (Sept.17,2003) |
** LOU REED LIVE Sept.20,2003 @東京厚生年金会館 ** Sweet Jane ルーの公演から、もう3ヶ月も経ってしまいました。このままでは年を越してしまう・・・と思って、とりとめなくても良いから、あの晩のルーのLIVE、 そして今年、ルーの「The Raven」から「NYC MAN」まで、私に与えてくれたものを、覚え書きにしておこうと思いました。 その前に、"NYC MAN TOUR"のサンフランシスコでのLIVEの模様が、ストリーミングされているので、そちらを楽しんでいただけたら、私の感想などは、もう不必要か と。。。2時間半もあるLIVE、私もあれ以来、5回くらいは通して観ています。見るたびに、単なるROCK LIVEというものを超えた、永遠に記憶に残る素晴らしい公演だと感じます。 ス トリーミングはこちらです>>(クリックするとすぐにReal Playerが起動してストリーミングが始まります) 最初にセットリストを挙げてありますが、じつは来日公演のほんの2日前くらいに、偶然USツアーでのセットリストの情報を知りました。LIVEは、何を 演奏してくれるのか、どきどきしながら臨む楽しみもあるけれど、今回のルーだけは、私には予習が必要だと思いました。ルーのアルバムを丹念に時代を追って 聴いて来た熱心なファンではなかったし、ルーの「語り」ともいえるような歌は言葉がとても大事だから。。そして何よりルーが伝えようとすることを逃さず受 け止めたいと思ったから。。それで、セットリストを知ってから、家にある「LOU REED / PASS THRU FIRE」という全詩集をもういちど開いて、詩を読み直してLIVEへ向かったのでした。 ストリーミングも日本公演もほとんど曲目も曲順も一緒。 *** ここからはごく個人的な感想で・・*** ルーの長年のアーティストとしての全身全霊を通じて創り上げられたようなステージを観て、ちょっと思った事があります。もしTV放映などで、今回の LIVEが流されることがあるとしたら、オペラ中継のように、歌詞をテロップで流してもらえたら、きっともっともっとルーの歌や全体の流れを、よく理解す ることができるかもしれない、とそんな風に思います。 アンコールで、それまでずっと坐って美しいファルセットのバックコーラスを聴かせていてくれた、キュートで、はにかみ屋で、しかも素晴らしい声のアント ニーが、立って「Candy Says」を歌い、それをルーが讃えるような眼差しで、ずっと拍手をしていたことや、メンバーひとりひとりと近い位置でアイコンタクトを交わしながら彼ら 自身が、自分たちの創り出す音に感動しながら演奏している様子など、やはり何度ストリーミングを見ても、素晴らしいステージだったと思い出されるのです。 (Dec.23,2003) |
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Fernando
Saunders.Com ルー・リードのバンドのベーシスト、フェルナンド・ソーンダースのオフィシャルサイトはこちらです>> |
Antony
and the Johnsons.com 「The Raven」で美しいバックコーラスを担当しているアントニーのオフィシャルサイトはこちらです>> |
エ
ドガー・アラン・ポー「黒猫・モルグ街の殺人事件 他5編」 岩波文庫>> |