
片頭痛の患者さんは、日本全国に約800万人いると言われています。いわゆる「頭痛も
ち」の人にとっては、発作が起こるとつらくて大変な1日を過ごさねばならず、いかに頭痛を
おさえるか、いかに頭痛を予防するか、ということがとても大事なのです。
片頭痛の新しい薬が数年前から発売され、患者さんにとってはまさに救世主となっていま
す。ただし、実際に効果が見られるのは約70から80%程度の人だけ。残念ながら、全員
の人を頭痛から解放してくれる、というわけにはいかないようです。
そこで、今回は気象と片頭痛について、その関連性を調べてみました。どのような天気の
日に頭痛が起こりやすいのか予測がつけば、自分である程度は予防できるはず。もちろん
、個人差はありますが、自分にあてはめてみて、少しでも役立てていただければ幸いです。
それでは、医学的な報告を見てみましょう。
1)片頭痛は春に多い? 原因はストレスが最多。次いで天候の変化。
1994年の報告(Robbins L; Headache 34:214-6)によると、片頭痛の原因として、ストレス
(62%)、天候の変化(43%)、食事をぬく(40%)、まぶしい日光(38%)があげられるそ
うです。また、季節で見てみると、春が最も多く(14%)、次いで秋(13%)、夏(11%)、冬
(7%)の順です。日本に当てはめて考えてみると、、春や秋は移動性気圧が多く見られる
ので天気の移り変わりが激しく、また、春は新学期など、いろいろストレスが多いのかもし
れません。
2)片頭痛は土曜日に多い?
1996年のフランスでの調査です(Larmande P et al., Rev Neurol (Paris) 152:38-43)。
304人の片頭痛患者を1年間フォローしたところ、148人にのべ4421回の急性頭痛発作
が見られ、気象因子(気温、風、気圧、天気、湿度、月齢)との関連を検討したところ、いず
れの因子にも有意差は見られなかったそうです。ただし、曜日でみてみると、土曜日に最も
発作が起こりやすく、逆に、月曜・火曜日には発作が少なかったということです。これは、土
曜日には仕事上のストレスから開放され、その反動が起きているのかもしれません。
3)カナダの強風(チヌーク)は片頭痛と関係あり?
カナダのロッキー山脈東側にはチヌーク(chinook)と呼ばれる強風が吹きます。フェーン
現象による暖かい風で、気温が短時間で10から20度急上昇することもあるそうです。
2000年のカナダの報告ですが(Cooke LJ et al., Neurology 54:302-7)、チヌーク前とチヌ
ークの最中には片頭痛発作が起こりやすく、とくに強風(38km/h以上)の時にはその傾向
が顕著だったということです。チヌークそのものは日本にはありませんが、山形や甲信・東
海地方にはフェーン現象が見られます。ひょっとしたら、日本でもフェーン現象の時には片
頭痛に用心しないといけないかもしれません。
4)嵐や冷え込むときにはご用心
2001年のドイツでの1064人に対するアンケート調査です(Hoppe P et al., Dtsch Med
Wochenschr 127:15-20)。天気と最も関係が深かった症状は頭痛(61%)で、嵐(30%)
や冷え込むとき(29%)に症状が悪くなる傾向が見られたそうです。ドイツでは、天気と病
気との関連性に国民的関心が強く、このようなアンケートが実現したのでしょう。
5)やはりストレスに気をつけましょう!
2002年のポルトガルでの報告です(Arq Neuropsiquiatr 60:609-13)。100人の片頭痛患
者に調査を行ったところ、片頭痛の原因は、ストレスが最大(76%)で、次いで不眠(49%
)、空腹(48%)、環境因子(47%)、食物(46%)、生理(39%)、疲労(35%)、アルコー
ル(28%)、寝すぎ(27%)、カフェイン(22%)、運動(20%)、頭部外傷(20%)、旅行(4
%)、性交(3%)、喫煙(1%)といった順番だそうです。天気とはちょっと離れてしまいまし
たが、このような要因を避けるのも片頭痛予防には重要です。
頭痛に関してはさまざまなホームページがあります。(Yahooで「頭痛」をキーワードにして
検索すると48件出てきます。2003年4月現在)治療法などは、そちらでご参照ください。
