大気中の成層圏(高さ約10〜50km)と呼ばれる層の中に形成されるオゾン濃度の高い層
域(高さ約20km)は、とくに「オゾン層」と呼ばれています。みなさんもよく、「オゾン層が危
ない」だの「フロンガスがオゾン層を破壊する」だの新聞を騒がしているのをご存知のことと
思います。それではオゾンとは一体何なんでしょう?
オゾンとは、酸素分子が紫外線によって分解されて2つの酸素原子になり、そのうちの1つ
が酸素分子と結合してできたイオンです。状態としては不安定で、再び紫外線で破壊されて
酸素分子になったりしています。したがって、オゾンがあれば人体に有害な紫外線を吸収し
てくれるという、大変ありがたい役目を果たしてくれています。
ところが、フロンガスなどによりオゾンが分解・結合され、オゾン層が破壊されてしまうとい
う現象が観測されるようになり、大きな話題となりました。その最も著明な状態が「オゾンホ
ール」です。名前のごとくオゾンの濃度が極めて薄いがために、あたかも穴が開いているか
のように見えるのでこのような名前がつけられました。とくに南極上空で見られる現象です
が、最近は北半球でも観測されています。オゾンホールはつい最近の出来事のように思っ
ている人も多いと思いますが、じつは1970年代からすでに観測されており、現在までに確実
に進行しています。南極に近いオーストラリアや南アメリカ大陸では皮膚過敏症・光線過敏
症(ようするに日焼けで水ぶくれになってしまうこと)が確実に増えており、オゾンホールと関
係があると断言されています(Abarca JF et al., J Am Acad Dermatol 46(2): 193-199,
2002)。つまり、オゾンホールの拡大により紫外線が人体に強く影響を及ぼすようになって
きているということです。
紫外線は、皮膚がん、強い日焼け、免疫力低下、白内障など、人体にさまざまな悪影響を
及ぼします。もちろん、カルシウムの吸収を促進したり、殺菌効果を発揮したりなど有益な面
もあるのですが、オゾンホールの拡大のために強力にパワーアップしてしまった紫外線は、
もはや悪玉と言わざるを得ません。やはりわれわれは、いかにこの紫外線を回避するか、と
いうことに目を向けないと、数十年後には白内障や皮膚がんの患者が急増するという事態
は避けられないような気がします。
そこで、意外とみなさんが気にしていない白内障に注目してみました。今でこそ高齢者が
かかる病気ですが、若いうちから気をつけていないとひょっとして40代、50代でかかってし
まうようになってしまうかもしれません。