1)オゾンホールと白内障
以前は、紫外線ではなくもっと違った病因論が主流でしたが、オゾン層の減少と白
内障との関係はわりと最近になって強調されるようになってきました。いまや常識と考
えてよさそうです(Young AR, Br J Clin Pract Suppl 89: 10-15, 1997; Yamaguchi
N
et al., J Epidemiol 9(6 suppl): S1-4, 1999)。それでは代表的な論文を見ていきまし
ょう。
オゾンの減少と白内障の増加には相関性があり、成層圏のオゾンが1%減少するご
とに0.3〜0.6%白内障が増加する(安藤ら、日本衛生学雑誌 45(5): 947-953,
1990)
という記載や、オゾンが10%減少すると白内障は6.8%増加するというスイスでの報告
があります(Ambach W et al., Experientia 49(9): 747-753, 1993)。ちなみにスイスの
標高3,576mの山岳では、'81〜'91の間に3〜11%紫外線量の増加が観測されたとい
うことです。
オゾンホールは1970年代から観測されていますが、この破壊されつつあるオゾン層
を1970年代レベルにまでに回復するのに、少なくとも今から90年はかかると言われて
います(Armstrong BK, Int J Epidemiol 23(5): 873-885, 1994)。
2)具体的予防法
予防法について言及している論文もあります。それによると、紫外線から目をまもる
効果は、めがねのフレームの形に大きく左右されるということです(Sliney DH,
J
Photochem Photobiol 31(1-2): 69-77, 1995)。残念ながらabstract(抄録)しか入手
できなかったので詳細はわかりませんが、おそらく目をすっかり覆うようなタイプのUV
blockレンズのサングラスが有効だと考えられます。そういえば、最近よく街で見かけ
ますよね。ただし、黒いレンズはあまり好ましくないようです。なぜなら、視野が暗いと
瞳孔が散大するために紫外線をよりたくさん吸収してしまうためです。したがって、薄く
色のついたサングラスが良いでしょう。