満月をまって
メアリー・リン・レイ 文 バーバラ・クーニー 絵 掛川恭子 訳 あすなろ書房
上にご紹介した作品のほかにもクーニーの絵本は数多くあり、クーニーは「にぐるまひいて」で1980年にカルデ
コット賞を、「ルピナスさん」で1982年に全米図書賞を受賞したそうです。「百歳になるまでお仕事をしたいわ」と語ってらしたそうですが、残念ながら
1917年生まれのクーニーは、2000年に亡くなりました。彼女の最後の作品がこの「満月をまって」です。
舞台は今から百年よりもっと前のアメリカ。コロンビア郡の山あい。
山で暮らし、かごを作って生計をたてている人々のお話です。
満月になったら、とうさんはハドソンにいく。こんどこそ、ぼくもつ
れていってもらえるかもしれない。
「ぼく」はまだ、山をおりたことがありません。とうさんの仕事を見て育ち、「どうやって木をきりたおし、丸太にして」、「どうやって木づちをつかって、丸太をリボンのように、細くうすくはぎ
とっていくか」ぼくはそれを学んで大きくなっていきます。けれどもまだとうさんはぼくを町へ連れていってはくれません。
山に雪がふり、山にみどりがもどり、ぼくが9さいになった、ある満月の日、
「いっしょにきてもいいだろう」と、初めてとうさんが言います。
たくさんのかごをかついで、初めて見るハドソンの町。
「ぼくは色の洪水から、目がはなせなかった。かんづめのラベル、きれいにならべてある果物
や野菜、金色にかがやくチーズ・・・」
ここから先は、著者のあとがきを引用します。
けれど、町の子どもたちは親から、山奥に住んでいる「山ザル」に近づかないようにいわれ
ていました。(中略)いろいろなうわさ話が生まれました。(中略)不気味な伝説がひろまっていましたから。リップ・ヴァン・ウィンクルが眠りつづけ、首の
ない騎士が馬を走らせているキャツキル山脈の峰々が、すぐ西側に連なっていたのです。
1950年代になると、かごにかわって、紙袋や段ボール箱やビニー
ル袋が使われるようになりました。(中略)最後まで作りつづけていたひとりの女性も、1966年に亡くなってしまいました。
お話は、少年が町で見たこと、そして、山へもどって、山の中で感じること、を描いて終わります。
クーニーが数々の絵本を通して、人々に伝えたかった思いは、この最後の作品まで、一貫して変わることがなかったように思われます。
バーバラ・クーニーをご紹介した海外のサイトを見つけました。彼女の仕事の全容が美しい絵と共に紹介されています
ので、どうぞ飛んでご覧になってみて下さい。(特に2ページ目に絵がたくさん載っています)>>
このサイトは「Women Children’s Book Illustrators」ということで、女性の絵本画家について大変詳し
いサイトのようです。クーニーの他にも大勢紹介されています。