天然発酵 アルバムコンセプト
一聴すると、全12曲とも60年から70年代のサイケでポップなエッセンスで
彩られた個性的なナンバーが並んでいる。
しかしそれぞれの曲で語られているのは、現在最も中心的な存在として世の中を
動かしている世代の人々が謳歌していたはずの青春が、不連続的に歪んでいって
しまった世界の中で形を変えざるをえなかった、そんな青春群像なのだ。
1.天然フラワー
この曲は、新しい群像の登場とアルバム全体を包括的に歌っている。
2.月影の少年
この曲は、「少年の刻」の中に閉じこめられて抜け出すことの出来ない大人の
戸惑いを歌っている。
3.僕にKISSしなよ
この曲は、KISS をキーワードに「知っていること」と「わかる」ということの
相対的な違いを歌っている。
黙って KISS することでわかりあえる愛も有る。
4.欲望の人
この曲は、いくら望んでも満たされることの無い飽くなき欲望、現代的物欲至上
主義的な風潮、生け贄(つまり自分の中の大切なもの)を差し出しても何かを欲
しがり続けるそんなどこにでもいそうな・・・。
5.瓦礫の牧場
終末的な近未来の情景、破壊の残滓の中で繁栄の夢をいつまでもしぶとく持ち続
ける人々。 いったい何故愚かな歴史を繰り返そうとするのか。 今度はもっと
ましにいけると信じる為の根拠はどこに有るのだろうか。
6.双子の家
現実主義者と夢想家、光と陰のように切り離すことの出来ない背中合わせの世界
境目なんて有りはしない、滲んだ部分で繋がったふたつのようでひとつのもの。
あなたには、しっかりと向き合うことができるだろうか?
7.フラワー
あなたは感じていますか? 大人になっていく喪失感を。
道端にそっと息吹いているそんな草にも花を咲かした時期が有った。
何故、あなたはそんなふうに自分を諦めたふりをするのですか?
8.夏の北風
コンクリートとアスファルトの雑踏から離れて見渡す限りの涼しげな高原に行って
みようよ。
目を閉じて素朴で単純な安息を感じて下さい。
9.ジョニーとジェニー
傍目にもお似合いのカップルだった。ひとときも離れられない二人だったはずなのに。
愛し合い接するほどに急速に孤立していく恋人達。
10.赤い月
虚ろな心のスケッチ
11.黎 −Rei−
蠢く闇のイメージ
12.太陽の子供
君は覚えているだろうか、暖かな愛に包まれていた日々や目に映る見慣れた景色がとても
美しかった時のことを。
想い出してごらん、君はけして一人じゃない。顔を上げてごらん。
どうだっただろうか。この12曲、この構成の見方を変えて見ればアルバム全体に隠された
2重構造が深みを与えているはず。
1曲づつイージーに楽しむことももちろん出来る。しかし所々に見え隠れする気になる部分、
おどろおどろしかったり難解な印象を残しているのもしっかりとした演奏力による演出がこの
根底にある大きなテーマを支えている為だと言える。
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